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【新年のご挨拶】 「高値圏からの大きい下落」にどう対峙するか

【目次】

年足6本目の陽線は「堅調な1年」

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

1978年から89年までの年足12連続陽線に挑む最初の年となった2017年。日経平均株価の大発会寄値は1万9298円、大納会引値は2万2764円と、見事6本目の年足陽線を達成しました。実におめでたい限り。

この2017年の陽線を見ると、14年から16年の陽線に比べて実体が大きく、「しっかりした上昇」という印象を受けます。実際、12年からの過去6年の相場を振り返ってみると、17年はこれまでにない堅調な動きだったと言ってよいと思います。


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日経平均株価にも増して「よい相場」だった新興市場

2017年の相場の堅調ぶりは、新興市場の指数によりはっきりと現れています。

日経平均株価は年初から上値の伸びが止まっていましたが、JASDAQ指数はその後も右肩上がりを続けています。3月後半から4月半ばまで調整局面はあったものの、それ以後は実に美しい上昇トレンドです。

指数算出の歴史が長い日経JASDAQ指数(旧・日経店頭平均)の長期チャートを見ると、この上昇トレンドがいかにすごいものかがわかります。

日経平均株価は89年の高値39815円までまだまだ値幅があるのに対して、JASDAQ市場は早くもあのバブル期の高値水準。月足の引値ベースでは90年6月の高値超え。90年7月につけたザラ場ベースの高値4149.20円をも超えようか、という状況になっているのです。この「日経JASDAQ平均が史上最高値を更新するか否か」は今年最大の焦点だと思っています。

一方、16年4月から5月にかけての高値から11月まで過酷な下降トレンドにあった東証マザーズ指数は、17年も何度か「ベア再転換か」という土壇場的な状況に瀕しながらも辛うじて底割れ回避。年終盤には“まさか”の高値更新を果たしています。

長期的には「06年1月の高値はまだまだ先」という位置ですが、13年以降の年間トレンドの中で言えば、17年は最も足腰のしっかりした動きだった、と言ってよいのではないでしょうか。

マザーズ指数がこのトレンドを続けて、1500ポイント処のレジスタンスをブレイクすることができるのか。これも今年の大きな注目点です。マザーズ指数のトレンドが順調に伸展し、また、日経JASDAQ平均は着実に最高値を更新していくとすれば、これは喜ばしい。仮に、日経平均株価の上値の伸びが今ひとつでも、収益機会に事欠かない、心地よい相場となること間違いなし、です。


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「高値圏からの大下げ局面でどう行動するか」の判断基準

このように各インデックスを見れば、「2017年はよい1年だった」わけですが、年を通じて波乱なくラクラク儲かったか、というと、そんなことはなかった、という人も少なくないと思います。確かに、最終的には思いのほか利益があがったにしても、その途中には厳しい状況を余儀なくされる局面も何度かあったのは事実です。

まず、図3のJSADAQ指数や図5のマザーズ指数の週足チャートにも現れていた通り、3月半ばから4月にかけての4週にわたる下落局面。このときは日経平均株価の1万8000円割れも視野という状況。また、8月10日から9月8日にかけての下落局面では「1万9000円割れは不可避か」という際どさでした。

さらに、10月に不気味なほどに上値を伸ばしまくっていた日経平均株価が11月9日、場中に2万3382円という高値をつけたところで急落。長い上ヒゲ陰線を描いた翌日からの動きは非常にネガティブで、11月15日には20日(および25日)移動平均割れ。そこからのリバウンドも限定的で、12月6日も移動平均線を大きくガッツリと割り込んでいます。

いずれの下落局面も、チャートの教科書的には“売りシグナル”。おそらく、テクニカルアナリストの見方も総じて「ベア」に傾いていたのではないでしょうか。

ところが、そうしたチャートの“売りシグナル”、テクニカル的なベア判定の局面こそが2017年のトレンドの中では「絶好の押し目買い」の機会となっています。実際、この大下げ局面の最終段階で買ったポジションは、その後大きな収益に結びついているはずです。なぜそうなったのかと言えば、主要トレンドがベア転換しなかった、上昇トレンドが継続したからにほかなりません。

