「元本が2倍になる年数」=「元本が半減する年数」の理由


元本が2倍に増える年数と、マイナス運用によって元本が半分に減ってしまう年数が同じ、というのは、感覚的にも「それはそうだろう」と思うところでしょう。

このことは式で表すことができます。

ここでは2つの考え方を紹介します。


<その1>「半分」を「2倍の『マイナス1乗』」と捉える

(1+金利r)をRという一文字に置き換えると、元利合計額が元本P_{0}の2倍になる年数Tは、本文の中でも紹介しているように、


      \bm{2}=\bm{R}^{\bm{T}}


という式になります。

年数Tを表す対数は、


      \bm{l}\bm{o}\bm{g}_{\bm{R}}\bm{2}=\bm{T}     ……(A)


です。


一方、マイナス複利運用で元本P_{0}が半分になる年数Tは、


      \displaystyle \frac{\bm{1}}{\bm{2}}=-\bm{(}\bm{R}^{\bm{T}}\bm{)}    ……(B)



で表されます。


ここで、指数法則の中の


      \displaystyle \bm{a}^{-\bm{m}}=\frac{\bm{1}}{\bm{a}^{\bm{m}}}


「ある数のマイナスm乗は、『ある数のm乗』分の1である」を使ってみると、「\displaystyle \frac{1}{2}」という数字は「『2の1乗』分の1」ですから、「2のマイナス1乗」ということになります。

これを用いると、(B)式は


      \displaystyle \frac{\bm{1}}{\bm{2}}=\bm{2}^{-\bm{1}}=-\bm{(}\bm{R}^{\bm{T}}\bm{)}

     -\bm{(}\bm{2}^{-\bm{1}}\bm{)}=\bm{R}^{\bm{T}}


という表現に変わります。。

これを、年数Tを表すという対数の形にすると、


      -\bm{l}\bm{o}\bm{g}_{\bm{R}}\bm{2}^{-\bm{1}}=\bm{T}


です。

さらに、対数の公式に出てきた


      \bm{l}\bm{o}\bm{g}_{\bm{a}}\bm{b}^{\bm{n}}=\bm{n}\bm{l}\bm{o}\bm{g}_{\bm{a}}\bm{b}


「真数がn乗になっている場合は、真数部分から『n乗』を取り外した対数と『n』の掛け算にできる」を使うと、


      -\bm{l}\bm{o}\bm{g}_{\bm{R}}\bm{2}^{-\bm{1}}=\bm{(}-\bm{1}\bm{)}\bm{(}-\bm{l}\bm{o}\bm{g}_{\bm{R}}\bm{2}\bm{)}=\bm{l}\bm{o}\bm{g}_{\bm{R}}\bm{2}=\bm{T}


で、(A)式と同じになります。   ◇



<その2>「T年前、元本は今の元利合計額の2倍だった」と考える

「いまの元利合計額Pが、かつての元本P_{0}の半分」ということは、逆から言えば「元本P_{0}はいまの元利合計額Pの2倍である」ということでもあります。


      P_{0}=2P


です。


そうすると、「いまの元利合計額Pは、(1+金利r)でマイナス運用したら、T年後に元本P_{0}の半分になっている」は、「(1+金利r)でマイナス運用されてきた、いまの元利合計額PをT年前に遡ると、それは、いまの元利合計額の2倍『2P』であった」という言い方もできます。


これを式にすると、


      \bm{P}_{\bm{0}}=\bm{2}\bm{P}=\bm{P}\bm{\{}-\bm{(}\bm{R}^{-\bm{T}}\bm{)}\bm{\}}


となります。「マイナスT乗」というのが、「T年前に遡る」を意味します。


これを、「T年前」を表す対数にすると、


      \bm{2}=-\bm{(}\bm{R}^{-\bm{T}}\bm{)}

          -\bm{2}=\bm{R}^{-\bm{T}}

          -\bm{l}\bm{o}\bm{g}_{\bm{R}}\bm{2}=-\bm{T}


となります。両辺のマイナスですから、これを取ってsまうと、


      \bm{l}\bm{o}\bm{g}_{\bm{R}}\bm{2}=\bm{T}


と、やはり(A)式と同じになります。   ◇