日本株市場全体に「おっ!」という良い動きが見え始めたのは1月のSQの頃。その良い雰囲気は1ヶ月を経過してもなお継続中です。おそらく、日々ホクホクしている人も多いことでしょう。
年初からの日経平均株価の動きを振り返ってみると、安値(1月6日・8349円)から直近の高値(2月22日・9564円)まで、値幅にして1200円超。14.55%にもなります。1月18日以降は押し目らしい押し目もありません。
こうなってくると気になるのが、「目先の上値はどの辺りか」ではないでしょうか。昨年来の流れからすると、日経平均9500円前後で一服か、とも予想されたところですが、現在その水準まで上昇し、一服感が出そうで出ない、といったムードになっています。
では、この9500円水準をクリアした場合、その先の節目はどこなのか。これは、「ひとまず利益確定を」と考えている人はもちろん、押し目での買い出動を待っている人にとっても、大いに関心があるところだと思います。
上値目処の考え方としては、チャート上のレジスタンス水準に着目する方法があります。過去に上昇した後に下落に転じた高値水準、あるいは、「かつては、そこまで下がると下げ止まっていたものの、強い下げ圧力でそこを下方にブレイクした」水準で、その近辺は市場参加者の意識も集まりやすいと考えられます。
日経平均株価のレジスタンスはチャートを一見すればすぐに把握できますが、ここでは、いまなお日本市場のメインプレーヤーとなっている外国人投資家の目線で考えてみます。
グラフ1はドル換算の日経平均株価の推移です。これは、日本株の資産額をドルで評価している人たちの資産額の推移とも解釈できます。
参考までにNYダウも示していますが、これを見てまず感じるのは、大震災の影響を除けば、少なくとも昨年夏までは、米国株に比べて日本市場もさほど悪いわけではなかった、ということではないでしょうか。「悪いわけではない」どころか、09年の反発局面では、NYダウを上回る強い上昇基調です。「米国株は“リーマン・ショック”前の水準までしっかり戻しているのに、日本株はまるで戻らない」などとしばしば言われたりしますが、日本株の資産をドルで評価している人たちは、かなり資産額を回復させていたのです。
このドル換算日経平均株価チャートでレジスタンスを見てみると、まず、過去においては@の120ドル近辺という水準があります。1ドル=80円とすると、2月22日時点のドル換算日経平均株価は119.425ドル。結構いいところまで来ています。
仮に、ドルがここから上昇し、たとえば1ドル=81円になったとすると、ドル換算120ドルの日経平均株価は9720円。1ドル=82円ならば、9840円です。
ただ、この120ドルの水準は2010年の上昇で一度ブレイクしていますから、比較的簡単に抜ける可能性もあります。
この120ドルを抜けた場合、次の目標値は2011年3月初および7月末につけたAの高値水準になります。それぞれ131.4ドル(3月1日)、129.6ドル(7月26日)なので、130ドルを目安にしてよいでしょう。それに相当する日経平均株価は、1ドル=80円ならば1万400円、1ドル=82円なら1万660円です。
ところで、「さっぱりダメ」のように見える日本株市場もドル換算にするとさほど悪いわけではない、ということは、何かにつけて「調子がいい」と評価される米国市場を円換算したらどうなるのでしょうか。「NYダウはリーマン・ショック前の株価水準を上回った」とか「ナスダックはITバブル時の高値に迫っている」などと賞賛されますが、ドルはかつてよりも大幅に安くなっています。果たして、円ベースで見ても「調子がいい」のでしょうか。
グラフ2は、2000年以降のNYダウおよびナスダック指数を円換算したチャートです。これのどこが「調子がいい」のでしょうか。NYダウは“リーマン”前の水準と比べて約3割も安い水準。ナスダックにいたっては、IT相場に沸いた2000年3月のピーク水準の半分以下(約44%)でしかありません。
参考までに日経平均株価も示していますが、日経平均株価と大差がない、むしろ日経平均株価のほうが上回っている局面が目立ちます。いかにドル安が米国市場に寄与しているか。逆から言えば、いかに円高が日本市場にマイナス作用を与えているかがうかがい知れるところです。
もちろん、米国の個別銘柄の中には、円換算しても素晴らしい上昇基調を描いている銘柄もあります。
アップル(AAPL)の円換算チャートです。2000年当初と比較すると、これだけ円高になっていても、円換算株価は約15倍にもなっています。
