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【ドル円】為替にふらされる相場の中の狙い処

「追加緩和見送り」の失望売りも結局は円高ドル安が背景

3月の権利落ち後、1万7000円を超えていた日経平均株価があれよあれよという間に1万5500円割れ。これはマズイ、と思っていたところが、4月12日から急反発。連日のギャップ・アップで一挙に1万7000円手前まで戻し、4月18日に強烈に売られたギャップ・ダウンのベタベタの陰線も、翌日、ギャップ・アップで切り返しています。このムラムラとした強い動き、これなら2月2日・3日に形成したギャップのレジスタンスも突破するのでは、と期待させられた折りも折、日銀政策決定会合の「追加緩和見送り」。その失望売りは4月13日からの上昇分を全部チャラにしてくれました。4月12日からの強い上昇は、唯々ひとえに追加緩和期待だったようです。

3月の権利落ち以降の日経平均の「下がって、上がって、また下がる」の動きは、株式そのものに対する期待・失望もさることながら、結局のところ、為替にふらされたと見ることもできます。

ドル円と日経平均の密接な関係については、これまでも折りに触れて紹介してきましたが、いま一度振り返ってみましょう。

できるだけ時間的なズレの少ない動きを見るために、ドル円については米国時間の引値、日経平均先物はその約4時間後の大証立合時間の寄値(日付は米国の翌日)にしています。このグラフを見る限り、全く同じとはもちろん言えませんが、かなりそっくり、と表現しても全く差し支えない形でしょう。

この両者の値動き関係を散布図にすると、こんな感じになります。

x軸がドル円、y軸が日経平均先物です。図中にある「y=237.8x-9731.6」の式は回帰直線式で、「ドル円が1円動くと日経平均が237.8円動いた」という関係を示しています。y切片は「-9731.6」ですが、この数値から計算すると、ドル円が40.92円になるとyの日経平均はゼロになり、「日本株は終わりました」ということになります(実際にどうなるかはわかりません)。

また、R2乗値(決定係数)が「0.9749」となっています。これを相関係数に換算すると0.987。つまり、ドル円と日経平均先物の寄値は99%近い正相関関係にある、ということです。図-03で見た「かなりそっくり」は、データにも鮮明に表れているわけです。


ドル円と日経平均の「割高」「割安」が収益機会になる

図-04の散布図を見ると、ドット(点)の集まり具合が「密」になっているところと、「疎」になっているところがあることがわかります。「密」になっているところを黄色の円で示しています。図-03の黄色の円はそれに対応する部分ですが、いずれも上げ下げを繰り返す「揉み合い」を形成しています。

一方、「疎」になっているところは、株価およびレートが大きく動いて、あれよあれよいう間に居所がシフトした局面です。図-04のオレンジの点線は、5月2日の大証大引け時点(日経平均先物ー=16140円、ドル円=106.50円)のところで、右上の黄色の円の「密」エリアから「疎」を経て、真ん中の黄色の円の「密」エリアにシフトしつつあるようにも見えます。

この散布図の今年に入ってからの部分を拡大してみると、確かにその兆候がうかがえなくもありません。

もっとも、「疎」にある局面は値動きが荒く速いので、現時点では「こうなるだろう」と予測することは難しい面があります。ただ、図-05を見ると、年初から回帰直線の下に位置していたドットが、4月12日以降は直線の上に位置するようになったことははっきりわかります。これは要するに、年初からドル円に比べて安めに推移してきた日経平均が、4月12日を境に、ドル円に比べるとやや高めの状態になっていることを意味します。実際、ドル円は今年の最安値水準にありますが、日経平均は2月12日のSQ日の1万5000円割れが最安値です。外為市場への介入が牽制されているのに加えて、震災や7月の選挙などで政策期待があることによって株のほうが割高になっているのかもしれません。

この先、日経平均-ドル円のドットの落ち着き処がどこになるとしても、どちらかが極端に高い状態になった場合には、割安を買い、割高を売ってヘッジする手は検討に値すると思います。

