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【1570】「日経レバレッジ指数ETF」の使い方

最初にお断りしておきますが、なでしこは投資信託の専門家ではありません。以下、表現の正確性・厳密度を保証するものではないことをご承知下さい。

(4月16日)日経平均レバレッジ・インデックス、日経平均インバース・インデックスの算出を丸め無し計算していたのを修正(日々のインデクス値を小数第2位に四捨五入)しました。関係する数値が微妙に変わっていますが、グラフ に変更はありません。

好調な滑り出しの日経レバレッジ指数ETF

4月12日に「日経レバレッジ指数ETF」が大証二部(コード:1570)に上場されました。12日、13日ともに10万株(口)を超える出来高で、ETFとしては非常に好調なスタートとなっています。

どういうETFかというと、日経平均ダブル・ブル投信、とも言える「価格が日経平均の2倍の値動きをする投信」です。正式名称は「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」で、愛称は「日経レバレッジ指数ETF」です。1倍のお金(買付代金)が日経225の値動きに「2倍」に連動して変動するので「レバレッジ」です。

今が上げ相場の中の押し目(調整局面)と見る人が多いのでしょうか、2倍ブルのレバレッジ型が人気を集めたのに対し、同時に上場されたベア型の「日経インバース指数ETF(1571)」の出来高は一桁少なかったです。下げを期待する人が少なかったというよりは、脳内で上げ下げ転換を行わなければならない商品性が やや敬遠された理由なのかもしれません。

どちらのETFも貸借銘柄ですから空売り可能です。レバレッジETFをショートすればダブルベア、インバースETFなら1倍ブル、みたいなことになります。

レバレッジを効かした日経平均のブルベアならば、先物や信用取引を行うのが素直な気がするのですが、現物の買いのみしか出来ない投資主体も多いので、これらのETFの需要はあるのでしょう。

日経のいろんな指数については、「日経平均プロフィル」でご確認下さい。


従来の225ETFとの違い

ダブルやインバースではない日経225ETFはだいぶ前から存在します。従来の225ETFは、日経平均採用の225の全銘柄をファンドの資金分(ほぼ100%)取得して保有しています。従って、当たり前ですがファンドの資産は日経225に連動して変動することになります。

今回の225ETFは、225銘柄を売買するわけではありません。指数に連動するように225先物をロング(あるいはショート)します。レバレッジ指数ならば、ファンドの資産額の2倍の225先物を買います。インバース指数ならファンドの資産額相当の225先物を売ります。

先物の売買に必要なのは証拠金だけですから、今だと約3.4%(※)の資金で済みます。レバレッジ指数だと2倍分の先物買いが必要なので3.4%×2=6.8%の資金が必要です。残りの9割以上の資金は短期公社債の運用などに回ります。(※ 4月13日。先物引値9640円に対してSPAN基準値が330円。基準値は相場の変動に応じて変化します。)

これらのETFのリスクの第一は日経平均株価の変動リスクですが、これは承知の上で変動リターンを狙うものです。ファンド資産の振り向け方を考えると短期公社債型投信と同等のリスク も内在しているのは頭の片隅に覚えておきましょう。

従来型の225ETFとは異なる、デリバティブを利用した225ETFということです。


長期投資には向かない?その理由

運用会社の説明によれば、「一般的に長期間の投資には向かず、比較的短期間の市況の値動きを捉えるための投資に向いている金融商品です。」と、なっています。これはどういうことでしょうか。

このインデックスは2001年の年末(12月28日)を10000として始まっています。黒い線は当初の日経平均(10542.62円)を10000とした日経平均の推移になります。直近(4月13日)では、9141.77です。一方、赤い線がレバレッジ・インデックスで、直近値は4431.24です。日経平均が約860ポイントの下落に対し、インデックスは約5570ポイントの下げになっています。2倍レバレッジなら、860×2=1320ポイントの下げで済むはずでは?と思ってしまいますが、そうはなっていません。

このETFの説明によれば、「インデックスの日々の騰落率(引値の前日比率)が日経平均の2倍となるように設計されている」となっています。「2倍」に問題がある かというと、2倍にも確かに問題はありますが、実はそもそも「騰落率」 という点に問題があります。

騰落率とは、引値の前日比率のことで、一般的にその日の上昇率(下落率)を表します。(引値−前日引値)÷前日引値をパーセント表示したものです。

株価が1%下落した場合、翌日1%上昇すれば下落前の株価に戻るのかというと、そうはなりません。

100円の株価が1%下落したら、99円になります。99円の株価が1%上昇すると99.99円です。0.01円足りないのです。99円のものが1円上がるには、1÷99=1.01010101...%が必要です。

