『株テクニカル情報』では、今回の2012年新春号より「各種指標との相関性」欄の項目に、東証マザーズ指数を加えています。
何故マザーズ指数なのかというと、個別銘柄とこの指数との関係を調べてみたところ、高い相関性を示すケースが意外なほど多かったことによります。
旭化成(3407)の「各種指標との相関性」欄です。マザーズ指数に対する相関係数はプラス0.84。この銘柄は225採用であり、時価総額も88位という比較的高い順位であるにも関わらず、日経225やTOPIXとの相関性よりも、マザーズ指数との相関性のほうが高いという結果です。
とはいえ、この欄の相関性は「『今日』のマザーズ指数と、『今日』の旭化成の株価」との相関関係を見ているものなので、「今日マザーズ指数が上昇したら、翌日旭化成も値上がりする傾向がある」という関係を示すわけではありません。そうした関係があれば、マザーズ指数をシグナルにして旭化成を売買するとパフォーマンスがあがるはずですが、検証してみると、こんな感じになってしまいます。
「なーんだ」と思ったかもしれませんが、この指数がいい仕事をしてくれる例もあるのです。
225寄与度が非常に高い京セラ(6971)について、「マザーズ指数が上がった日は大引けでショート」「マザーズ指数が下がった日は大引けロング」という、“マザーズ指数に逆張り”の売買を検証してみた結果です。
この銘柄は、225先物の前日比上昇下落シグナルに対しても逆張り売買が有効ではあるのですが、マザーズ指数をシグナルにしてみると、このように225先物シグナルをはるかに上回る結果が出てきます。
ちなみに、京セラの「各種指標との相関性」欄はこのようになっています。
日経225やTOPIXほどではありませんが、マザーズ指数との相関性も比較的高くなっています。つまり、「今日」のマザーズ指数は、「今日」の京セラの株価と同じ方向で動く傾向がある、そして、「翌日」の京セラの株価との関係で言えば、逆の方向になる傾向が強く、よって、“マザーズ指数に逆張り”売買が有効、ということです。
それにしても、マザーズ指数とは全く関係なさそうな銘柄でありながら、マザーズ指数の上昇下落をシグナルにした売買でパフォーマンスが上がるというのは少々不思議な感じもします。
そこで、マザーズ指数の値動きの傾向を調べてみました。
マザーズ指数をひとつの銘柄に見立てて、225先物の上昇下落をシグナルにした売買を検証してみた結果です。
パフォーマンスがきれいな右肩上がりを描くということは、マザーズ指数は、「225先物が上がった翌日は上がりやすい」「225先物が下がった翌日は下がりやすい」という傾向があることを意味します。
では、225先物自身の値動きはどうなのかというと、「前日比上昇ならば大引けでロング、前日比下落ならば大引けでショート」という順張り売買を検証してみると、はっきりした傾向が見えません。
累積パフォーマンスがマイナスですから、「どちらかと言えば、上がった日の翌日は下がる、下がった日の翌日は上がる」という逆張り型の傾向は、弱いながらもありそうです。
そうすると、たとえば、今日225先物が上昇し、マザーズ指数も上昇している、という日があったとすると、グラフ2で見た京セラのマザーズ指数をシグナルにする逆張り売買は、結局、225先物の上昇下落をシグナルに逆張りの売買をするのと同じ意味になります。その場合のパフォーマンスは、これもグラフ2で見た通り、水準的には高くはありませんが、取りあえずは右肩上がりの推移を描きます。
その翌日、マザーズ指数は上がり、225先物は下がったとします。京セラの売買は「マザーズ指数に逆張り」ですから、この場合の京セラのポジションはショートです。ということは、225先物の下落に対しては順張りのポジションということになります。
どうやら、この「マザーズ指数に対しては逆張りだが、225先物に対しては順張り」となるところでパフォーマンスを稼いでいるフシがあります。
京セラの例は、“マザーズ指数に逆張り”の売買でしたが、とくに新興株の中には、マザーズ指数の上昇下落に順張りの売買が奏功しそうな例が少なくありません。
この銘柄は貸借ではないので、実際には「マザーズ指数が下がったらショート」はできませんが、この “マザーズ指数に順張り”型の値動き傾向の強さは大いに注目できます。
マザーズ上場銘柄に限らず、ジャスダック上場銘柄でもマザーズ指数が有効なシグナルになりそうな例はしばしば見られます。
当欄では、その銘柄自身の上昇下落をシグナルにした売買や225先物の上昇下落をシグナルにした売買の例を紹介してきましたが、そのシグナルではパフォーマンスが今ひとつ、という場合、マザーズ指数に目を向けてみるのも一策になりそうです。予想外の好結果が得られるかもしれません。
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