当サイトの市況ページにあるメニュー「上げ!」は、上昇トレンドばく進中の銘柄を日々引値ベースでリストアップしています。
直近の高値を更新するとその名がリストにあがってくるので、トレンドが続いている銘柄は頻繁に顔を見せる“常連さん”となります。
サンリオ(8136)がその例です。
このトレンド、1年半も続いています。売買高も大幅に増えています。
過去の動向からすると、「売買高が大幅に伸びると株価の上昇トレンドもそろそろ終わり」だったのですが、今回の上げトレンドはこれまでとは違って、息が長い様子です。
こうした銘柄を買っておけば「あとは寝ているだけで利益がどんどん増えていく」ということになったわけですが、今さら悔やんだところで仕方がありません。
だったら、ここからこのトレンドに参戦しますか? と言われれば、いかにも高値づかみになりそうで、やはり気が引けてしまうところでしょう。
とはいえ、しょぼくなる一方の市場の中にあって、こうした動きのある銘柄は貴重です。この動きに便乗するいい策はないものでしょうか。
というわけで、まずは、この銘柄の値動きの傾向を調べてみました。
例によって、
A:引値が前日比上昇=大引けでロング、前日比下落=大引けショート(いずれも翌日大引けで手仕舞い)という、引値の前日比上昇下落に順張りのポジションを取る売買
B:225先物の引値が前日比上昇=大引けでサンリオをロング、225先物の引値が前日比下落=大引けでサンリオをショート(いずれも翌日大引け手仕舞い)という、225先物の前日比上昇下落に順張りのポジションを取る売買
C:前日引値よりも高く寄り付いたら寄値でショート、前日引値よりも安く寄り付いたら寄値でロング(いずれもその日の大引け手仕舞い)という、前日引値に対する寄り付き方に逆張りのポジションを取る売買
を過去データで検証し、その累積パフォーマンスをグラフにしたものです。
まずAの「引値の前日比上昇下落に順張り」の結果ですが、03年半ばから06年終盤まで、一貫して右肩上がりを描いています。つまり、この時期、「上がったら買い、下がったら売り」という単純な順張り売買で十分に利益が取れた、ということです。
しかし、07年以降、この売買のパフォーマンスは横ばいに近い状態になっています。強い上昇トレンドが始まった2010年以降もこの売買は有効ではなさそうです。
Bの「225先物の前日比上昇下落に順張り」の結果を見ると、大きな基調としてはパフォーマンスが右肩上がりですから、この銘柄の値動きはそれなりに市場平均を意識していると解釈できます。
もっとも、パフォーマンスの推移はかなり上下にふれているので、この売買を実践で使うのは無理でしょう。
一方、Cの「前日引値に対する寄り付き方に逆張り」は、07年以降、何となく、パフォーマンスの推移が右肩上がりになっている様子がうかがえます。
2010年以降は横ばい状態になってはいますが、この売買のパフォーマンスの詳細を見てみましょう。
Cの売買のパフォーマンスを「前日引値よりも安く寄り付く=ロング」「前日引値よりも高く寄り付く=ショート」の2つに分けてみました。
07年から10年まで間、どちらも右肩上がりになっていますが、何と、強いトレンドが始まった10年以降、「安寄り=ロング」は右肩上がり度合いが強烈になり、対照的に「高寄り=ショート」はパフォーマンスが急勾配の右肩下がりに変わっています。
その結果として、先ほど見たCの「パフォーマンスは横ばい」になっていたわけです。
2010年以降、「高寄り=ショート」がパフォーマンスを落としまくり、ということは、逆のポジション、すなわち、「高寄り=ロング」にすればパフォーマンスは上がりまくり、になります。
つまり、安寄りだろうが、高寄りだろうが、何でもいいからとにかく寄り付きでロングしておけ、という話です。
ウソみたいに単純な話ですが、そんなことでよいのでしょうか。
この点を突き詰めるために、今度は、この銘柄の値動きを「大引けから翌日寄り付きまで」と「寄り付きから大引けまで」に分けて見てみます。
2010年以降に注目です。何でしょう、これは。
「大引け→翌日寄り付き」は緩いものの右肩下がり、対して、「寄り付き→大引け」は激しく右肩上がりです。
最初に見た株価の推移は引値ベースだったわけですが、この結果を見ると、あの引値ベースの強い右肩上がりのトレンドは、「寄り付き→大引け」のザラ場中のみの値動きによって形成されていたことは疑うべくもありません。「大引け→翌日寄り付き」の値動きは、おそらく、225先物なり、市場平均なりを意識していて、むしろパフォーマンスを落とす要因になっていたのです。
ということは、手数料などのコストを考慮しないとすると、この銘柄を「買って、延々と持っている」よりも、「寄り付きで買って、大引けで売る」を日々繰り返すほうがより高いパフォーマンスをあげられることになります。
具体的に今から参戦することを考えるならば、前日引値よりも高く寄り付いたところでロングする、というのは少々やりにくいかもしれません。安く寄り付いた日にロング、大引けで手仕舞い、という一方だけのほうが精神的にはラクではないかと思われます。
ところで、株価の動きにこれだけ強いトレンドが出ているのであれば、トレンドフォローのシグナルで売買するのも有効なはずではないでしょうか。
そこで、トレンドフォローの代表的指標・移動平均をシグナルにパフォーマンスを検証してみました。
移動平均を取る日数によってかなり違うのですが、2010年以降でいうと、20日移動平均をシグナルにしたケースが安定的で良好な結果となりました。
それにしても、これだけ長期間続いている株価の上げトレンドですが、その背景として、業績が伸びているという現実は確かにあります。その原動力となっているのがキャラクターの海外ライセンス収入で、この銘柄が高値を更新するたびに必ずといっていいほど「海外ライセンス収入に期待」という理由付けがなされます。
また、アナリストも、「海外ライセンス収入」を取り上げてはレーティングや目標株価をしばしば引き上げています。それもまた株価を上昇させ続けている一因でしょう。
ただ、海外ライセンス収入の拡大が見込まれるとはいっても、PER的には「まだ買える」という水準でもありません。それでもなお期待が大きいともいえますが、ザラ場中にだけ買い上げられていく、という極端な動きは何なのでしょうか。寄り付き時点までは冷静に市場平均を意識していたものの、ザラ場の取引が始まると「海外ライセンス収入」期待が沸き上がる、などというのはちょっと考えにくいところです。
推測の域は出ませんが、「海外ライセンス収入」は表向きの理由付けであって、M&A絡みか何かでサンリオ株を買い集めている向きがあるのかもしれません。その場合、「海外ライセンス収入」が取り沙汰されている間は上げトレンドは続き、現実の理由が表に出たとき、上げトレンドが最終局面を迎える、といったシナリオも考えられます。