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【日経ヴェリタス・フォロー情報】
円建てギリシャ国債「爆落」の足跡

かつては債券価格は「150」。利回りはわずか0.8%台

週刊の投資情報紙『日経ヴェリタス』の4月29日発売号から3週にわたり、「外債のリスクとリターン」を連載しています。

第1回目は、債券の基本的な部分、債券のリスクについてです。その中で、信用度が著しく低下すると価格が暴落する、その端的な例として、日本の個人向けにも販売されている円建てのギリシャ国債(クーポンレート年5%、2016年8月22日償還(予定))をあげています。これは外国の発行体が日本国内で発行する円建て債券で、いわゆる「サムライ債」といわれるものです。

その記述にもある通り、現在の債券価格は25前後。額面の4分の1にまで下がっています。利回りにすると、実に年80%超という水準です。

この債券価格や利回りは、日本証券業協会が公表している「個人向け社債等の店頭気配値情報」で見ることができるのですが、過去のデータを調べてみたところ、2003年5月初時点のこのギリシャ国債の債券価格は、なんと150前後。利回りは0.8%台と、現状の100分の1の低さでした。

03年といえば、世界的に景気の底で金利が低かったわけですが、同時期に販売されていた円建ての外債、たとえばブラジル国債やトルコ国債、マレーシア石油公社債などに比べても、ギリシャ国債の利回りは大幅に低い水準となっています。つまり、そうした債券よりも信用度が高かったと考えられます。

その「150」もあった債券価格が、いつ、どんな具合に「25」まで爆落したのか。07年1月からの推移を見てみましょう。

07年初時点の債券価格は126台。03年よりも下がってはいますが、これは世界的な好景気を反映した金利上昇(債券価格は下落)による面が大きいでしょう。ちなみに、利回りは1.82%。同じ時期の10年物の日本国債の利回りは1.716%です。販売する証券会社がかなり抜いている(つまり、高い値段(=低い金利)で販売している)とは思われますが、それを割り引いても、低水準といってよいと思います。

以後、債券価格は120台での推移で、サブプライムローン問題が表面化した07年後半も安定していました。その動向にやや変調が見えてきたのは、やはり“リーマン・ショック”の頃からですが、価格水準を115前後に切り下げた程度で、09年中は概ね安定した動きだったといえます。


それは2009年末、突如?始まった

明らかに何かが変わったのは、2009年末からです。09年12月初めに110近かった債券価格は、2010年初には一挙に額面割れ。突如変わった、という感じです。

さらに5月に水準を切り下げます。「欧州危機」がニュースなどに頻繁に登場するようになったのは、この頃からでしょう。

それからは、文字通り、坂道を転げ落ちるような有り様。金利はウナギ昇りとなり、今日の「価格25」「利回り80%超」に至っています。

わずか2年少々で、こうも状況が変わってしまいます。「債券は安定的な運用ができる投資対象だ」とは言われるものの、国債といえども、こうしたリスクがある点は重々承知しておきたいところです。

なお、「こういうジャンク化した債券に強い興味がある」という方は、店頭営業の証券会社に問い合わせてみてくささい。日本証券業協会のデータを見ると店頭気配値が5つ出ているので、証券会社名はわかりませんが、少なくとも5社は、この債券を常時販売していると見られます。

額面金額が100万円とすれば、投資元本は25万円少々。ギリシャが債務不履行に陥らなければ、約4年半後の2016年8月、その投資元本は100万円になります。ただし、債務不履行になれば、投資額がほとんどゼロになるかもしれません。そのリスクは覚悟の上でお願いします。



(メモ) 2012年2月、EU内での合意で、100ユーロのギリシア国債は、15ユーロのEFSF(ユーロ安定基金)債(最大2年満期)と、31.5ユーロの新しいギリシア国債(最大30年満期)に交換される、ということで事前調整型のデフォルトとなりました(53.5ユーロの棒引き)。これがそのままサムライ債に適用されるかというと、発行市場が日本で準拠法が日本の法律であること、ギリシアのユーロ加盟以前の発行であることなどでEU合意の枠外ではあります。当初の約束通りに返済される、との報道がありましたが、今後の行方については非常に流動的であると思われます。



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