なでしこインベストメント > 株式 > 【7596】衝撃の「優待廃止」。利益を得るのは誰か

【7596】衝撃の「優待廃止」。利益を得るのは誰か

株価の動きに現れていた「小さな変化」

株主優待人気銘柄にとって最大のリスクである「株主優待制度の廃止」が最近発表されています。魚力(7596)です。

7月31日引け後に四半期業績の発表があり、翌8月3日の寄付には株価は爆落。発表された業績は、来期の1株益見込みが88円のところ四半期分で20.2円でしたから、この数字自体はネガティブというほどではありません。同時に発表された株主優待の廃止が嫌忌されたのは明らかです。

これによって、「3月=配当・9月=優待」が「3・9月ともに配当、優待ナシ」に変更されました。今年の9月は、配当(1株20円)はありますが、3000円相当の優待品(海産物)はもうもらえません。優待を期待して保有していた株主にはショックな変更です。併せて自社株買い(20万株)の実施も発表されましたが、ショックを和らげる効果は、これまでのところ限定的なようです。

優待人気銘柄は、とくに優待権利月以前に上がりやすいという特長があります。ですから、例年ならば「上がりやすい」時期なのに、今年は上がっていなかったとすれば、「これは何かある」という予感はできた可能性があります。しかし、7月31日までは、例年のように順調に上昇を続けています。優待廃止の発表は、株主にとって全くの寝耳に水で、事前察知は無理でしょう。

ただ、図01のグラフを「引け〜寄り」「寄り〜引け」に分解してみると、例年と異なる動きが浮かび上がります。

昨年までは、前日の引けより今日の寄付が高い「高寄り」の傾向が見て取れます。つまり、寄付で“優待買いパワー”が発揮されていたと考えられますが、今年の場合はそうはなっていなかったようです(オレンジの線、緑の丸)。その代わり、寄り付いてからザラ場で例年以上に上げ幅を稼いで、その結果「例年と同様に順調な上げ」となっていたという動きです(藍色の線)。

日々この銘柄を監視している人からすれば、「おや、期待したほど高寄りしない」「でも、ザラ場中にやっぱり買いは入ってくる」と感じたこともあったかもしれません。とはいえ、この動きの意味するところが何なのか、知る由もなかったはずです。


「売り出し→株主総会→優待廃止&自社株買い発表」

遡ること約4か月。今年3月、東証一部昇格にあたって大株主の保有分69万株が売り出されています。『お知らせ』に記載された「当社普通株式の分布状況の改善及び流動性の向上を目的としたもの」というのはよくあるテンプレの類ですね。通常であれば、「個人株主を増やしたい」と受け取られるところでしょう。実際、3月末の株主数は30391名で1年前の29327名と比べて千人少々増加しています(発行済み株式数は1462万株)。

今回の優待廃止にあたっては、「株主の皆様に対する公平な利益還元のあり方という観点から」と、その目的が記載されています。これまたよくあるテンプレの類ですが、増えたというか、敢えて増やした個人の小口株主に対して利益還元しすぎている、と読めなくもありません。

さらに、優待制度を廃止すれば株価が下がるであろうことは百も承知なはずで、下がったところで自社株買いを行うというのは、それで株価の下落を緩和しようという「株主の利益」を重視してのことなのでしょうか。6月の株主総会も平穏に通過し、その1か月後、早速四半期決算の発表とともに株主に対する施策の変更を行うとは、少々穿った見方をすれば、これまた随分と手際のいい段取りでないの、とも思えてしまいます。

この銘柄の株価を業種別指数(東証33業種・小売)と比較してみると、毎年9月に向けて“優待買いパワー”で業種別指数に追いついてきたのがわかります。

8,9月を除けば、概ね業種別指数に対して水面下の状態です。ここ数年でよく上がったといっても、それは相場のおかげであって、同業との比較で見ると全く上がっていません。優待のお陰でここまでやれた、といった感じです。

もっとも、株価の長期的なトレンドからすると、直近に買った人を除けば、今回の件で不幸になった人は少ないのではないかと思われます。市場に埋まる地雷は踏みたくないものですが、踏んでも致命傷にならないような市場の歩き方を心がけたいものです。


新たに加わった“魚系”優待銘柄もある

優待制度を廃止する銘柄がある一方で、新たに株主優待制度の導入した銘柄もあります。

昨年の12月に東証2部に上場した大冷(2883)です。骨なし魚が主力商品で、セクタは食料品。優待新設の発表(7月)で株価は上がりました(ピンクの矢印)。目下のところ1750円がレジスタンスになっている模様です。3月配当(55円予定)・9月優待(2000円相当の自社製品)で利回り的には魅力があります。PER的にも割高感はありませんが、IPO間もない銘柄であり、値動きの実績をもう少し確認したい感はあります。

もう魚は嫌だ、というのでなければ、魚力の代替候補としてウォッチしてみてはどうでしょうか。




↑top に戻る。



Copyright (C) 2015 Nadeshiko Investment Co., Ltd. All Rights Reserved.