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『日本一やさしい 高利回り債券の見つけ方』

【投資信託】「特別分配金」の謎

(3)警戒すべきはファンド全体の“元本毀損”

特別分配金が出ているから「悪いファンド」とは言えない

繰り返しになりますが、支払われた分配金が普通分配金になるのか、特別分配金いなるのかは、そのファンドを買った各々の個別元本金額がいくらか、いつ買ったのか、によります。

ですから、同じファンドであっても、たとえば1年前の基準価額で買った人は、特別分配金のほうが多く、2年前の基準価額で買った人はさほどでもない、というようなこともあります。

もし、特別分配金が多いファンドが「悪いファンド」であるとするならば、1年前に買った人にとっては「悪いファンド」であり、同じファンドを2年前に買った人にとっては「 そこそこ良いファンド」という評価になってしまいます。

しかし、この場合、良し悪しを言うのであれば、そのファンドを買ったタイミングが良かったか、悪かったか、という話ではないでしょうか。そのファンド自体の良い悪いはまた話が別なはずです。

大口解約が出ると残存保有者が多大な被害を被る可能性も

前述したように、特別分配金はその人の投資資金を取り崩すものではありませんから、特別分配金が出たからといって「元本が毀損している」などと考える必要はありません。

元本の毀損に関して警戒べきは、自分が受け取った分配金が特別分配金か否かよりも、ファンド全体の元本が毀損されていないか、です。

本書の中に出てきた、「為替レートや組み入れ債券の価格下落によって基準価額が下がり続けているにもかかわらず、それ以前と変わらない分配金を出し続けている」という例などは、その可能性があります。

さらに、本書では記述しきれなかったものとして、「大口資金の解約」というリスクが投資信託にはあります。

同じファンドには、小口資金で投資している受益者もいれば、大口資金で投資している受益者もいます。

この大口資金の受益者が解約・換金を申し出た場合、取りあえずは証券会社が買い取り、別の買い手を探すことになると思われますが、大口資金の換金相当分だけの買い手がいなければ、組み入れ対象の資産を市場で大量売却せざるを得なくなります。

組み入れ対象を売却し、新たな資金が入ってこなければ、そのファンドの資産が縮小するのは言うまでもありません。

結果、組み入れ対象の市場が上昇したとしても、そのファンドが受ける恩恵も限定的になってしまいます。「為替レートが円安になっても、債券価格が上昇しても、基準価額はまるで動かない」といった状況です。

そして、ついには基準価額が上がらないまま「運用不能により繰り上げ償還」となる可能性も否定できません。

過去にそうなった例は少なからずあるはずです。

たとえば、成長著しく注目を集める新興国・地域の例は過去にいろいろありましたが、必ずといっていいほど、経済危機や政情混乱によって市場が暴落する局面に見舞われています。

そうした国・地域に投資するファンドでは、市場暴落時にすかさず大口の解約・換金が出ることも珍しくないのです。

その換金に対応するため、市場で投資対象の資産を売却すれば、ファンドの組み入れ対象は激減します。そのファンドの運用報告は「市場不安定により、投資対象のほとんどを現金化した」というものになるでしょう。

かくして、その後、投資対象の市場が強いリバウンドを見せ、回復しても、ファンドの基準価額は戻りません。

よほどのことがない限り、そのまま償還です。

そうなると、解約・換金しなかった残存受益者だけが損失を被ります。大口資金の解約の責任を同じファンドの保有者が取らされる格好です。

“大口解約リスク”は決して小さいものではないと思いますが、ファンドが集めた資金額に占める大口資金の割合は公表されていません。つまり、ファンドに内在されている大口解約リスクの度合いを知る術がないのが実情です。

このリスクに対応する対応策となるのは、そのファンドの純資産額の規模や、資金流入の推移から、大口資金の存在を推測し、万一、投資対象市場が急落した場合には早い段階で解約・換金することです。

たとえば、純資産額が大きかったり、目に見えて資金流入が拡大していたりするファンドは、大口資金が入っている可能性が大きいと考えられます。

よく、「資金流入が続いているのは良いファンドの目安」のように言われることがありますが、同時に、“大口解約リスク”が増していると捉えておくことも重要です。

【投資信託】「特別分配金」の謎は、以上です。

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