「トレンドが継続したから大下げ局面が絶好の買い場だった」などというのは、あまりにも当たり前すぎる、結果論の話でしかないと思う人が大半でしょう。しかし、これが「継続するトレンドの中でより有利にポジションを取る」うえでの最大かつ最重要のポイントと言って間違いありません。

つまり、主要トレンドのベア転換はあるのか、ないのか。自分自身はどちらを前提とするかです。もし、主要トレンドのベア転はない、上昇トレンドは継続すると見込むのであれば、移動平均線を割り込む強烈な下落、ギリギリのサポート水準まで落ちる局面、チャートの教科書でバリバリの“売りシグナル”とされる動きは、願ってもない買い出動機会になります。

あるいは、トレンドが継続する条件をクリアするサポート水準で下げ止まってリバウンドを見せた後、いわゆる「もう一度安値を試す動き」が出たところで買い出動する策も考えられるところです。見込み通りにトレンドが継続すれば、いずれの買い出動も絶大な妙味になることは言うまでもありません。要は、ベア転しなければ(=上昇トレンドが継続すれば)「大下げ局面で買ったモン勝ち」です。

もちろん、見込みに反して主要トレンドがベア転換した、「安値を試す動き」だと思ったところが底割れした、といった場合には「惨敗」。敗戦処理策を考えなければなりません。

果たして、どちらになるのか。これは結果論でしか語れません。チャートのシグナルがどうであれ、事前に「絶対にこうなる」と事前に言える人は、当然ながら誰もいないわけです。


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ベア転換はあるのか、ないのか。その可能性をうかがう手掛かり

事前にできること、というよりも、事前にやっておくべきことは、主要トレンドのベア転換の芽が出ていないかの確認。これに尽きます。

たとえば、過去の相場の非常に大きいベア転換局面では、金融当局の政策転換がありました。株式市場を犠牲にしても変えなければならない重大な問題がある、金融秩序を再構築しなければならないといった判断を当局が下した、という状況です。日本の80年代バブル崩壊における総量規制しかり。おそらく、米国の“リーマンショック”もしかりでしょう。

現状はどうかと言えば、日銀はデフレ脱却に向けての姿勢を維持しています。米国では金利引き上げのスタンスを今年も続ける見通しですが、目指しているのは“正常化”で、金融引き締めで景気にブレーキをかけようとするものではないでしょう。こうした政策当局のスタンスを見る限りにおいては、マクロ的には主要トレンドのベア転換の可能性は低そうだ、と考えられます。

とはいえ、たとえば15年8月からの“第1次アベノミクス相場の終焉”のように、政策当局の明らかなスタンス変更がないにも関わらず、市場の主要トレンドがベア転換することはあります。

その兆候をどうすれば捉えられるのか。その手掛かりのひとつは、上昇トレンドにある銘柄が上回っているのか、下降トレンドとなっている銘柄が増加していないか、という個別銘柄のトレンド、言うなればミクロの動きです。

たとえば、当サイトでは過去1年来の高値更新銘柄・安値更新銘柄のリストを掲載しています(場中5分おきに更新)。また、図9のようなグラフも毎週末更新しています。

12年以降の様子を見ると、結果としてトレンドが継続している途中の大下げ局面では、高値更新銘柄数は大幅に減少していますが、安値更新銘柄が高値更新銘柄数を圧倒するほど急増はしていません。また、日経平均株価が反発すれば、それとともにまた高値更新銘柄数が増える傾向が表れています。

ところが、15年8月からの急落局面では、安値更新銘柄数が爆増。10月以降のリバウンド局面でも高値更新銘柄数は大して回復していません。ちなみに、2017年の大きな下げ局面では、安値更新銘柄数が増えたとはいっても高値更新銘柄数のほうが大幅に上回っている状態が続いています。

これが「大下げ局面がベア転換なのか」をうかがう大きな手掛かりです。もし、ベア転換はしない、と見込んだところが、安値更新銘柄数が爆増して高値更新銘柄数を大幅に上回る状況になった場合には、とにかく最初のリバウンド局面で買いポジションをできうる限り有利な値段で手仕舞うに限ります。

過去の相場を見ると、ベア転換の最初の大下落の後というのは、それ相応のリバウンドが生じています。その局面を逃さずに手仕舞うことができれば、それが損切りになったとしても痛手はかなり抑えられるはずです。