日々交互に1%上げ、1%下げを繰り返したとすると、株価は確実に下がっていきます。

100→101→99.99→100.9899→99.98.... みたいな感じで、株価は2本の線(実は点の集まり)の間をジグザグに行き来しながら下がっていきます。1000日目には、95.1227となってしまいます。

では、2倍で交互に2%上げ、2%下げを繰り返したとすると、

1000日目には、81.8698となってしまいます。

株価の上げ下げを騰落率で表現する場合、同じような上げ下げの繰り返しでも、株価に下げバイアスがあるということです。逆に株価が横ばいを維持するには、騰落率合計でプラスが必要だということも想像できます。

起点と終点でみると、日経平均は若干の下げであるのですが、騰落率を累積して足し込んだ数字(青色)はプラスで、22.336%です。株価が横ばいの推移をしているということは、上昇率合計が下落率合計を凌いでいるということです。

ベア型のインバース・インデックスといえども、やはり下方に推移するバイアスの影響を受けます。

日経平均株価の推移を上下にひっくり返したのが水色の線(4月13日=10858.23)なのですが、実際のインバース・インデックスは赤い線に示される推移になっています(4月13日=5856.63)。 サブプライム相場の前のブル相場でインバース・インデックスは水準を下げてしまい、その後の相場崩壊においてでもインデックスが元の水準を回復するには至っていません。

2004年から2006年にかけては、日経平均の上げ下げ反転株価の動きほどには反応していないように見えますが、これはインデックスの水準が低くなり、その分動く値幅が小さ くなってしまったことによります。

ちなみに、個別株の中にはこんな極端な例もあります。

期間の起点(2009年7月1日)は4200円、終点(2011年4月13日)は1808円です。4割ぐらいに株価は下落しています。ところが日々の上げ下げ(騰落率)の累積でみると、+152.13%になります。長期ホルダーからみれば冴えない株ですが、短期トレーダーからみると買いの方が儲かりやすい、という意見も出てきそうです。それでも株価が下がってしまったのは、上昇の日数が281日に対して、下落の日数が389日(変わらずは12日)という歪みにあると考えられます

株価の変化を普通の騰落率(上昇下落率)で計算すると、株価の推移に下方バイアスが生じます。このバイアスを避けるには、株価の変化を対数で表示する(=LOG(今日の引値÷前日の引値))という方法もありますが、100円のものが101円になった場合、0.995%の上昇と言われるよりは、1%の上昇と言われる方が直感的でわかりやすいですよね。


このETFをどう使うか

長期的に見ると下げバイアスがあるというのならば、レバレッジ指数は売りで使ったらよいのでは?という考えが浮かんできます。10000に換算された日経平均株価を2単位買って(従来型の普通の225ETFで良いでしょう)、ヘッジとして日経レバレッジ指数を1単位ショートします。これを2001年末に行ったものとしましょう。

スタート時点での評価金額(日経平均株価×2−レバレッジ・インデックス)は、20000-10000=10000、です。評価金額の推移は青線で示したようになって、最終的な評価金額は13852.77です。

実際のところ、こんなに長期でポジションを維持するのは信用取引にかかる費用が問題でしょう。当初ポジションのリスクはゼロ(完全ヘッジ)ですが、次第にトータルポジションはロングあるいはショートに変化し、ヘッジ不足あるいはオーバーヘッジの状態になっていく問題をどうするかというのもあります。

算術の話はこれくらいにして、このETFの現実的な使い方を考えてみましょう。

日経平均先物に対してβ(ベータ)値は、ほぼ「2」と考えられます。従来の225ETFを先物の代用として利用している人にとっては、所要資金や手数料に 直結する売買代金が半分で済みます。

TOPIXと日経平均の関係に興味がある人には、一足先に東証に上場した「TOPIXブル2倍上場投信(1568)」「TOPIXベア上場投信(1569)」との合わせ技もあるでしょう。日経レバレッジETFの上場で、TOPIXブル2倍ETFの出来高は一段増えた感があります。 なお、日経型の方は売買単位が1株で数千円から始められますが、TOPIX型は10株単位なので最低所要金額は10万円前後です。

一方、ベータが「-2」に近い銘柄としては、「国際のETF VIX短期先物指数(1552)」があります。

対象原資産は違いますが(VIXはS&P500のボラティリティー指数)、このETFとの合わせ技もアリではないでしょうか。裁定やヘッジ付き取引の場合は、両方とも買うか、両方とも売ることになります。このETFは、騰落率計算とは別の理由で、長期的には 価格が低下する宿命にありますが、この点についてはまた別の機会に考えてみます。

ETFの空売りでは逆日歩に注意して下さいね。


225ETF・あれこれ

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