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【値動きの性格は変化する】

その2…ソフトバンク(9984)の場合

かつては「上がったら買い」「下がったら売る」だけで年300%超!

IT相場と称された99年から2000年にかけて、そして、長期的な上昇相場となった03年から07年半ばまでの時期、どちらにも共通することのひとつは、新興株が非常に盛り上がったことでしょう。

新興株に限らずですが、人気化する銘柄の値動きは強い順張り型、すなわち、「上がった日の翌日も上がる」「下がった日の翌日も下がる」という傾向が強く現れるケースが多々見られます。売買の主体が個人投資家で、それほど売買高が大きくなくとも軽く値が動く新興株の場合には、ことさらその傾向が顕著です。

そうした人気化新興銘柄の草分けとも言えるのはソフトバンク(9984)かもしれません。

“ネットバブル”時の大相場をご記憶の方も多いと思いますが、当時、この銘柄の値動きは超順張り型で、過去のデータで検証してみると「前日比上昇ならロング」「前日比下落ならショート」という順張り売買で年率300%超もの高パフォーマンスが出てきます。上がったら買い、下がったら売る、という単純な売買でこれほどのパフォーマンスになるというのですから、こんな美味しい話はないでしょう。

ただ残念なことに、この銘柄の超順張り型の値動きはその後徐々に変化し、今日では見る影もなく消え失せています。

赤は「引値の前日比上昇下落シグナル」に順張りの売買シミュレーション結果ですが、2000年から2001年半ばまでの1年半で500%近いパフォーマンスになっているものの、2004年半ばにかけてはパフォーマンスの伸びの勢いが衰え、それ以後はこの順張り売買で全くパフォーマンスが伸びなくなってしまっています。

銘柄のイメージとしては、新興株のアニキ的存在であり、また、今日においても成長期待のIT関連ではありますが、04年以降の値動きはもはや“IT関連の成長期待新興株”型ではありません。成熟産業や公益・インフラ関連などディフェンシブ銘柄などによく見られるパターンです。

社長の言動などは相変わらずギラギラ感があるとはいえ、市場ではかつてとは全く異なる受け止められ方をしているようです。

市場平均に対する位置づけにも変化の兆しか

一方、緑のグラフは「225先物の前日比上昇下落シグナル」に順張り売買のシミュレーション結果です。

2004年半ば辺りまでの累積パフォーマンスの推移は「引値の前日比上昇下落シグナル」と似ていますが、こちらはその後も右肩上がりを続けています。

とくに2006年半ばから2008年にかけて、「引値の前日比上昇下落シグナル」がまるでパフォーマンスを上げなくなった時期、この「225先物の前日比上昇下落シグナル」はパフォーマンスを伸ばしている点は注目されるところです。この頃から、この銘柄自身の値動きよりも、市場平均の動向が意識されるようになったのかもしれません。

ところが、2009年以降はパフォーマンスが右肩下がりに変わってしまっています。つまり、「市場平均が上がるとソフトバンクが売られる」「市場平均が下がるとソフトバンクが買われる」という、市場平均に対して逆張り的な値動きになっている、ということです。

この時期の状況を詳しく見てみましょう。

この銘柄はもともと225寄与度が高いのですが、この間の株価の推移は見事なまでの上昇トレンドを描いていて、それとともに日経225に寄与度はさらにアップしています。今日ではファナック(6954)、ファストリテイリング(9983)に次いで第3位です。

にも関わらず、225先物とは逆の動きをするようになったというのは、不思議な感じがしなくもありませんが、むしろこれは、225寄与度が非常に高くなったが故の結果と考えることもできます。

日経225の寄与度上位銘柄の顔ぶれを見ると、ファナックや京セラ、ホンダ、キャノン、信越化学など、輸出・ハイテク銘柄が多く、これらは為替や米国市場の影響を強く受ける傾向があります。

たとえば、円高が急伸して、輸出・ハイテク系の高寄与度銘柄群が大きく売り込まれると、日経225は大幅に下落せざるを得なくなりますが、225先物の下げ方はそれよりも小幅になることもあります。その場合、日経225と225先物に乖離が生じてしまいます。

そのとき、円高が売り要因にはならない内需系の高寄与度銘柄を買えば、現物指数の日経225は底上げされ、乖離も埋められます。

そうした指数調整役となりうる内需系・高寄与度銘柄が、かつて寄与度トップのファストリテイリングであり、寄与度がアップしたソフトバンクもその役回りを演じるようになった可能性があるわけです。

現物市場が先物の動向を気にしながら動く傾向が未だに根強いことを考えると、この銘柄は引き続き「225先物の値動きに逆張り」のスタンスで売買するほうが有効と思われます。

“仲間銘柄”との値動きの関係も2009年から変化している

ところで、ネットバブル相場の頃、ソフトバンク以上に人気を集めて値を伸ばしていた新興株といえば、ヤフー(4689)が思い出されます。

当時のヤフーの値動きも「引値の前日比上昇下落シグナル」に超順張り型だったのですが、ネットバブル崩壊後はやはりその傾向は弱まり、現在の値動きはむしろやや逆張り気味になっています。

では、ソフトバンクとヤフーという、ネットバブル期の花形2銘柄の値動きの関係というのはどうなのでしょうか。現在でも資本関係は強く、また、事業内容的にはどちらも内需系ですから、値動きにもそれなりの相関関係があるのではないか、と予想されるところです。

ところが、この2銘柄の値動きの関係もまた、2009年を境に一変しています。

Aは、ヤフーの引値の前日比上昇下落をシグナルにして、「ヤフーが前日比上昇=ソフトバンクを大引けでショート」「ヤフーが前日比下落=ソフトバンクを大引けでロング」という逆張り売買の累積パフォーマンスの推移です。

2003年から2009年初まで、パフォーマンスは上下を繰り返しています。要するに、逆張り売買をしてもパフォーマンスは上がらない、かといって順張り売買をしてもパフォーマンスは上がらない、という状態です。

そのグラフの推移が、2009年前半から見事な右肩上がりに変わっています。ヤフーが上がったらソフトバンクを売る、ヤフーが下がったらソフトバンクを買う、という逆張り売買をしていたら、この約2年間で150%以上の利益、という結果です。

ちなみに、Bは、かつて資本関係が強かったSBI(8573)の前日比上昇下落をシグナルとしてソフトバンクを順張り売買(SBIが前日比上昇=ソフトバンクをロング、SBIが前日比下落=ソフトバンクをショート)したと想定した場合の累積パフォーマンスの推移です。

2006年途中から2008年末までの間、この順張り売買が奏功していましたが、2009年初からグラフは右肩下がり、つまり、SBIの値動きに対してもソフトバンクは逆張り売買が有効になっています。

ヤフーの値動きをシグナルにした場合も、SBIの値動きをシグナルにした場合も、先ほどの225先物の値動きをシグナルにした場合に近い時期から“逆張り化”している点は興味深いところでもあります。

ソフトバンクを売買する際には、225先物に加えて、ヤフーとSBIの値動きも見ておくとよいかもしれません。

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