あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
昨年も日経平均株価はめでたく年足陽線で引けました。年足陽線はこれで3本連続。12月9日には1万8000円台を(35分間ほどでしたが)回復し、その後、いったん下げに転じたものの、1万6600円処のサポート水準で下げ止まり、再び高値を目指す展開になっています。「日経平均2万円」の強気見通しも、決して少数派ではなくなっているようです。
この強気相場の様子を確認するために、例によって『チャートブック<新春号>』で全上場銘柄の週足チャートをザックリですが見てみました。
まず、東証1部上場銘柄は、(1)非常に強いトレンド銘柄、(2)「取りあえず上昇トレンドは維持」銘柄、(3)「ともすれば上昇トレンドから脱落?」の際どい銘柄、(4)完全に下降トレンド銘柄、の4つに分けると、当然ながら、(1)(2)は(4)を大きく上回っています。とくに強さが目立つのは、セクターで言えば食品です。伝統ある企業でありながらも、超グロース株のような上昇を見せている銘柄もあります。
ただ、その一方で、(3)の銘柄が意外に多い印象があります。日経平均株価が急落した局面で株価水準を切り下げたまま、日経平均株価が高値を更新する動きになっても株価が戻らない。この先、日経平均株価が大きく下げたとすれば、完全に下降トレンド転換してしまうのではないか、とも思える銘柄です。そうした銘柄を保有している人からすると、昨年の相場が「強い」とは感じられなかったかもしれません。
この(3)の際どい状況にある銘柄が再び上昇トレンドに戻るか、はたまた下降トレンド転換してしまうかが、今年の相場の焦点のひとつでしょう。前者になれば、「日経平均2万円」はともかくとして、市場全体がワンフェーズ強い展開になることが期待されます。後者になった場合は、市場実態は悪化していると判断せざるを得ません。
昨年は日経平均株価もTOPIXも高値を更新していますが、それ以上に強い動きをしていたのが東証2部です。14年寄値と14年引値の上昇幅は、日経平均株価が8%に止まっているのに対して、2部指数は22.6%。年足はほぼ高値引けの強い陽線を描いています。
個別のチャートを見ても、2部上場銘柄のほうが1部よりもトレンドが悪化している銘柄、あるいは、トレンドが危うい銘柄は少ない印象があります。
これまで何度か本欄で紹介してきたように、2部指数の値動きは市場全体に先行する傾向があります。その意味では、この2部指数の強さはポジティブな要因と言えます。
ところが、これも市場全体に先行する傾向がある新興市場のほうがよくありません。JASDAQ指数は辛うじて年足陽線で引けましたが、マザーズ指数は年足陰線。いいトレンドを維持している銘柄もそれなりにあるとはいえ、下がったきり動かなくなってしまったかのような銘柄も目立つ、かなりマチマチな様相となっています。新興市場に資金が回ってこないのか、相次いだIPOに資金が奪われてしまったのか。背景は定かではありませんが、市場参加者の新興株に対する興味がひと頃よりも薄れている感が否めません。
マザーズ市場の不振に関しては、信用残高情報のコメントの中でも時折取り上げてきましたが、この市場が崩れることになると、他の市場の新興株や中小型株にも悪影響を及ぼす懸念があります。よって、マザーズ市場が復調するか否かも、今年の相場の重要な注目点です。
トレンドを悪化させる銘柄が増える引き金となるのは、先述したように市場全体の大きな下落です。
13年初から14年末までの2年間で言えば、最初の大きな下落は13年5月22日から始まりました。その前の約1か月半、日銀の異次元緩和の発表を受けて市場全体はウソのような強い上昇を見せていたわけですが、その4月・5月がこの2年間の最高値となっている銘柄は741銘柄あります。その中には、いま振り返れば「あれはまぼろしだったのではないか」とも思えるような高値をつけていた銘柄もあります。
また、14年1月23日からの下落も強烈でした。この14年1月が最高値となっている銘柄は310銘柄です。
14年12月につけた日経平均株価の最高値は、この2回の大きな下落前の株価よりも2000円も高い水準にありますが、11月・12月に13年以降の最高値をつけている銘柄は931銘柄。対象銘柄数3533の4分の1をわずかに上回る程度にとどまっています。
もっとも、11月・12月に最高値をつけていない約4分の3の銘柄全てが上昇トレンドから脱落した、というわけではありません。たとえば、13年5月が最高値になっている銘柄の中にも、それが「まぼろし」ではなく、株価が持ち直し再び高値を目指す動きになっている例もあります。
こうした銘柄が増える状況になれば、仮に大きな下落があったとしても、市場全体が崩れるような事態は回避できると思われます。しかし、トレンドに復帰する銘柄が遅々として増えない中で大きな下落に見舞われることになると、その後、日経平均株価が高値を更新する動きに戻ったとしても、自分自身の持ち株の損益状況は一向に改善しない状況になる恐れがあります。
そうした大きな下落がいつ起こるのかはもちろんわかりませんし、起きないかもしれません。ただ、その事態に備えておく策を取るとすれば、日経平均株価が好調に推移しているとき、高値更新を目指す動きをしている局面で、持ち株を一部ずつでも売却しておく“売り上がり”でしょう。売却した後にさらに株価が上昇することもあると思いますが、「早く売りすぎた」などと後悔することもありません。その売り値が「将来から見ての最安値圏」である可能性はそう高くないと目されるからです。
売却する株価水準としては、昨年11月・12月に最高値をつけている銘柄であれば、長期のレジスタンス水準がひとつの目安となります。たとえば、04年から07年までサポートになっていて、“リーマン・ショック”の株価急落によってブレイクされてレジスタンスと化した株価水準、あるいは、09年以降の戻り高値の水準は大いに参考になると思います。
13年5月や14年1月に高値をつけている銘柄の場合は、週足ベースのレジスタンスラインを引いてみる方法もあります。
今年9月には日本郵政の株式公開が予定されています。政府としても財務省OBのK田日銀総裁としても、何としてでもこれを成功させたいと考えているであろうことは想像するに難くありません。もし、その前に市場が軟調な動きになった場合には、“バズーカ第3弾”の金融政策が打ち出される可能性もなきにしも非ず、ではないでしょうか。それが出たとすれば、もう一度「まぼろし」が現れるかもしれません。そこは絶好の売り上がり局面と捉えてよいと思います。
日経平均株価が2万円を目指す展開になるとしても、1万8000円超えからそこに至るまでの間には調整局面が1度か2度は訪れると予想されます。そのときの状況を冷静に判断するためにも、また、先行きにポジティブな動きが見えたときにそのチャンスに乗るためにも、持ち株の損益状態は良好に保っておきたいところです。市場全体の大きな下落の影響をいかに軽微におさえるかが、そのための大きなポイントになります。
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