大震災直後の3月15日、58億株近くの超大売買高を記録したのをピークに、以後、売買高も売買代金も細る一方となっています。かねてから市場参加者が限定的になっている感はありましたが、今日、参加者はよりさらに減ってしまっているのではないでしょうか。
日々行われている売買といえば、主力銘柄はインデックス絡みと見られるものばかり。報道などでは、取ってつけたような材料を出したりしていますが、どう見ても、指数調整のためにドタバタ高速売買しているだけです。
主力でない銘柄も、先物を見て動いていればまだマシで、死んだように動かなくなった銘柄も目につきます。たまに、「おっ、ようやく来たぞ」という動きが出ても、その動きが翌日まで続かない。翌日はおろか、その日の大引けどころか、前場引けまですらも続かず、ずるずる下がってまた動かなくなる例も珍しくないのが現状です。
とはいえ、全体としてはそんな状況ではありながらも、個別に見れば、結構いいトレンドを続けている銘柄もないわけではありません。
そうした銘柄に目星をつけるにはどうすればいいのか。
そのヒントのひとつは、売買代金にありそうです。
株価が動き続けるには、それ相応の売買高が必要になります。その意味では、売買高の多い銘柄を「出来高ランキング」なりでチェックするのもよいのですが、ただ、売買高の大きさは単元株数によってかなりの違いが出てしまいます。
その点、売買代金ならば、単元株数とは関係なく、取引されている資金額の大きさを比較することができるわけです。
当サイトの読者様向け情報ページでは、毎月「1日あたり売買代金ランキング」を掲載しています。
前月1ヶ月の1日平均の売買代金が大きかった250銘柄のランキングなので、当然ながら、上位には主力銘柄や大型株が名を連ねることになりますが、注目したいのは、順位そのものもさることながら、過去3ヶ月平均と比較したときの順位の変動、売買代金額の変動です。
順位自体は高くはなくとも、平均の売買代金が大きく伸びている、順位が大幅にアップしているのは、取引資金量の水準が高まっている銘柄の証です。これが株価を動かすエネルギーになります。
6月2日に掲載した5月のランキングを見ると、売買代金が減少している銘柄のほうが目立ちます。このことからしても、市場全体の売買意欲は明らかに低落傾向にある、と言って間違いありません。
その中にあって、大幅に順位を上げている銘柄を調べてみると、好トレンド銘柄が発見できたりします。
上の4銘柄はその一例ですが、いずれも売買高の水準自体が過去よりも高くなっていることがわかります。トレンドのよさが取引を集め、取引が集まるからトレンドが継続している、という感じです。
もっとも、短期的に売買高が急伸し、株価もこれだけ上昇しているのですから、「突発的な動きではないのか」「そろそろ天井ではないのか」「これから参戦して大丈夫なのか」等々、疑念も沸いてくるのではないかと思います。
そこで、過去に遡ってこの4銘柄の値動きの傾向と売買高との関係を調べてみました。
<タクマ(6013)の場合>
グラフは、
赤:=引値が前日比上昇なら大引けでロング、前日比下落なら大引けでショート(銘柄自身の引値の前日比上昇下落に順張り)
緑= 225先物の引値が前日比上昇なら大引けでこの銘柄をロング、225先物の引値が前日比下落なら大引けでこの銘柄をショート(225先物の前日比上昇下落に順張り)
青=前日引値よりも高く寄り付いたらショート、前日引値よりも安く寄り付いたらロング(前日引値に対する寄り付き方に逆張り)
(いずれも大引け手仕舞い)
という想定売買の累積パフォーマンスの推移です。データ検証期間は03年4月からで、水色は日々の売買高を示しています(以下の銘柄も同様)。
5月8日に掲載した「【値動きの性格は変化する<その2>】ソフトバンクの場合」の中でも紹介したように、人気化すると値動きが順張り型(値上がりした翌日も値上がりする、値下がりした翌日も値下がりする)になる例が多く見られます。
