あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
この年末年始、「2012年株式市場見通し」が各所に出ていました。総じてトーンは悲観的。金融政策に期待する見方や“米国経済頼み”的な予測もあるようですが、いずれも結局は日本市場に対して悲観的な心境の表れとみてよいでしょう。
ところが、です。12月31日発売の『チャートブック新春特別号』で上場全銘柄のチャートを先入観なしに眺めてみると、「これ、悪くないじゃない」「これも結構いいんじゃないの」「これなんか、すごいいい相場やっているじゃない」という感じで、動意の片鱗がうかがえる銘柄が目に付きます(ダメな銘柄は相変わらず全然ダメなんですが)。
1月2日付けで新興株について述べたことでもあるので、二部・新興市場の中からその一例を紹介しましょう。チャートブックのチャートは週足ですが、ここでは、日足と月足チャートで短期と長期の値動きに注目してみてください。
こうした銘柄がゴロゴロ、というほどではないものの、目先のトレンドが良好な銘柄、長期的にトレンドが反転したかもしれない銘柄は、さほどの難もなく見つかります。全然ダメな銘柄もそれなりにあるがゆえに、かえってトレンド良好な銘柄も見つけやすいのかもしれません。個別銘柄を見てみれば、「総じて悲観」することもない、それどころか、何年かぶりにワクワクする『チャートブック新春号』という印象です。
もちろん、多くの悲観的見方が指摘するように、今年も不安材料・懸念材料には事欠きません。もし、欧州で金融危機が現実化すれば、世界市場、当然ながら日本市場も、大打撃を受けるであろうことは疑うべくもありません。そのシナリオになれば、目先いい相場を演じている銘柄もその影響は免れ得ないでしょう。
ですから、手放しに楽観できる状況では確かにないのですが、ただ、金融危機と言えるほどまでの惨事には至らず、かといって、不透明感も払拭される状況にも至らない、というシナリオもあり得ます。その場合、ユーロはさらに下落し、ドルも上がらず、円高が進行するという予測も成り立ちます。となれば、輸出関連を中心とした主力銘柄は売られてインデックスは軟調。市場全体は引き続き冴えないムードにつつまれかねません。
この「市場全体が冴えない」という状況が、実は重要な点ではないかと思います。
先ほど見た4銘柄もそうですが、いい相場を演じている銘柄は、とくに市場平均が軟調で冴えない11月以降、株価のトレンドが鮮明になったり、出来高が急増したりしています。その多くは、業績はそこそこしっかりしていて、欧州事情や為替動向では業績もそれほどブレないだろう、というような銘柄です。
消極的選択だとしても、そうした背景から買いが多少集まってくれば、小型株や新興株は値が軽く動きます。つまり、主力銘柄が買われにくく、市場全体が冴えない状況は、こうした銘柄にとっては、ある意味、追い風になる可能性があるわけです。
市場全体の暴落はどの銘柄にとっても言うまでもなくマイナスですが、「市場全体が冴えない」状況は、どの銘柄にとってもマイナスとは限らない、むしろプラスに働く銘柄もある、と考えてよいのではないでしょうか。
逆からいえば、もし欧州情勢が大好転したり、為替が円安に大転換して主力銘柄が猛然と買われてインデックスが爆騰すれば、こうした新興株や小型株は二の次になる可能性があります。この「市場全体が大好転」シナリオの場合には、まずはトヨタ自動車(7203)など市場の中心的な銘柄に目を向けたほうがよいかもしれません。
先述したとおり、目下いいトレンドを描いている銘柄は比較的簡単に見つけることができます。その中からどの銘柄に着目すればよいか。市場全体が冴えないことを想定し、対象銘柄を探すポイントを考えてみます。
その視点の中心は、独自で借り株ができる(非貸借銘柄でも空売りができる)市場参加者の思惑にはまらないようにすることです。
優待銘柄の話などの中でも述べたように、ここ数年(とくに06年辺り以降)、ファンド筋やトレーディングハウスなどの参加者は個人投資家の動向を予想以上に観察しています。収益源にしようとしているからにほかなりません。
昨今の金融情勢からすると、そうした参加者の資金力もひと頃と比べれば疲弊している可能性はありますが、売買高自体が少ない状況においては、やはりその影響力は警戒しておくことが不可欠です。
<ポイントその1>注目度の高くない銘柄
好調なトレンドを続けている銘柄は、市況ニュースに頻繁に登場したり、評論家の目に止まって推奨銘柄にあげられたりと、とくに市場全体が冴えない中では目立つ状況に置かれるものです。
何かと目立つ銘柄は、借り株ができる参加者の目にも付きやすくなります。推奨銘柄などにはとんと登場しない、ニュース検索をしても何も出てこない。買われているのは、たとえば「内需関連である」というような、当たり前にしか思われないような材料以外にはない、というような銘柄のほうがよさそうです。
<ポイントその2>にも関わらず、出来高は増加傾向にある銘柄
日々の取引があったり、なかったりする銘柄は、売買がしにくいだけでなく、ちょっとした売り物が来ただけで大きく値を崩しかねません。あっという間にS安、というようなこともあり得ます。少なくとも、日々取引がなされ、日足チャートがちゃんとチャートの形になっているかを要確認。
<ポイントその3>長らく株価が低迷してきた銘柄
ポイントその1とも関連しますが、話題性があって個人投資家にも人気のある銘柄は、借り株ができる参加者も気に掛けているはずです。06年、07年の株価のピークから売られに売られ、もはや投げ売りも出なくなる水準まで株価が下がり、もはや下がらなくなっている銘柄、それでいながら、そこそこ業績は固く、ここへ来て株価が反転の兆しを見せているような銘柄は注目してよいと思われます。
<ポイントその4>優待銘柄の権利確定月には要注意
優待銘柄の中には、権利確定月に向けてムラムラ株価が上昇していくケースが珍しくありません。そうした銘柄の多くは、(その優待内容が個人に人気があるかないかは別として)、借り株ができる人たちの狙い処になっている可能性が否定できません。目先のいいトレンドが優待絡みではないかどうか、十分に注意する必要があります。
<ポイント+α>できれば現物買いを検討したい
出来高が増えていて目先のトレンドがいい、あるいは、長期的に反転の兆しが出ているとはいっても、かつてから比べれば売買高は低水準です。となれば、面白いようにピョンピョン株価が上がるような状況にはなかなかならないかもしれません。また、事業内容的に言えば、たとえば内需関連銘柄は動く値幅が比較的小さい傾向もあります。
加えて、以前紹介したことがありますが、市場全体のアノマリーからすると、1月は「下がりやすい月」。2月もあまりよくありません。ある程度の値幅を狙うのであれば、数ヶ月の期間を想定することも必要になりそうです。その場合、6ヶ月という期限の決まっている信用取引よりも現物取引で買ったほうがスタンスに余裕が持てるうえ、コスト面でもメリットがあります。
現状、買い焦る必要はなく、市場全体の動向を見ながらじっくり選んで、ゆっくり買って差し支えありません。この局面は、現物買いを検討してみてください。