「やっぱりアップルはすごい。アメリカはさすがだ」と思うかもしれません。が、参考までに日本市場の超優良銘柄であるファナック(6954)の株価を見てください。こちらもかなり素晴らしいのではないでしょうか。
ちなみに、ファナックの株価をドル換算してみると、グラフ4のような推移になります。
円換算アップルの株価の伸びほどではありませんが、ドル換算ファナックの株価は、02年の安値から直近まで5.3倍になっています。
改めてグラフ2を見ると、アップルのように円換算でも素晴らしい上昇を描いいている銘柄があるにも関わらず、ナスダック指数、あるいはNYダウを円換算すると日経平均株価並み。ということは、日本人が米国株を買っても、大方の銘柄は、日本株に投資して得られるパフォーマンスと大した違いはない、と考えなくてはなりません。
つまり、日本人が「日本株はダメだから、調子のいい米国株に投資しよう」と思っても、いずれ資金を円に戻すのであれば、アップルのようなごく一部の優良銘柄でない限りは、そのメリットはほとんどない。それどころか、株価が伸びなければ、ドル安によって円換算の資産額は目減りする。対して、外国人からすれば、株価が伸びない大多数の銘柄に投資しても、ドル換算すれば資産額が増えている。そんなアンバランスな構図が長らく続いてきたのが実情です。
話が逸れてしまいましたが、再び「目先の上値目処」について、今度は、全く別の視点で考えてみます。
株価を動かすものは何かといえば、結局のところ、大きな意味での需給、すなわち、買いたい人と売りたい人との力関係です。
この力関係は、「発行済み株式数×株価」で計算される時価総額によって捉えることができます。
時価総額は全供給量の総額を表しています。この総供給額のうち、売るだけ売って市場から出ていきたい供給側の資金額よりも、買いたい需要を持った資金額が上回れば株価は上がり、時価総額は増えることになります。これは、市場の規模が拡大することでもあります。
逆に、市場から出ていく資金額のほうが、買いたい需要の資金額を上回れば、株価は下がり、時価総額も減ります。つまり、時価総額の推移は、需要と供給の力関係がどう変化しているのかを表すものでもあるわけです。
そうすると、時価総額のチャートでレジスタンスになっているところは「そこまで時価総額が増えると、売りたい力のほうが上回った」と解釈することができます。この時価総額のレジスタンスから、株価水準のレジスタンスを考えてみましょう。
まず、目先の“高値”となっている時価総額は、2011年7月8日の298.64兆円。現時点(2月22日)の時価総額283.48兆円よりも約15兆円高い水準です。
時価総額の15兆円分は、日経平均の値幅にしてどのくらいになるでしょうか。
この時価総額は東証1部の数字なので、まず、時価総額1兆円分が現在のTOPIXの何ポイント分にあたるのかを計算してみると、「2月22日時点のTOPIXの終値825.4ポイント÷同日の時価総額283.48兆円」の2.91ポイント。15兆円分はその15倍のTOPIX43.63ポイント分に相当します。よって、目先の時価総額レジスタンス298.64兆円は、TOPIXにすると「825.4ポイント+43.63ポイント」の869.03ポイントと計算されます。
このTOPIX869.03ポイントが日経平均株価のいくらに相当するのか、NT倍率(日経平均株価÷TOPIX)を用いて計算してみます。2月22日時点のNT倍率は11.58倍(日経平均株価8554円÷TOPIX825.4ポイント)で、これを先ほどの869.03ポイントに掛けると、1万63円。時価総額からすると、日経平均の1万円近辺辺りが目先のレジスタンスのようです。
その先の時価総額のレジスタンスとなっている水準は、2010年4月27日の336.04兆円と2011年2月21日の331.96兆円で、概ね330兆円強といったところ。現状よりも50兆円ほど高い水準です。
これも、「時価総額1兆円あたりTOPIX2.91ポイント、NT倍率11.58倍」を用いて計算してみると、これに相当する日経平均株価はおよそ1万1239円となります。
NT倍率の値が変化すれば、「現状プラス50兆円分」の時価総額に相当する日経平均株価もまた違ってきますが、「買いたい資金」が大震災前の水準まで戻るとすれば、日経平均1万1000円台回復もあっておかしくない、という結果です。
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