11月19日付けの「アノマリー発見? 牛丼は秋に買え」の中で、三光マーケティングフーズ(2762)の例を紹介しました。
優待銘柄としてよく情報紙などにも取り上げられる銘柄ですが、権利確定月とその翌月の下落傾向があまりに鮮明で、優待取りの投資家が狙い撃ちにされているのではないか、という印象の値動きでした。
同様の値動きは、以前に取り上げた日本マクドナルドHD(2702)にも見られたわけですが、この2銘柄、優待内容はともに食事券。そして、いずれも非貸借。そうした優待銘柄は他にもあるはずです。
それらはどうなのか、気になって調べてみたところ、やはり怪しげな動きの優待銘柄が少なからずあることが判明しました。
たとえば、スターバックス・コーヒー・ジャパン(2712)について、「上がりやすい月」「下がりやすい月」を調べてみると、表1のような結果が出てきました。
権利確定は3月末。3月は、やはり「下がりやすい月」になっています。
優待内容は「1株〜4株=ドリンク券2枚」と取り立てて豪華なわけでもなく、また優待銘柄として人気が高い銘柄ではないものの、これも狙い撃ちにされている可能性が否定できません。
注目している銘柄が、いつ上がり、いつ下がるかなどは、当然、事前にはわからないものですが、優待銘柄の場合は、「優待がある」という材料でいつ買い手が集まりやすい、その買い手を狙った売り手がいつ集まりやすい、というシクリカルな動きを予測しやすい面があります。
その傾向がはっきりしている銘柄であれば、株主優待などには全く興味がなくても、トレード対象の候補にできるのではないでしょうか。優待以外に売り買いされる材料がほとんどない銘柄であればなおさらです。
極端な例をひとつ。
回転寿司の銚子丸です。優待内容は、100株〜199株の株主が2500円相当の食事券(200株以上は5000円相当)で、権利確定は5月15日と11月15日。月足チャートを見ると、ジャスダック上場から直近まで、5月と11月は全て陰線。見事です。
近年は、権利確定月の売買高が爆増する傾向が鮮明になっています。
2011年の株価と売買高の推移です。3月の大震災で株価が急落したとき、5月の権利確定を狙った買いが相当に入ったのでしょう。そして、5月に向けて上昇し、権利付き売買最終日をまたいで急落。その後、日々の売買はスカスカになり、また権利確定月の2ヶ月前辺りからじわじわ買われはじめる、といった動きです。
この11月の権利付き売買最終日の翌日もギャップで急落。目下、月足陰線がぐんぐん成長しています。
この値動きの傾向からすると、たとえば、権利確定月の前、3月と4月、および9月と10月の2ヶ月間をロング、権利確定月の5月と11月はショートする、といった売買が有効そうです。
非貸借銘柄なので、制度信用取引ではショートできませんが、できたとすれば、累積パフォーマンスの推移はグラフ2のAようになります。
Bは3月・4月、および9月・10月のロングのみを想定した場合で、こちらも累積パフォーマンスの推移は右肩上がりです。ただ、Aと比べると、差が拡大しています。5月・11月のショートの効果がかなり大きいようです。
以前も述べたように、独自に借り株ができる人たちは非貸借銘柄でもショートできます。その場合、貸株料は払いますが、制度信用のように逆日歩がかかることはありません。
優待内容が金額換算しやすい銘柄の場合、権利落ち時に、配当金相当額に優待金額相当分も加わった値幅分、株価が落ちるケースがままあります。優待以外に売買される材料がない銘柄ともなれば、その後は、とくに相場が盛り上がらない局面では、株価はズルズル下がるだけ、ともなってしまいます。
このシミュレーション結果を見ると、そうした状況を狙って借り株ができる人たちがやりたい放題やっているようにも映ります。
権利確定時に大下げする銘柄は、その翌月、あるいは翌々月まで下落を引きずるケースが目につくのですが、中には、権利確定の前月からすでに値下がり傾向が出ている銘柄もあります。
ココスジャパン(9943)がその例で、権利確定は3月・9月です。
グラフ3のAが、権利確定月とその前月(2月・3月、および8月・9月)はショート、その前の2ヶ月(12月・1月、および6月・7月)はロングという、2ヶ月ずつポジションを取る売買の累積パフォーマンスです。その推移もまた、一貫した右肩上がりを描いています。
Bはロングのみの累積パフォーマンスで、これも悪くはないとはいえ、やはりショートの利益が相当に効いていると見て間違いありません。これまた独自で借り株ができる人たちのやりたい放題になっている雰囲気です。
ちなみにこの銘柄、かつては2月・8月が優待の確定月でした。2月、8月から売られはじめるというのは、その頃の名残なのかもしれません。
他の銘柄も売買検証をしてみましたが、いずれもショートの利益の効果が大きく、ロングのみでは今ひとつパフォーマンスが伸びません。
ここで紹介した例も含め、ロングのみで勝負するとすれば、たとえば、権利確定月の2ヶ月〜4ヶ月前に何らかのきっかけで株価が大きく下げたときに買っておき、権利確定月の月初に売る策が考えられます。
市場全体が下げれば、ほとんどの銘柄はそれに連れて下がりますから、怪しい優待株を買うチャンスにもなりそうです。その局面到来に備えて、予め優待ウォッチ銘柄リストを作っておくのもよいかもしれません。