この銘柄の「銘柄自身の引値に順張り」売買のパフォーマンスの推移(赤線)を見ると、売買高水準が大きく伸びた08年初前後や今年1月以降、右肩上がりを描いています。これは、「値上がりした日の翌日も値上がりする」「値下がりした翌日も値下がりする」という値動きの順張り型傾向が強まっていることを示します。
ただ、売買高がピークアウトすると、上向きだったパフォーマンスも調子を狂わせています。
この点を考えると、売買高水準が著しく高まっている現状、順張り売買は少し様子見としたほうがよさそうな雰囲気です。
これからこの銘柄を手掛けるのであれば、「前日引値に対する寄り付き方に逆張り」(青線)や「225先物の引値の前日比上昇下落に順張り」(緑線)の売買を検討するほうがよいと思われます。
<フェローテック(6890)の場合>
(この銘柄は貸借銘柄ではないのでショートはできませんが、検証上ではショート可として累積パフォーマンスを出しています)
データ期間の当初から「引値の前日比上昇下落に順張り売買」(赤線)は右肩上がりを描いています。売買高がさほどでなくとも、この銘柄の値動きは順張り型の傾向がある、ということです。
08年後半から09年前半にかけて、売買高の水準が一段切り上がっていますが、この局面ではパフォーマンスが荒れ気味になっています。売買高水準がさらに一段上昇している足元の状況下、やはりこの銘柄も、ここからの順張り売買は気をつけたほうがいいかもしれません。
一方、売買高水準が上昇してきた08年以降、「前日引値に対する寄り付き方に逆張り」(青線)のパフォーマンスの好調さが目につきます。直近も、赤線と緑線がパフォーマンスを落としているのに対して、こちらは右肩上がり継続中です。
<岩崎電気(6924)の場合>
売買高の推移を見ると、この銘柄はどうも「時として取引を集める」ものの、それは単発に終わる傾向があるようです。
今回も過去と同じなのかはもちろんわかりませんが、この銘柄の場合、取引が活発化して売買高が急伸しても「引値に対する順張り」(赤線)はさほど妙味をもたらしていません。
むしろ、注目に値するのは「225先物の前日比上昇下落に順張り」(緑線)でしょう。225採用ではありませんが、この銘柄を手掛けるならば、225先物の値動きをウォッチしておくべし、です。
もうひとつ、09年辺りから「前日引値に対する寄り付き方に逆張り」(青線)のパフォーマンスの基調が、それまでの右肩上がりから右肩下がりに変わっている点も注目されます。ということは、前日引値よりも高く寄り付くと場中はさらに買われる、前日引値より安く寄り付くと場中はさらに売られる、という「寄り付き方に順張り」型の値動きに転換している可能性を考えなければなりません。
「安く寄り付いたら買い」「高く寄り付いたら売り」という逆張り売買が有効な銘柄はかなり多いのですが、この銘柄の場合は、現状、その逆張りは慎重にしておくのが安全策といえます。
<高島(8007)の場合>
この銘柄もまた、時として祭り的に売買高が伸び、毎度単発で終わる傾向がうかがえます。そして、その祭り的な状況が終わってしまうと、「引値の前日比上昇下落に順張り」(赤線)の売買がパフォーマンスを大幅に落とす、という状況も、毎度繰り返されています。
この過去の実績からすると、足元の売買高急伸も単発で終わる可能性が強いように思われます。
この銘柄の場合、目先足元の人気化に乗ろうとするよりも、「前日引値に対する寄り付き方に逆張り」(青線)の戦法のほうが面白そうです。
読者様情報ページの「1日あたり売買代金ランキング」は、毎月初めに最新情報を掲載しています。枯れ続ける相場の中で気を吐いている銘柄を探したい、、あるいは逆に、人気が薄れてしまった銘柄を探してショート候補にしたい、といった際には、ぜひ活用してみてください。
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