徹底活用ガイド!攻略編

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攻略編「高相関銘柄上位10」欄

2銘柄の「株価水準の関係」と「値動きの関係」で「市場参加者の意識」をつかむ

株価指数や為替レートなどの各種指標と個別銘柄との関係もさることながら、個別銘柄同士の株価の関係を調べてみると、また興味深い結果が得られます。

この場合、2銘柄の株価の相関関係を調べることになりますが、その方法としては2つが考えられます。

ひとつは、引値ベースで2銘柄の相関関係を見るやり方です。

たとえば、A銘柄のある日の引値が1000円、B銘柄は2000円で、「B銘柄の株価=A銘柄の株価×2」という式で表されたとします。この2銘柄の株価水準が、ある期間中、概ねこの式に沿った関係にあるとすると、「この2銘柄の株価は相関性が高い」となります(この場合、相関係数は「1」に近い値になります)。

ただし、この「株価の相関性が高い」という状態は、必ずしも「A銘柄が値上がりしたとき、B銘柄も値上がりする傾向が強い」というように、株価の動き方が似ていることを示すものではありません。

たとえば翌日、A銘柄が10円値上がりして1010円になり、B銘柄は10円値下がりして1990円になったとします。値動きの方向は逆ですが、この場合でも概ね「Bの株価=Aの株価×2」という関係は保たれているといえます。

ある期間中、A銘柄が日々どういう値動きをして、B銘柄は日々どういう値動きをしたかはともかく、A銘柄の株価水準が上昇して2000円になったとき、B銘柄の株価水準がその2倍の4000円程度になっていれば、この2銘柄は「株価の相関が高い」ということになります。

つまり、2銘柄の引値の相関性は、「2銘柄の株価水準の位置関係」を見ているわけです。ここでは、この関係を「2銘柄の株価水準の相関」と呼ぶことにします。

2銘柄の関係をより詳しく知りたい場合、株価水準の相関だけでなく、やはり「A銘柄が値上がりしたとき、B銘柄も値上がりする傾向が強いか」という、値動きの方向性の関係も抑えておきたいところです。

これは、2銘柄の前日比上昇・下落率の相関性を調べることでわかります。これが、2銘柄の相関関係を考える、もうひとつの方法です。

前日比上昇下落率の相関性が高いということは、2銘柄の日々の前日比上昇下落率が、ある期間中、概ね同じ関係式で示されることを意味します。これは、株価が同じ方向に動く傾向を示すものでもあるので、ここでは「値動きの相関性」と呼ぶことにしましょう。

値動きの相関性が高く、なおかつ、株価水準の相関性も高いとすれば、その2銘柄は株価が同じ方向に動く傾向も強く、しかも株価水準の位置関係も概ね保たれていることになります。つまり、「A銘柄が前日比1%上昇したとき、B銘柄も1%上昇する」というような、2銘柄の株価は近い動き方をする傾向があるということです。

このように、「株価水準の相関」と「値動きの相関」の双方を調べてみると、似た値動きの傾向を持つ2銘柄を見つけ出すことができます。

<読み方のポイント@>

「株価水準」「値動き相関」ともに高相関同士は裁定取引の候補にもできる

2銘柄の株価が似た動きをする一因としては、各々の銘柄の値上がり・値下がりや株価水準の関係を意識して売買している市場参加者の存在が考えられます。あるいは、その銘柄同士が同じセクターに属するとすれば、同セクターの複数銘柄がまとめて売買されている可能性もあります。

ホンダの場合はどんな銘柄と相関が高いのか。具体的に見てみましょう。

まず、株価水準の相関性の高い銘柄を見ると、第1位はブラザー工業です。業種からしても事業内容からしても、「なぜブラザーなの?」という気がしないでもないかもしれません。

第2位が日産自動車、第3位はホンダ系の自動車部品会社のケーヒンと、この辺りは納得しやすいでしょう。

その他、京セラや東京エレクトロン、キャノン、TDKは「輸出関連という括りで相関性が高いのでは?」と想像されるところです。

次に、上昇・下落率の相関性、すなわち「値動きの相関性」の高い銘柄を見てみます。

株価水準の高相関銘柄とは顔ぶれが異なり、第1位から7位まで、自動車・自動車部品メーカーが名を連ねます。これを見ると、ホンダは「自動車セクター」という括りで売買されている面が大きそうだ、と捉えることができます。

値動き相関の第1位はトヨタ自動車ですが、これは、「トヨタは自動車セクターのベンチマーク」として意識されているものと見られます。また、デンソーや豊田自動織機、アイシン精機は、おそらく、トヨタ自動車をいわば媒介としての高相関の可能性も考えられます。

他方、株価水準の相関で第2位の日産自動車は、値動き相関でも第3位で、相関係数も比較的高い水準となっています。

株価水準の相関性、値動きの相関性いずれも高い場合、それは、その2銘柄の値動きが意識されて売買が行われている可能性を示唆します。両銘柄の値動きに乖離が生じれば、その乖離が縮小する方向に動く可能性もあるわけですから、そうした2銘柄を裁定取引の候補銘柄として考えてみるのもよさそうです。

<読み方のポイントA>

「値動き高相関」リストの異業種銘柄に注目

ところで、株価水準の相関で第1位のブラザー工業ですが、値動き相関のほうには名がありません。

このように、「異業種でありながら株価水準は高相関。ただし、値動き相関は高くない」という例は、他の銘柄を調べてみても時折出てきます。そうした銘柄は、“たまたま”検証期間中の株価のトレンドが似ていた可能性も否定できません。この点を考えると、その銘柄を売買している市場参加者の意識や行動を読むうえでは、株価水準の相関だけでなく、値動きの相関も同時にチェックすることが重要になってきます。

一方、株価水準の相関には名が出ていなかった住友電気工業が値動き相関の第8位に入っています。非鉄セクターの銘柄ですが、実は、この銘柄の「値動き高相関」銘柄を調べてみると、非鉄セクターの銘柄は見あたらず、自動車・自動車部品メーカーがズラリと上位に並びます。

ということは、この銘柄は、非鉄セクターという括りよりも、自動車セクターとして売買されている面のほうが大きいと解釈せざるを得ません。

この例のように、異業種でありながら値動き相関の高い銘柄は、市場参加者が業種分類上のセクターとは別の視点で売買していると考えられます。その銘柄を売買対象とするのであれば、やはり市場参加者の視点でその銘柄を捉えることが必要です。「値動き高相関」はその視点を知るうえでも大いに役立つと思います。

徹底活用ガイド!攻略編 おしまい。

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