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年内受け渡し最終日前後に出現した需給好転の兆し

それにしても、一体なぜ、15年8月の急落時に過去1年来の安値更新銘柄が爆増したのか。それは、その前の段階において、過去1年来の安値は更新していないまでも、既に安値がジワジワ切り下がっている銘柄が増えていたからです。たとえば、過去6か月、あるいは、過去3か月で見ると安値を更新している銘柄が脈々と増えていたとします。そこに、ドーンと市場全体の急落があれば、それこそ背中を押されるかのように過去1年来の安値更新銘柄もドーンと爆増するでしょう。

実は、この「過去6か月来」「過去3か月来」の高値更新銘柄数・安値更新銘柄数に関しては、2017年の終盤、何とも不穏な状況が観測されていました。

この時期、日経平均株価は小幅な上げ下げでしたが、12月18日に19銘柄だった過去1年来安値更新銘柄数がどんどん増加しています。「過去1年来の安値は更新していないけれども過去6か月の安値は更新している銘柄数」「過去3か月の安値は更新している銘柄数」に至っては、それぞれの期間の高値更新銘柄数を上回っています。つまり、過去1年来のトレンドで見れば、上昇トレンドにある銘柄のほうが多いものの、過去6か月、過去3か月では、「下降トレンド継続中」の銘柄が目立つようになっていたのです。

この状態が続けば、いずれは過去1年来の安値銘柄数も増えることになります。明らかにこれは先行きネガティブを示唆する現象です。ただ、このときの背景としてひとつ推測されたことは、年内受け渡しを意図した売り、とくにトレンドが悪く損失状態になっている銘柄の損失確定売りが出ているのではないか、ということです。

おそらく、この1年の市場全体の状況からすれば、利益が出ている参加者のほうが多いはずです。その利益に対する税金対策として、年内に敢えて損失を出し、損益を相殺しようという動きは出てもおかしくありません。

もし、そうした損出しの売りによって安値更新銘柄が増加しているのであれば、新年受け渡しとなる27日には状況が必ず一変します。

果たしてどうだったかというと、27日以降の数字はこの通り。

安値更新銘柄数は激減。やはり損益相殺のためにトレンドの良くない銘柄を売却する参加者が多かったようです。

損失となっていた銘柄を2017年内に売りたい人は売った、ということは、含み損銘柄を持っている人が相当数減少したことを意味します。これは、先行きの売り圧力が減少し、ポジションに余裕ができたことですから、需給好転につながります。もしかすると、26日の年内受け渡し最終日まで安値更新銘柄リストに連日顔を出していた銘柄、すなわち、下降トレンドから長らく脱却できなかった銘柄の中には、これでアク抜けしてトレンドが上向きに転換するケースも出てくるかもしれません。


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売買対象候補探しにも役立つ当サイトの銘柄リスト

当サイトでは、従来から掲載している過去1年来高値・安値更新銘柄に加えて、12月28日から「過去6か月来」「過去3か月来」の高値・安値更新銘柄リストも掲載しています。個別銘柄のトレンド状態に変化が出ていないかを確認する、延いては、市場全体のベア転換の兆候を知るために、折りに触れてチェックしてみてください。

視点を変えれば、この「過去6か月来」「過去3か月来」の高値・安値更新銘柄は、「過去1年来」リストにこれから上がってくる予備軍銘柄という捉え方もできます。市場全体の地合いは悪くないと判断したとき、トレンドが好転しつつある売買候補銘柄を探す際にこの銘柄リストは大いに役立つと思います。

売買候補銘柄を探す場合にはもうひとつ、日々引け後に掲載している『珍妙チャート』銘柄リストも必見です。高速高頻度取引の参加者の存在感が増す一方となっている昨今の市場では、高速の連続売り・連続買いによってコンマ数秒の間に数十ティック、数百ティックの値幅が動く例が後を絶ちません。そうした強引な売り物・買い物が大きく値を動かした直後、“待ってました”とばかりの買いや売りが現れて、妙に長い下ヒゲ・上ヒゲが描かれる例もまた日々観測されているのが実情です。

