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【新年のご挨拶】 「ニュートラル」をうまく使いたい年

「強気一辺倒」とは言い切れない個別銘柄の動き

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年末、日経平均株価は非常に強い上昇を見せて引けました。年足は高値引けの大陽線。おそらく、「昨年はいい年だった!」という実感(=口座残高)をもって新年を迎えた方も多いのではないかと思います。

今年は昨年以上によい年に、という期待も満々の2014年。果たして、どうなるでしょうか。

メディア等に登場している強気論が指摘するように、株式市場を取り巻く環境は悪くはありません。企業業績および国内景気は今年から本格的に上向くと予想されること、金融政策はデフレ脱却という目標に向けた強い姿勢を続けていること、復興や東京オリンピックなど大きな需要を惹起する要因も複数あることなど、相場にとってプラス材料には事欠かない状況です。消費税増税にしても、その前の駆け込み需要に対する期待のほうが大きいようにも見えます。

需給面では、少額投資非課税制度「NISA」がスタートするというプラス材料があります。これを機に、安全第一の預貯金の一部が株式市場にシフトすれば、相場を下支えする存在にもなってくれそうです。

海外の動向も、現状、ネガティブな要因は見えません。米国をはじめ海外市場は年明けこそ大きく下げて始まったものの、何らかの悪材料が出たわけではありません。FRB議長も米国景気の先行きに対して明るい見通しを示しているようですし、少なくとも、先進主要国に関しては「強気」が主流といってよいでしょう。

と、このように見ていくと、「今年も相場がよい年」との予測になりそうですが、手放しに強気にはなれない要素もないわけではありません。

たとえば、『チャートブック新春特別号』で個別銘柄の株価の推移を見てみると、確かに、日経平均株価と同様、あるいはそれ以上に強いトレンドを描いている銘柄はそれなりに見つかります。ただ、ざっくり言って、そうした銘柄は上場銘柄の半分か、それ以下ではないでしょうか。日経平均株価が突如急落した昨年5月後半以降、未だにもみ合い状態から脱出できない銘柄や動かなくなってしまった銘柄、中には、昨年5月が高値で「もう終わっている」感を漂わせている銘柄も散見されるのが実情です。

実際、「過去1年来高値銘柄数・安値銘柄数」を見ると、日経平均株価は5月の高値を更新していながらも、過去1年来の高値を更新している銘柄数は、昨年5月の半分以下の水準に止まっています。また、「過去3か月来の高値更新銘柄数・安値更新銘柄数」では、年末にかけて安値更新銘柄数の方が高値更新銘柄数を上回っている状況でした。日経平均株価が高値を更新して「株式市場は絶好調!」などとメディアなどで報じられていたとき、好調などとは到底言えない、きわどい動きをしていた銘柄も少なからずあったのです。

<図-02>過去1年来・6か月来・3か月来の高値安値更新銘柄グラフ
(グラフをクリックすると長期のグラフが出ます)

また、12月26日付けの信用関連データのコメント欄でも述べたように、評価損益率は5月がピークで、以後、「山」の水準は切り下がっています。この点からも、5月の急落の痛手から抜け出せない銘柄の存在が推測できます。

この先、市場の好調が継続すれば、そうした銘柄も復活してくる可能性はもちろんありますが、現在のところは、「銘柄によりけりの好調相場」とも言えます。くれぐれも、「“出遅れ”銘柄を狙ったつもりが、既に終わっている銘柄を買ってしまった」などということがないよう、気を付けたいところです。


米国市場「5年も続いている上昇相場」の謎

もうひとつ、弱気材料ということではありませんが、気に掛けておきたい要因として、米国の株式市場の動向があります。

米国市場は着々と最高値を更新しているわけですが、改めて、長期的な推移を見てみると、米国市場の上昇トレンドは、“リーマン・ショック”の大暴落が反転した09年3月以降、5年近くも続いています。その間の上昇率は約250%。世界中が好景気を謳歌していた03年3月から07年半ばまでの上昇率を大幅に上回ります。

ところが、それほど長期の上昇相場を演じていながら、米国の経済指標は強弱マチマチで、景気に過熱感があるわけではありません。過熱感どころか、「ようやく“リーマン・ショック”の傷跡が癒えて、景気が本格的に上向いてきたか、どうか」という初期段階のようにも映ります。一体これはどういうことなのかと言えば、なりふり構わないジャブジャブの量的緩和政策の賜、ということに尽きます。

このジャブジャブに支えられた米国の上げ相場は「ドーピング相場」などとも揶揄されてきましたが、今年からドーピングの量を減らす方針です。その結果がどういう形で現れるのか。これが株式市場を神経質にさせる要因になるのは確かでしょう。5年もの上げ相場で株価水準は十分な高値圏にあることからすれば、トレンド反転に至らないまでも、いつ何時深めの調整があっても不思議ではありません。これは、日本株にとっても警戒要因です。


ドル換算の日経平均株価の長期トレンドに変化の兆し?

日本市場からすれば、上昇基調が鮮明になってまだ1年少々。しかも株価水準は07年の高値に全く及んでいないのですから、米国が調整している間に、日本株が遅れを取り戻す「これからが本番!」という印象になるかもしれません。が、ドル換算で見てみれば、日経平均株価の上昇基調もまた(途中に長い保合い状態がありましたが)やはり約5年も続いています。

ドル換算の日経平均株価の13年の引値は154.934ドル。06年5月につけた高値154.831ドルをわずかに上回っています。この「155ドル」近辺は、96年の高値と2000年の高値を結んだレジスタンスラインの延長線上の水準でもあり、長期的なドル換算日経平均株価にとって極めて重要な水準と解釈されます。いずれはブレイクするとしても、すんなり、あっさり、とは行かない可能性は考えておいてよさそうです。


手堅い策は「ヘッジ付き強気ポジション」か

もっとも、日本市場のインデックスの上昇トレンドが崩れているわけではありませんから、現段階で積極的に弱気ポジションを画策するまでのことはないと思います。ただ、「全力強気」というのは不安があります。というのも、トレンド反転に至らない「調整」であっても、それが瞬時に、かつ強烈に起きる可能性が否めないからです。

当欄でも時折ふれていますが、高速・高頻度取引は確実に拡大しています。昨年5月の大急落も、その影響が多分にあるでしょう。高速・高頻度取引をしている参加者は、一般の個人の1000倍の速度で発注・約定できる環境にあります。市場が下げ始めてから対応しようとしても、まず追いつきません。

対応策として考えられるのは、強気ポジションを持つならば、225先物やETFで同時にヘッジを付けることです。あるいは、日経平均株価が好調に推移しているのであれば、225先物や225連動型ETFをロングする一方で、日経平均株価の上昇の恩恵に授かり切れない個別銘柄をショートするという方法もあります。つまり、市場全体の見通しとしては強気ではあっても、ポジション全体としてはニュートラルに近い状態にしておくという考え方です。これが「調整を挟みながらも、トレンドは続く」と想定した場合の手堅い策になると思います。

売買する対象の個別銘柄としてはどのような視点があるのか。売買出動の基準として何に着目すればいいのか。具体的なポイントはその時々の相場状況によっても異なります。そうした情報をタイムリーにご提供できるよう、本年も各種コンテンツを随時作成していきたいと考えています。ご期待ください。



《お知らせ》

今年も出ます!『株テクニカル情報2014年新春号』

2014年1月13日発売予定!

同時発売予定

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