あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
日経平均株価は昨年も年足陽線で引けました。年足陽線は4年連続。03年から06年の間も4年連続陽線でしたが、昨年は前回の上昇相場の高値をブレイクするという、過去25年間、一度も目にしたことのない年足陽線です。
実におめでたい。お屠蘇の味も格別、となってもよさそう年足チャートなのですが、実感として、どうでしょうか。「持ち株も値を伸ばして資産も順調に拡大した。実にいい1年だったな」と満面笑みで言える年だったかというと、持ち株の中身によって人それぞれではないでしょうか。というのも、大納会まで収録の『ゴールデンチャート週足集』で全銘柄のチャートを見てみると、銘柄によってかなりマチマチ。非常によい年だった銘柄もある一方で、まるで面白くない1年に終わった銘柄も思いのほか多い印象があるからです(ちなみに、昨年までは『チャートブック週足集』を見ていましたが、残念なことに『チャートブック』は廃刊となってしまいました)。
実際のところはどうなのか。全銘柄の15年の年足を調べてみました。
ETFと東証外国部を除く全3642銘柄では、年足陽線が2038銘柄、年足陰線が1575銘柄と、割合はおよそ4対3。225採用銘柄に限ってみれば、年足陽線銘柄数が陰線銘柄数の約2倍、東証1部全体では陽線銘柄数が陰線銘柄数の1.6倍程度となっています。ところが、東証2部は、インデックスは4年連続陽線でありながらも個別では陽線・陰線銘柄数が拮抗。新興市場は、JASDAQは若干陽線銘柄数のほうが上回っているものの、マザーズは逆に陽線銘柄数が陰線銘柄数の半分程度しかありません。それもそのはず、マザーズ指数の15年の年足は陰線。マザーズ指数の年足陰線は2年連続です。
また、年足は陽線ではあっても、上値を伸ばせずに横ばいに近い動きになっている銘柄、あるいは、ほとんど動かなくなってしまっている銘柄も目につきます。そうした銘柄を保有している人にとって、15年はおめでたいどころか、イライラ感を募らせる1年だったかもしれません。
“銘柄によってマチマチ”となる結果をもたらした一因は、やはり夏の終わりに起きた、あの世界的な市場急落でしょう。その急落を早々に克服し、それ以前までの上昇軌道に復帰した銘柄ももちろんあります。ただ、値を戻しきれずにいる銘柄、さらには、あの急落を機にトレンドを崩してしまった銘柄も少なくありません。値を戻そうとしていた矢先に悪材料が出た銘柄などは、悲惨とも言えるような状況になっていたりします。
ご記憶の方も多いと思いますが、昨年8月、9月の急落はとにかく強烈な“売り一辺倒”でした。東証1部の騰落銘柄数は、日経平均株価が前日比で597円下落した8月21日は、値下がり1854銘柄に対して、値上がりは33銘柄。翌24日(日経平均株価は前日比895円安)はさらにひどく、値下がり1880銘柄、値上がりはわずか8銘柄。 これは“リーマン・ショック”の最悪時(08年10月8日=値上がり44銘柄、値下がり1649銘柄)をも上回る、文字通りの売り一辺倒です。
日経平均株価が前日比で1143円下落し、先物が一時ストップ安となった13年5月23日も“リーマン・ショック”を上回る売り一辺倒でしたが、このときは値上がり17銘柄、値下がり1691銘柄。14年2月4日は、日経平均株価の前日比下げ幅は610円だったものの、値上がり13銘柄、値下がり1764銘柄でした。この数字を見ると、市場急落局面での“売り一辺倒”度合いが年を追うごとに高まっている可能性を考えざるを得ません。
市場全体が大きく下落する局面は、その後トレンドが継続する銘柄にとっては絶好の押し目買いのチャンスになります。しかし、図4の例でも見たように、その下落局面を機にトレンドを崩してしまう銘柄も出てきます。果たしてどの銘柄は「その後トレンドが継続する」のか。どの銘柄は「その後トレンドを崩す」のか。急落前まで極めて良好な、きれいな上昇トレンドを続けてきた銘柄ならば、トレンド継続の必要条件は満たしているとは言えますが、それは十分条件ではありません。
この銘柄は、アベノミクスのスタート当初から良好なトレンドを続け、14年の年足は極めて強い陽線でした。ところが、15年の年足は、14年の年足陽線の8割以上をチャラにする大陰線。14年まで好調だった銘柄の中には、この銘柄と同じように、14年の年足陽線を15年の陰線が打ち消す格好になっている銘柄も散見されるのが実情です。
市場の上昇トレンドが続いていれば、それとともに高値警戒感も拡大していきます。そこで何らかのショックによって市場全体が急落する事態になれば、売り急ごうとする圧力の増加は避けられません。ましてや、昨年の急落の記憶が鮮明に残っているともなれば、より一層“売り一辺倒”になることを想定しておいてしかるべきでしょう。その急落が、どの銘柄にとって絶好の押し目買いのチャンスになるのか、どの銘柄がそれを機にトレンドを崩すのか。上昇トレンドも5年目ともなれば、これまで以上に銘柄選別の目のつけ処が難しくなるのは確かです。
16年相場に関しては、「“騒ぐ”申年」ということもあってか、波乱を予測する向きが多く、「徹底した銘柄選別が重要だ」といったアドバイスも聞かれます。しかし、銘柄選別が容易ではなくなっている局面で、敢えて「上がる銘柄」探しに血眼になることもないのではないでしょうか。
売買するのであれば、市場全体の動きそのもの、たとえば先物やミニ先物、225連動ETFを対象にするほうが、格段にわかりやすいはずです。市場全体が一方向に大きく動く、高ボラティリティー相場では、インデックスであっても個別銘柄と遜色のない利益、2倍型のETFなら個別銘柄を凌ぐ利益も期待できます。