図-03の拡大チャートを用意しました(≫ Click!。その時々のドル円レートと日経平均を当てはめて、どちらが高く、どちらが安いのか。極端な動きになっていないか、是非チェックしてみてください。


「先物の寄り付き方」に個別銘柄の利益のヒントがある

ところで、ドル円に動きにふらされて日経平均が大きく動けば、その日経平均につれて個別銘柄も大きく動くわけですが、その個別銘柄の動きには何か収益のチャンスはないのでしょうか。

ありがちな考え方としては、たとえば食品セクターのように円高がメリットになる銘柄を買えばよい、といったものがありますが、これは効果がありません。

<図表-06>業種別インデックスと日経平均先物の関係
東証33業種 インデックス寄値と
先物寄値の相関
(%)
化学 92
電気機器 92
機械 91
建設業 90
ガラス・土石製品 90
非鉄金属 89
輸送用機器 89
サービス業 89
小売業 89
銀行業 88
卸売業 88
倉庫・運輸関連業 88
繊維製品 87
金属製品 87
精密機器 87
その他金融業 87
鉄鋼 86
保険業 85
不動産業 85
証券・商品先物取引 85
その他製品 85
情報・通信業 84
陸運業 84
医薬品 83
海運業 81
食料品 81
ゴム製品 80
パルプ・紙 79
水産・農林業 77
石油・石炭製品 75
電気・ガス業 74
鉱業 64
空運業 61

先ほど見たように、日経平均先物の寄値はドル円と約99%という極めて高い相関性があります。そこで、日経平均先物の寄値と業種別インデックスの寄値の相関性を調べてみたのが図-06の表です。程度の差はありますが、日経平均先物の寄付と逆相関のセクターはありません。結局のところ、円高ドル安になって日経平均が売られれば、輸出だろうが輸入だろうが、セクターが何であれ「日本株」というものが売られることになります。実際に、円高ドル安が急進して、ナイトセッションで先物がガンガン売られ、シカゴの日経平均先物の引値はさらに安い、といった状況になると、個別銘柄はどれもこれも売り先行でなかなか寄り付かない、というのは見慣れた光景でしょう。そうした中でセクターを分散させて個別銘柄を買ったところで、“日本株の買い散らかし”にしかなりません。

注目したいのは、セクターや円高メリット云々ではなく、先物が超安で寄り付いて野別幕無し的に個別銘柄が売り先行で安寄りした後、それから大引けにかけてどういう動きになりやすいのか。個別銘柄の場中の値動きの習性です。

<図表-07>場中の値動きが先物の寄り付き方と逆傾向の銘柄
コード 銘柄名
3778 さくらインターネット
5982 マルゼン
1433 ベステラ
1848 富士ピー・エス
9733 ナガセ
3690 ロックオン
4579 ラクオリア創薬
3653 モルフォ
2462 ジェイコムホールディングス
6896 北川工業
8274 東武ストア
6190 フェニックスバイオ
3769 GMOペイメントゲートウェイ
2874 ヨコレイ
2362 夢真ホールディングス
9624 長大
4781 日本ハウズイング
2121 ミクシィ
8771 イー・ギャランティ
4963 星光PMC
6930 日本アンテナ
8704 トレイダーズホールディングス
3738 ティーガイア
8423 アクリーティブ
2667 イメージ ワン
3688 VOYAGE GROUP
2369 メディビックグループ
8135 ゼット
6172 メタップス
9422 コネクシオ
8005 スクロール
8306 三菱UFJフィナンシャル・G
3955 イムラ封筒
6929 日本セラミック
3877 中越パルプ工業
4316 ビーマップ
3896 阿波製紙
8462 フューチャーベンチャーキャピタル
2681 ゲオホールディングス
9017 新潟交通
8304 あおぞら銀行
9684 スクウェア・エニックス HDs
4678 秀英予備校
6058 ベクトル