異常に長い下ヒゲを描く銘柄の中には、その銘柄を恒常的に売買していると目される参加者が拾い買いポイントとして意識しているサポート水準が現れていることもしばしば。極端に長い上ヒゲを描く銘柄の中には、「このくらいの買いが入るとここまで値上がりすることができる」という上昇ポテンシャルを示しているかのような例があります。そのような動きを見せている銘柄については、コメントも掲載しています。売買対象銘柄を探すとともに、売買注文を出す指値をいくらにするかを考えるうえでも参考にしていただけると思います。


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過熱感がまるで感じられない上昇相場だからこその「継続」期待

金融当局のスタンスをはじめ、高値・安値更新銘柄に見る個別銘柄のトレンド、昨年終盤の需給好転という要素からすると、現時点では主要トレンドのベア転換の可能性は薄いと考えています。もっとも、今年1年を通じてどうかとまでは言えませんが、少なくとも、市場全体の足元のトレンドはまだ継続する余地が十分にあるのではないでしょうか。

加えて言えば、2017年が過去6年の中でもとりわけ堅調な相場でありながらも、過熱感が全く感じられないこともまた、現状のトレンド継続にとってプラス要因です。

たとえば、相場が過熱気味になっているときには、「株で面白いように儲かった」という個人投資家の話が、これでもか、というほど出てくるものです。投資情報ではない一般のメディアでさえも「株、株、株」のような煽り方をしたりします。昨年、そんな報道は目にした記憶がありません。投資に関する話題といえば、株よりも「つみたてNISA」の煽り報道ほうがはるかに多かった印象です。日々の市場全体の動向を見ていると、「株、株」と市場にやってくる個人よりも、むしろ「もう高値は見たから、売るだけ売って市場から出ていこう」という人のほうが多いのではないかという気さえします。

毎週第3営業日の引け後(17時頃)に更新している信用残高や評価損益率の推移を見ても、やはり過熱感は感じられません。新興市場がこれだけ良好な状態にあるのですから、もっと信用買い残が増えても良さそうなものですが、信用倍率は4倍台(それでもひと頃よりは上昇していますが)。評価損益率は14年7月以降、改善しても6%台で頭打ちです。

結局のところ、買いたい人が増えるだけ増えて、その人たちが買いたいだけ買いに走ると過熱感も増して、その買いが尽きたところで上昇トレンドはもはや継続できなくなります。現状は、買いたい人がどうも増えてくれない。売りたい人は減っている。よって過熱感が出ない、ということではないでしょうか。そもそも、買いたい人が殺到している過熱状態だとすれば、税金対策の損出し売却で安値更新銘柄が増加していくような状況は起こらないでしょう。

現状の無過熱感に変化が生じたとすれば、たとえば信用倍率関連の数字にも何かしらの動きが現れるに違いありません。毎週、最新の数値とグラフのほかに市場全体の動向や需給の先行き見通しなどについてのコメントも掲載しています。市場の過熱感という観点からベア転換の可能性をうかがううえで、この信用倍率関連情報もチェックしておいてください。


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【当サイトならではのデータ情報を拡充していきます】

当サイトでは、諸事情により昨年から一般の方がご覧になれる「新着情報」の掲載は控えめにしています。その一方で、定量的なデータ情報は鋭意充実化を図っています。先ほど紹介した「過去6か月来」「過去3か月来」の高値・安値更新銘柄もそのひとつです。また、現在は試験運転中ですが、場中の値上がり・値下がり銘柄数の動向や陽線銘柄数・陰線銘柄数などの動きがひと目で把握できる「4本値市況」というデータ情報も5分おきに更新しています。

データは“後追い”であるにしても、起きた事実を端的に語っています。先行きを予測するヒントや手掛かりはその中にあります。どんなデータ情報が現状を的確に捉え、これからの投資行動判断に有用なのか。この点を常に考えながら当サイトの掲載情報、および、CD−ROMによるオリジナル情報を提供しています。本年も引き続き、売買を実践するうえでより一層役立てていただけるデータ情報を拡充していく所存です。

年足陽線7本目を目指す2018年、継続するトレンドをより有利な売買で利益に変えるために。弊社オリジナルのデータ情報を是非ご活用ください。

今年も出ます!『株テクニカル情報2018年新春号』



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