チャートの理論を売買の実践でどう活かすか
これまで株価チャートに関する本を数冊執筆してきました。いずれも、チャートの理論を紹介するテキスト的な内容でしたが、本書「<株>ケイ線・チャートで儲けるしくみ」はこれまでとは異なる展開を試みています。チャートの見方の基本はもちろん紹介していますが、テキストというよりも、本書は読み物に近い実用書です。
テーマは、「チャートの理論を売買の実践にどう活かすか」。つまり、その理論を利益に結びつけるためには、チャートのどこを見て、売買のどんなシーンでそれをどう使えばいいのか、です。
後々になってチャートを見れば、確かに理論が示す通り、上昇局面の初期段階には強気パターンが現れ、下降局面の初期段階には弱気パターンが現れています。ならば、そのパターン通りにポジションを取ればラクラク儲かるはずですが、実際にはそうはいきません。それは何故か。チャート分析の目的である「継続するトレンドの中でより有利に取引する」ことを目指すにはどうすればよいのか。チャートの理論の原点に立ち戻って考察しています。
株価チャートというと、“買いシグナル”“売りシグナル”がとかく注目の対象になりがちですが、売買シグナルばかりが株価チャートの使い途ではありません。本書をご一読いただけば、売買の実践に使うチャートの理論の要諦がわかります。
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市場全体の平均である株価指数は、市場全体の動向を代替する数値といえます。日本ならば、国内外から「日本市場」として認知されている日経平均株価です。
市場全体の良し悪しは「儲かりやすさ」に直結します。よって、どの個別銘柄を売買するにしても、日経平均株価の動向を捉えることが第一に重要です。
とくに近年、日経平均株価の派生商品である日経平均先物が主導する形で株式市場が上下する傾向が強まっています。その意味でも、日経平均株価および先物の動きに無関心でいることはできません。
本書では、日経平均株価のチャートがそこかしこに登場します。チャートの理論には天底のチャート・パターンが示されているにも関わらず、日経平均株価が天井圏にあるときに、なぜそれを察知できないのか。個別銘柄を買い出動するとすれば日経平均株価がどういう状況になったときがよいのか。長期的な日経平均株価の大底を捉える策はあるのか等々。短期的な値動きから超長期のトレンドまで、様々な角度で日経平均株価の捉え方を紹介しています。
本書で取り上げているのは、トレンドやチャート・パターン、ローソク足、移動平均など、伝統的なチャートの理論の中でも極めてベーシックな項目だけです。
「そんな初心者向けのことは百も承知だ」という方も多いことでしょう。あるいは、「いまの市場ではそんなものは役に立たない。もっとテクニック的なことが知りたい」と考える方もいるかもしれません。
しかし、初心者でもわかるようなことは役に立たない、高度な専門知識がなければ理解できないような複雑な理論ならパフォーマンスがあがる、というわけではありません。
今日の市場を見ていると、一方向に動き出すと全体がその方向にあっという間に動くという、値動きが単調化する傾向が強くうかがえます。その行き着く先が、チャートの理論に示されている、まさに教科書通りの水準である例は枚挙に暇がないのが現実です。
また、掲載しているチャートの理論には、実践で使ううえでの視点がいろいろあります。本書では、一般に解釈されているのとは異なる見方・使い方や、具体的にそれを売買のどんなシーンでどう活用するかなどを紹介しています。
本書の内容は、初心者の方はもちろんですが、すでにチャートの見方の基本をご存知の方、株式の売買を長く経験されている方にも、売買の視点を再考する一助にしていただけるのではないかと期待しています。本書では、過去の様々な相場局面を振り返りながら、なぜ、その局面にあるときにチャートの理論通りの売買ができないのか、その原因の解明も試みています。おそらく、すでご存知であるがゆえに実感をもってご理解いただける部分が少なからずあると思います。