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【ローソク足】「ヒゲの習性」をトレードに活かす

上下のヒゲの差から値動きの傾向を捉えてみる

4月半ばから『サポートの研究』というコーナーを設けて、場中に大きく下げた株価が短時間のうちに押し目を形成し、大引けまでに大きく株価が戻している、という動きが観測された銘柄を紹介しています。そうした銘柄のローソク足は非常に長い下ヒゲを描いているわけですが、その例を見て、「引けた後に『長い下ヒゲ』を知ったところで何の意味があるのか」と思った方もいるかもしれません。実は、その長い下ヒゲを描く動きが、その後の売買を考えるうえで大いに役立つ面があるのです。その詳細については、もう少し銘柄例が蓄積されてから紹介することとして、今回は、日足チャートのヒゲに着目したトレードを考えてみます。

まず、図1の日足チャートをパッと見て、何か感じることはないでしょうか。

下ヒゲが目立ちます。実際、年初来からのデータで、日々の上ヒゲと下ヒゲの差(高値+安値−寄値−引値)を引値で割った値を累積するとマイナス75%。この値がマイナスになるということは、上ヒゲよりも下ヒゲのほうが長い傾向があることを意味します。

また、このチャートは陽線も目立ちます。ということは、この銘柄は場中に買われやすい可能性があると考えられます。ならば、寄付後、寄値よりも安いところに買い指値を入れ、約定したら大引けで売る、という売買をしたら利益があがるのではないでしょうか。

図2は、寄値よりも1.5%安いところに買い指値を入れて、約定した場合には引値で手仕舞うという想定売買のシミュレーション結果です。2014年中はダメでしたが、確かに今年に入ってからパフォーマンスが伸びています。トレンドのお陰も大きいと思いますが、この右肩上がり具合は注目してよいのではないでしょうか。ちなみに、この想定売買の「寄値よりも1.5%安いところ」という買い出動基準は、過去データをもとに割り出した最良値です。

下ヒゲが目立つけれども、長い上ヒゲも時折り観測される銘柄もあります。

こうした銘柄の場合、寄値よりも安いところに買い指値、寄値よりも高いところに売り指値という、両方向で待ち伏せる策が考えられます。

寄値より2.5%安の水準に買い指値、寄値より10%高の水準に売り指値を入れ、約定したら大引けでポジションを手仕舞うという想定売買の結果です。2011年4月からのシミュレーションですが、なかなかの成果ではないでしょうか。

この想定売買では、売り指値の約定は2013年以降ありません。そうすると、上ヒゲよりも下ヒゲを描く傾向が強くなっているということでしょうか。だとすれば、寄値近辺で売り、下がったところで買い戻す策も考えられるところです。

図5は、寄値の1ティック上に売り指し、寄値より2.5%安で買い戻しの指値を入れ、買い戻しが約定しない場合には引けで手仕舞うという想定売買のシミュレーション結果です。買い戻しの約定率が低く、こんな右肩下がりを描く結果になってしまいました。買い戻しの指値をもう少し高いところに入れたらどうかと考えて試してみたところ、約定の回数は増えるものの、利幅が少なく、かえってよくない結果が出ています。


上ヒゲを描きやすい銘柄は単に「売ればいい」とも限らない

先に紹介した「上下のヒゲの差の累積」がプラスになる銘柄は、下ヒゲよりも上ヒゲが長い傾向が強いことを意味します。

この銘柄は、年初来のヒゲの差の累積は218%。日足チャートを見れば、確かに上ヒゲばかりが目立ちます。これだけ上ヒゲを描く傾向がはっきり現れているならば、寄値近辺で買って、高いところに売り指値を入れておけば簡単に儲かりそうではないでしょうか。

そううまくはいかないようです。図7は、寄値よりも1ティック下に買い指値、寄値よりも8%高いところに売り指値、約定したら引けでポジションをたたむという想定売買のシミュレーション結果です。今年に入ってからはパフォーマンスが上向いていますが、長期的にはよくありません。

ところが、買い出動の基準を変えてみると、全く違った結果になります。

売り指値は図7と同様の寄値よりも8%高い水準、買い指値は寄値よりも4.5%安い水準としてみると、パフォーマンスは一転して右肩上がりを描きます。やっぱり「株は下がったところを買うべし」ということなのでしょうか。上ヒゲのほうが長く、「上がれば売られる」傾向が強い銘柄であっても、より安く買う工夫は怠りなくやっておく必要がありそうです。

※この銘柄は貸借銘柄ではありませんが、シミュレーション上では売り指値が先に約定するケースも含めて累積パフォーマンスを計算しています。


長期的に「ヒゲの習性」が続いている銘柄もある

上下のヒゲの長さにどんな傾向があるのかは、その時々の相場状況や株価水準によっても違ってきますが、中には、長期的に一貫した傾向が確認される銘柄もあります。

2011年4月以降のヒゲの差の累積グラフです。延々と右肩下がり、つまり、この銘柄は、恒常的に下ヒゲのほうが長い傾向があると解釈されます。

図10は、寄値よりも2.5%安い水準に買い指値、約定したら引けで手仕舞うという想定売買のシミュレーション結果です。累積パフォーマンスは2012年終盤以降、極めて良好な推移となっています。

ところで、この銘柄の日足チャートを見ると、明らかな値動きの傾向が見て取れます。

下ヒゲもさることながら、図1のジェネレーションパスと同じように陽線がかなり目立ちます。週足チャートを見てもわかりますが、この傾向は長く続いています。要するに、場中に値上がりする傾向が強いということです。この銘柄の「(引値−寄値)/寄値」の累積は、図12のようなグラフになります。

このグラフの推移は、そのまま「寄りで買って、引けで売る」という売買の累積損益です。そんな単純な売買で延々と右肩上がりのパフォーマンスを描くとは。それなら明日からでも実践しなければ、と思いたくなるところですが、ただし、この銘柄は日々の約定が少なく、板もスカスカ、入っている注文もとびとびです。寄り成りや引け成りで注文を入れたら、どんな値段になるかはわかりません。

というわけで、残念ながら、図12の右肩上がりは、文字通りの机上の数字、と言わざるを得ないのですが、とはいえ、これだけはっきりした傾向がある点は踏まえておいて損はありません。「寄りで買い、引けで売る」という機械的な売買を日々実践するのは難しいとしても、寄値よりも数%安い水準に買い指値を入れておいて、約定したら寄値よりも高い水準に手仕舞いの売り指値を入れる策は十分考えられます。

この銘柄に限らず、ローソク足チャートで下ヒゲと陽線が目立つ銘柄は、データでその傾向の強さを確認したうえで「安い買い指値」策を検討してみてもよいのではないでしょうか。中期的なトレンドが上向きならば、そのトレンドの力が味方になってくれることも期待されます。




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