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【新興市場】なぜか、上昇相場の恩恵に授かれないこの銘柄

ジャスダック市場の中にある“温度差”

まだ3月の半ば過ぎですが、株式市場は陽々の春モードです。日経平均株価は1月第2週から3月第3週まで、週足で10本連続陽線。押し目買いを狙っている人からすると、まさに「押し目待ちに押し目なし」の心境かもしれません。

振り返れば、この上昇相場の先陣を切ったのはジャスダック市場でした。日経ジャスダック平均は昨年11月24日の安値以降、約4ヶ月にわたって見事な右肩上がり。昨年12月からの週足をみると、陰線はわずか1本だけ。週次の終値は前週末比で全て上昇という、極めて強い展開です。3月16日の引値時点で、震災前の株価水準も上回っています。

とくに好調ぶりが顕著になったのは1月後半から2月にかけてです。その様子は、報道でも「新興株が好調。ジャスダック市場は12日連続上昇」などと伝えられていましたが、それを見て「おかしい。自分の買った新興株は全然上がらない。自分だけがダメなのか…」と暗い気持ちになった人もいるのではないでしょうか。

おそらく、それは「自分だけ」ではありません。

図表2は、大証が公表しているジャスダック指数の週足チャートです。図表1で見た日経ジャスダック平均が昨年12月から上昇しているのに対し、こちらは1月まで株価はもみ合い状態。上昇らしい動きが見えたのは2月に入ってからです。現状の株価は、昨年7月の高値とほぼ同じ水準で、震災前の高値にはまだ達していません。

このジャスダック指数と日経ジャスダック平均、同じジャスダック市場を対象とした株価指数でありながら、こうも異なる推移になっている理由は、指数の算出方法の違いにあります。

日本経済新聞社が公表している、日経ジャスダック平均は、日経平均株価と同じ株価平均型の指数で、時価総額は考慮されず、採用株価の高い銘柄が指数に対する寄与度も高くなります。時価総額の小さい、値動きの軽い銘柄が値を上げていけば、それとともに指数に対する寄与度が高まり、その株価上昇がまた指数を押し上げていく格好になります。

一方、大証公表のジャスダック指数は、東証TOPIXと同様の時価総額加重平均で算出されます。時価総額の大きい銘柄、いわばジャスダック市場の主力銘柄の株価動向が指数に強く影響することになるので、「主力がダメだと、指数もダメ」ということにもなってしまいます。

ジャスダック市場上場銘柄の中で時価総額が飛び抜けて大きい楽天(4755)の日足チャートです。昨年10月以降、今年2月20日まで、上下に振れながらもトレンドは右肩下がり。ジャスダック市場の主力でない銘柄がモリモリと値を上げ、日経ジャスダック平均が過去の記録に迫るような連日上昇を演じていたとき、市場の最主力銘柄は冴えない動きを続けていたわけです。

ちなみに大証では、時価総額や流動性などの面から選定した、ジャスダック市場を代表する20銘柄の「JASDAQ―TOP20」という指数も公表しています(指数の概要や構成銘柄はこちらから≫≫)。その「ジャスダック市場を代表する20銘柄」の中にも、冴えないどころか、この上昇相場の恩恵に全く授かれていないような銘柄があります。

こうした銘柄が対象になっていることから、JASDAQ―TOP20という指数は「本当に日経ジャスダック平均と同じ市場の指数なのか」と疑いたくなるような推移になっています。

震災前の株価は、はるか遠く彼方です。


マザーズ市場も主力銘柄は未だ寒々しい

ジャスダック市場と並ぶもうひとつの新興市場、東証マザーズもまた、状況は似ているようです。

東証マザーズ指数の週足チャートですが、これまた震災前の株価水準ははるか彼方、という以前に、昨年7月以降のベア相場が終わったのかどうか、それすら怪しい推移となっています。

マザーズ指数も、ジャスダック指数と同じように時価総額加重平均型の指数で、時価総額の大きい、市場の主力銘柄の株価動向が強く影響します。

マザーズ市場の時価総額断トツ1位のサイバーエージェント(4751)と、第2位のスカイマーク(9204)の日足チャートです。サイバーエージェントは「新興株が好調!」と報道されていた時期に安値をつけて、以後はレンジ内の動き。上値は少しずつ切り上がってはいるものの、まだ何とも言えない状況を強いられています。スカイマークに至っては下げっぱなしです。

こうして各指数を比べてみると、日経ジャスダック平均という指数だけが例外的に、突拍子もなく素晴らしい推移を描いているかのようにも映ります。が、新興市場ではありませんが、同じように非常に強い推移を描いている株価指数があります。

東証2部指数の週足です(日足チャートで見ると、この指数の好調ぶりがより如実にうかがえます)。この指数もマザーズ指数と同じ時価総額加重平均型なのですが、東証2部上場銘柄には飛び抜けて時価総額が大きい銘柄がないため、算出結果の数値が株価平均型に近くなると考えられます。


軟調な新興市場主力銘柄の対応策を考える

ここまで見てきた各指数のチャートの形の違いは、総じて言えば、時価総額の小さく値の軽い銘柄の中にはよい動きのものが多く、時価総額の大きい、流動性のある主力的な銘柄の中にはよくないものが結構あるという、銘柄によって体感温度にかなり差があることを示しています。

なぜ、新興市場の主力的な銘柄によくないものが散見されるのか。もしかすると、市場全体が「好調」と言われている裏で、ヘッジ目的か何かで「売り」対象銘柄になっているのかもしれません。、また、先ほど見たサイバーエージェントやスカイマークがそうですが、いま「よくない動き」になっている銘柄の中には、日経平均株価が崩れ始めていた昨年秋頃までは「かなりいい動き」をしていた銘柄が少なくありません。そこで評価益を貯めていた参加者が、それらの銘柄を売り、これから上値が狙えそうな銘柄に乗り換えている可能性も考えられます。

いずれにしても、こうした状況になっていることの背景として推測されるのは、新聞その他のメディアが「株式市場が絶好調だ!」とはやしている割には、新たに市場に入ってくる投資家があまり増えていない、市場参加者の顔ぶれは相変わらず同じで限定的なのではないか、ということです。

とはいえ、昨年末から今年初めにかけての状況に比べれば、明らかに「よい動き」の銘柄は増えています。さらにこの先、新たに入ってくる個人投資家や腰の据わった機関投資家が増え、市場参加者の層が拡大すれば、現状「よくない動き」の銘柄も「よい動き」になってくることも期待されます。

ただ、保有している銘柄の値動きに好転の兆しがまるで見えず、ずるずる売られる状況が続いているのであれば、何らかの策を講じておきたいのは言うまでもありません。

最も端的なのは、現状「よくない動き」の銘柄に見切りをつけて、「よい動き」の銘柄に乗り換える“銘柄入れ替え”ですが、もう少し保有していたい場合には、同じ銘柄を信用売りしてヘッジする策も考えておいてよいと思います。

もし、その新興株が非貸借銘柄で信用売りができない場合には、ETFを活用する手もあります。

ジャスダック市場に関連するETFとしては、先ほどの「JASDAQ―TOP20」指数に連動するJASDAQ―TOP20上場投信(1551)があります。また、マザーズ関連では、マザーズ・コア上場投信(1563)が昨年12月に上場しています。どちらも市場を代表する銘柄で構成される指数を対象としたETFですから、とくに新興市場の主力的な銘柄のヘッジを考える際には検討に値しそうです。



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