当サイトの情報や『日経平均株価の見方・使い方・儲け方』の中でも紹介していますが、一方向の強い下落の局面では、ダブルベア型は原資産の株価指数の下げ幅の2倍以上の利益を出す可能性があります。一方向の強い動きがひとまず止まり、上げ下げを繰り返す展開になった場合は、方向性として弱気予測ならばレバ型のショート(方向性として強気予測ならダブルベア型のショート)が有効です。
他方、昨年からしばしば当サイトで取り上げているように、高ボラティリティー相場では日経平均オプションが非常に大きな妙味を提供します。日経平均株価が高値圏にあって勢いが衰えているときには、価格が数円に下がっているプット・オプション「買い」は極めて注目に値する策です。そこから市場急落となった場合には、超絶ハイリターンも夢ではありません。さらに、上昇したボラティリティーが収束していく局面では、コールにしてもプットにしてもオプションの「売り」で利益を狙うことができます。
本年は、個別銘柄よりもインデックス。大きな波乱、高ボラティリティー相場を予測するならば、むしろそれを歓迎するストラテジーで臨むことをお勧めします。2倍型のETF、そして日経平均オプションは、高ボラティリティー局面でも、その後に予想されるボラティリティー剥落局面でも、いずれにも対応できる売買対象です。
ところで、株式とは別なところにも、本年、収益機会として注目したい市場があります。米国債です。
図6は米国の長期金利(10年債利回り)のチャートです。延々と超長期のベアトレンドが継続していて、90年から2013年末の大きな流れは、日経平均株価とかなり似ています。
14年以降は、日経平均株価は高値を更新しているのに対して、米国債金利は低下していることから乖離が生じていますが、米国FRBでは本年4回の利上げ実施の意向を表明しています。となると、この乖離は、米国債の金利が上昇するという形で解消に向かう可能性があると考えられます。
金利の上昇は、債券価格の下落を意味します。つまり、格付けの高い米国債が「高利回り」とまではいかないとしても、“好利回り”となら言ってよいくらいの安い価格水準で買えるチャンスが到来するかもしれない、ということです。
米国債投資というと、おそらく為替リスクを気にする人もいると思いますが、残存期間が20年超の超長期債であれば、為替リスクはさほど気にする必要はありません。というのは、期間が長ければ金利水準も高くなるので、それが為替変動のショック・アブソーバになる、というだけではありません。米国債金利および価格とドル円の値動きの平常パターンは「金利上昇・債券価格下落=円安ドル高」「金利下落・債券価格上昇=円高ドル安」で、超長期債の場合、債券価格の動きのほうがドル円の動きよりも大きいのが通常だからです。たとえば、円高ドル安になったとしても、債券価格の上昇のほうが大きければ、円換算の評価額はプラスになります。債券価格の上昇が、円高ドル安の目減り分を吸収する格好です。
さらに注目したいのは、現状、日本株市場にとって最大のリスクとも言える円高ドル安時に、超長期の米国債は円換算評価ベースで利益を出すことも期待できるという点です。
図7は、日経平均株価と米国30年ゼロクーポン債(試算値)の円換算評価額の推移です。逆行傾向があることがわかると思います。とくに、世界的な株安で株式市場が急落した局面、株式市場の高ボラティリティー局面で、円換算評価額が急上昇している点は見逃せません。要するに、超長期の米国債は、何らかのショックで日本株が急落した際のヘッジ役にもなるわけです。
残存期間が20年以上もある超長期債だといっても、償還まで持つ必要はありません。というよりも、償還まで持つのではなく、値動きの大きい超長期債は債券価格が上昇したところで売却する、というのが投資の基本スタンスです。タイミングを捉えて買えば、保有期間が1年以下でも、円換算で二桁台のリターンになることもあります。
では、具体的にどういうタイミングで超長期の米国債を買えばいいのか。当然ながら、「金利の天井=債券価格の大底」で買いたいところですが、株と同様、相場モノですからそれは不可能と考えて間違いありません。そこで次善の策となるのが、金利が上昇し債券価格が下落したら買う、という資金分散の“買い下がり”です。超長期のゼロクーポン債であれば、最低投資金額は少額で済みます。たとえば、期間30年で、利回りが4%の場合、償還額面100に対して債券価格は30程度(年1回複利換算)。額面1000米ドル単位としている証券会社であれば、1ドル=120円とすると、円ベースでの最低投資金額は3万6000円程度です。この水準の投資額であれば、4,5回に分散して買うことも十分に可能でしょう。
買い始める目安としては、米国の10年債金利が3%台に上昇した辺りを考えてみてください。そこからさらに金利が上昇し、債券価格が下がるなら第2弾、第3弾を買う、といった具合です。なお、米国債の品揃えはネット証券よりも大手証券のネット取引のほうが豊富です。とくに、ダイワダイレクトの品揃えは非常に充実しています。
収益の機会は至るところにあります。どんな相場状況にときに、どの市場に目を向ければよいのか。どの売買対象が収益をあげるうえでメリットがあるのか。この点を常に意識しておくことが、多様な相場状況を収益に換える最大の秘訣でしょう。そのためにお役立ていただける情報を、当サイトで随時提供していく所存です。