図-07は、今年1月からの株価データで、「先物の9時の寄付が前日引値より安い日は『寄値<引値』」「先物の9時の寄付が前日引値より高い日は『寄値>引値』」になる傾向が強い銘柄ランキングです。この傾向が強い銘柄ならば、「先物が前日引値より安寄り=寄値で買い」「先物が前日引値より高寄り=寄値で売り」で場中の値動きを狙うことができます。

図-08はその売買検証の一例です。直近はパフォーマンスが落ちていますが、今年1月から4月半ばまでの累積益は225%となっています。

また、図-07のリストの太字は11年4月からのデータでも同じ傾向が確認される銘柄です。

この銘柄の場合、12年途中から「先物が安く寄り付くと場中買われる」「先物が高く寄り付くと場中売られる」値動きの傾向がずっと続いています。

注目している銘柄があるならば、日経平均先物の寄り付き方に着目してその銘柄の場中の値動きを調べてみてください。「先物が安寄り=場中値上がり(日足陽線)」「先物が高寄り=場中値下がり(日足陰線)」の傾向が確認される銘柄は、円高ドル安が急進して日経平均先物が大幅安寄りする局面が大チャンスと化します。


場中に突如出てくる“見境ない売り物”はおいしい収益源

中には、先物の寄り付き方にはさほど大きく反応しないものの、場中に突如思い立ったような売り物が出てきて急落、しかし、その後は何事もなかったかのように値を戻す、という動きをしやすい銘柄もあります。その値動きは、長い下ヒゲとして日足ローソクに描かれます。

そこで、今年に入って下ヒゲが目立つ銘柄をリストアップしてみました(下ヒゲが目立つ順。太字は11年4月以降のデータでも下ヒゲが出る傾向が確認される銘柄)。

<図表-10>下ヒゲが目立つ銘柄
コード 銘柄名
3739 コムシード
2652 まんだらけ
3165 フーマイスターエレクトロニクス
6238 フリュー
6023 ダイハツディーゼル
5903 SHINPO
8135 ゼット
3583 オーベクス
1853 森組
3347 トラスト
4345 シーティーエス
9857 英和
2743 ハイブリッド・サービス
1413 桧家ホールディングス
6067 メディアフラッグ
3221 ヨシックス
1869 名工建設
6076 アメイズ
3670 協立情報通信
4240 クラスターテクノロジー
7463 アドヴァン
9767 日建工学
3137 ファンデリー
6982 リード
9232 パスコ
1717 明豊ファシリティワークス
2144 やまねメディカル
6719 富士通コンポーネント
6962 大真空
5355 日本ルツボ

図-11は2位のまんだらけ(2652)の日足チャートですが、下ヒゲだらけです。この下ヒゲが、為替にふらされて市場が大きく下げたときに出たものなのかどうかは定かではありませんが、先物が弱い動きの日に下ヒゲ(もしくは大陰線)を描く傾向は見てとれます。

図-10のリスト以外でも、取引が活発でない銘柄や流動性にやや難のある銘柄で、先物の下げが止まらないとその銘柄の通常の取引高もわきまえずに見境ない売り物が出てくる例は日々観測されます。その売り物によって買い気配と売り気配が大きく乖離し、次の約定が高いままになっている買い気配が取られる形で株価は急戻し、となることもしばしばです。この動きで形成される下ヒゲの安値で買い、その日の場中の利確を狙うのも、為替と先物で右往左往する市場の中にチャンスを見出す策になります。

図-10のリスト以外の銘柄では、当サイトに日々掲載している「本日の珍妙チャートリスト」が参考になると思います。年初からのチャートでは下ヒゲを描きやすいようには見えなくても、直近その傾向が顕著でリストにしょっちゅう顔を出している銘柄もあります。

ふざけすぎていると思うくらいに安い株価に買い指値を入れておいて、約定したら速攻利確を目指し、最長でも引値近辺で手仕舞う、というのが基本ストラテジーです。約定の確率は低く、ダメもと的な注文になりますが、奏功すれば、その日のうちに、どころか、数十分、場合によっては数分も経たない間に結構な値幅が取れたりします。見境のない売り物は格好の収益源です。



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「先物の寄り付き方」にどう反応する銘柄なのか。
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