株式市場が上向いていたことから、株関連媒体がモリモリ張り切っているようです。株関連媒体というのは、相場がよければ売り上げが伸びる、相場が悪ければ売り上げもダメ、という株価連動型ですから、「久々にやってきた売り上げ大幅アップの大チャンス」といったところかもしれません。
株関連記事といえば、とにもかくにも「銘柄」です。銘柄をたくさん掲載することに全力をあげているかのような誌面もよく目にします。それはそれで読者の方々の参考になると思いますが、見出しなどが少々煽り気味だったりすることもあるので、その点は承知のうえで眺めたほうがよさそうです。
3月21日発売の『日経マネー5月号』(日経BP社)という雑誌で、「元気な日本株・100人が選んだ強い100銘柄」という特集が組まれています。その中に「相場の波に乗る 短期3倍期待株30銘柄」「仕込みの好機! 長期大化け期待株34銘柄」が掲載されているのですが、この銘柄を選んだ人たちは、「短期3倍」「長期大化け」といったコンセプトで選んだのではない可能性があります。
たとえば、「短期3倍期待株」の中に、アルインコ(5933)が出ています。この銘柄をあげたのは、誰を隠そう弊社の阿部。掲載誌を見て、エェェ! です。
この銘柄は、「2012年有望だと考えている銘柄(大型株・中小型株それぞれ)」という質問に対してあげた1つです(もう1銘柄は信越化学4063)。「短期3倍の爆騰期待」の銘柄だと言うつもり は微塵もありません。
有望と考えた背景は、まず、昨年秋以降いい動きをする銘柄が多い大証2部銘柄だということ。その中で、この銘柄は、昨年11月以降、非常にきれいな足を描いています。
業績的にも悪くありません。加えて、事業内容的にも材料視されそうなものも持っています。「こういう銘柄なら、先物のドタバタ売り買いにそんなに付き合わされずに済むのでは」ということで、注目している銘柄としてあげた、というのが実際のところです。
「短期で数倍」の値上がりが期待できる銘柄は、同時に、短期で数分の1に値下がりする可能性がある銘柄、つまり、非常にリスク・リターン度が大きい銘柄といえます。
もっとも、市場がどん底、真っ暗なときに必要以上に売り込まれすぎた銘柄を市場反転タイミングで買うのであれば、リスクの少ない優良銘柄でも「短期で数倍」が期待できる可能性はあります。しかし現状、すでに市場は反転していて、そうした大底買いの局面は終わってしまっています。
現状の局面から「短期で数倍」の値上がりを狙うとすれば、死ぬか生きるかの瀬戸際にあるような銘柄に賭ける、という格好にならざるを得ません。アルインコはそうした銘柄ではないと考えています。ちなみに、この「短期3倍期待」のリストに載っている他の銘柄を見ても、 “イチかバチか”的な銘柄は あまりないようです。やはり、単に「今年有望と思う銘柄」とか「今年値上がりが期待できる銘柄」ということで各関係者があげた銘柄ではないかと思われます。
ところで、ここまで順調に値を伸ばしてきたアルインコですが、この先も市場環境がよく、値を伸ばしていくとしたら、上値の目標値はどの辺りになるのでしょうか。この銘柄は、過去5年来の高値水準に来ていますから、さらに長期のチャートを見てみましょう。
長期チャートを見ると、この銘柄は08年10月、03年のサポート水準近辺で下げ止まり、09年半ばから1年少々は冴えなかったものの安値は更新せず、以後、脈々と値を上げてきたことがわかります。現在の株価水準は、09年2月のピークからの下落局面の中の戻り高値(07年)の水準、600円前後です。この07年の600円前後は(やや下向きの)もみ合い状態となっていることからすると、もしかすると、この水準をブレイクするのには少々時間を要するかもしれません。
この600円前後をブレイクした場合、次の目標値は06年7月に形成したレジスタンスの700円処、その次が、09年のピーク水準800円処となります。時間軸を考慮すると、仮に600円処を比較的容易にブレイクした場合、よほどの強い材料がない限り、800円超えするには、短くとも6ヶ月程度はかかると考えられます。
さらに皮算用的な話になってしまいますが、もし、06年の高値を突破した場合、チャートのベーシックな考えに基づけば、06年高値870円に「06年高値870円−08年安値185円」をプラスした1555円が目標値ということになります。1555円といえば、現状の株価の3倍弱。「短期」でなければ、3倍程度の株価水準は上値の目標値になり得る、というわけです。ただし、相場がよほどヒートした状況にならなければ、それまでには3年以上かかることも予想されます。
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