logとは何を表現するものなのか


■指数関数を逆から表現したものが対数関数■

対数関数は指数関数とともに、高校の数ⅡBで出てきます。

当時のことを思い出すと、指数関数は「まぁ、それなりにわかる」という感じでしたが、対数については「???」だったような印象があります。

その理由は、第一には勉強しなかったからにほかなりませんが、たぶん「log」なる表記にどん引きした面もあるのではないかと思います。


logなるもの、対数とは何なのかというと、「\bm{a}^{\bm{n}}=\bm{b}」という形の指数の式を逆から表現する、つまり、「\bm{n}イコール」の形で表現するものです。


たとえば、「2を3回足すといくらになるか」は「2×3」という掛け算で表現しますこれを「6は2を何回足したものか」という形にしたものが「6÷2」という割り算です。

この「3」に相当する値をx、「6」に相当する値をyとして一次関数で表現すれば、y=2xというを「xイコール」という形にすると「x=\displaystyle \frac{y}{2}」になります。、

これと同じで、「2を3回掛けたらいくらになるか」を表現するのが「2^{3}」、これを「8は2を何回掛けたものか」というふうに、逆から表現したものが「log_{2}8」という対数です。


a\bm{n}乗した値を\bm{b}とすると、


       \bm{b}=\bm{a}^{\bm{n}}   \bm{n}=\bm{l}\bm{o}\bm{g}_{\bm{a}}\bm{b}


という関係です。


どちらもaを「底」、対数のbの値を「真数」と呼びます。


底aには「a>0 かつ a≠1」という条件があります。

というのは、底aが0では、何乗したところで0。a=1の場合も、何乗したところでbは1にしかなりません。

また、aがマイナスの場合には、累乗する指数部分が奇数のときにはbはマイナス、偶数のときにはプラスになる、といった具合に、bがプラスマイナス振動をして しまいます。


対数の真数bには「b>0」という条件があります。底aが0より大きい数であれば、「aのn乗」の値bも0より大きい数になるからです。


なお、「n乗」のnには条件はありません。nは∞でも、マイナス∞でも、1でも0でもOKです。

ちなみに、nの値をマイナス∞にすると、bの値はほとんどゼロといってもいいくlらい小さな値になりますが、完璧ゼロにはならず、「b>0」は満たします。



■指数の値は「定率ずつ増えていく期間」と捉える■

2^{3}log_{2}8について「2を3回掛ける」「2を何回掛けたものか」などと表現しましたが、実際には、「掛ける回数」で考えると少々わかりにくくなることが出てきます。


「0.5乗とは一体どういう意味か」でも出てきたように、「何乗」という指数の部分は小数点がついている数の場合もあれば、分数の場合も、負の数の場合もあります。

指数の部分を「掛ける回数」として考えると、0.5乗は「0.5回掛ける」、\displaystyle \frac{13}{4}乗は「\displaystyle \frac{13}{4}回掛ける」、マイナス5乗は「マイナス5回掛ける」ということになり、なんだか意味がわかりません。


これを「回数」ではなく、たとえば秒なり、年数なりという、連続した期間(時間)だと考えると、途端にわかりやすくなります。

まさに複利の計算がそれですが、指数の部分を「定率ずつ複利的に増えていく年数」として考えれば、0.5乗は「半年後」、\displaystyle \frac{13}{4}乗は「3年3ヶ月後」の状況、ということになります。


ではマイナス5乗は? 

マイナスというのは「いまから遡って」と解釈することができますから、マイナス5乗は「いまから5年前」という過去の状況を表しているわけです。


そして、「定率ずつ」の部分が底になります。「2の何乗」という場合なら、「毎年2倍(200%)ずつ増えていく」、「1.04の何乗」という場合なら、「毎年1.04倍(4%)ずつ増えていく」という意味です。


もし、「最初100だったものが、毎年2倍ずつ複利的に増えていったとき、5年後にはいくらになっているか」というように、「最初にいくらある」というもとの数が特定されている場合には、2^{5}にもとの数を掛けます。。


もとの数をk、底(増えていく率)をaとして、n年後の値をbとすれば、


                            \bm{k}\bm{a}^{\bm{n}}=\bm{b}


という式になります。

もとの数kが1であれば、bはa^{n}そのものの値です。


これをもとに対数を考えてみます。


たとえば、「毎年2倍ずつ複利的に増えていったとき、もとの数『1』がn年後に10になった」とします。

これを「2のn乗」の式で表すと、


            \bm{1}\bm{2}^{\bm{n}}=\bm{1}\bm{0}


これを、「毎年2倍ずつ複利的に増えていったとき、もとの数『1』が10になる年数」という表現にしたものが、


                        \bm{n}=\bm{l}\bm{o}\bm{g}_{\bm{2}}\bm{1}\bm{0}

という対数です。


「最初100万円あったものが、毎年4%(1.04倍)ずつ複利で増えていったとき、130万円になるのはn年後」であれば、


       \displaystyle \bm{n}=\bm{l}\bm{o}\bm{g}_{\bm{1}\bm{.}\bm{0}\bm{4}}\frac{\bm{1}\bm{3}\bm{0}\text{万円}}{\bm{1}\bm{0}\bm{0}\text{万円}}=\bm{l}\bm{o}\bm{g}_{\bm{1}\bm{.}\bm{0}\bm{4}}\bm{1}\bm{.}\bm{3}


となります。


この対数の真数は1.3ですが、これは結局、「もとの数がn年後に1.3倍になっている」ことを示しています。


つまり、底がa,真数がbという対数は、「毎年a倍ずつ複利的に増えていった場合、もとの数がb倍になっているのは何年後か」を表しているわけです。

複利の計算でいえば、底は「1+金利r」、真数は「元利合計額が元本の何倍になっているか」で、その対数で表現されるのが複利運用する年数Tです。


かつて対数を習ったとき、「logなんていうもの、一体何に使うのか」と思った人もいるのではないでしょうか。その後文系に進んだ人だと、実際に何にも使わなかったかもしれませんが、お金の運用を考える中では、このlogなるものが役に立ちます。

高校のときにはわからなかった、学校で習う数学の実用例のひとつだと思います。



■対数関数のグラフは指数関数のグラフと対称の形■

指数関数と呼ばれる関数は、\bm{y}=\bm{a}^{\bm{x}}といった形で表されるのが一般的で、この式のaは定数 、xはいろいろな値をとる変数、yは「xを変えていったときの値」です。


一方、対数関数は、\bm{y}=\bm{l}\bm{o}\bm{g}_{\bm{a}}\bm{x} といった形で表現されます。aはやはり定数で、「真数部分の x の値を変えていったとき、yの値はどうなるか」という意味です。


指数関数と対数関数、それぞれxの値を変えていくとyの値はどんな感じで変化していくのか。ここで、指数関数と対数関数のグラフを見ておきましょう。



上のグラフは、a=2のときの指数関数と対数関数のグラフです。aの値が1より大きい場合、両者のグラフは「y=x」の直線に関して対称な形を描きます。


aの値が、0<a<1の場合は、下のような形になります。



このグラフはa=0.5のケースです。   ◇