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【新年のご挨拶】

「高値圏から大下落」は本格ベア相場の始まりなのか

【目次】

急転直下の第3四半期。 実態の悪さは“リーマン”時を凌ぐ

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

意気揚々だった昨年の年明けとは一転。今年は暖冬ながら寒すぎる年越しとなってしまいました。

2018年の相場はスタートから絶好調。日経平均株価は1月23日に2万4000円超えを果たします。「今年はどんな凄い相場になるのか」との期待満々も束の間、2月早々、米国市場の急落を受けて瓦解。約2ヶ月にわたる乱高下の末、日経平均株価はようやく3月26日の安値を境に持ち直します。以後、上げ下げしながらも値を保ち、9月28日、ついに最高値を更新。10月2日に2万2448円まで上値を伸ばしたところまではよかったのですが、そこからまさかの急転直下。10月30日から反転するかに見えたものの、12月3日から再下落。12月20日に3月26日の安値を下抜けして、26日には1万9000円をも割り込むところまで下げています。

とにかく過酷だったのが、12月18日からの下落です。この日から25日までの5営業日のうち、19日を除いていずれも値下がり銘柄数が3000超えの全面安状態。日経平均株価が前日比1010円安の爆落を演じた25日は、値下がり銘柄数が3569。全上場銘柄(ETF・REITを除く)平均の下落率はマイナス6.18%という惨澹たる状況です。

当然ながら、過去1年来の安値を更新する銘柄数は増加の一途を辿り、25日には実に2654銘柄。全上場銘柄のおよそ7割が過去1年来最安値を更新しています。

この過去1年来安値更新銘柄数「2654」という数字がいかに異常か。「100年に1度」とも称された10年前の市場崩壊 “リーマン・ショック”時と比較するとこんな具合です。

10年前の10月を思い出すと、先物はサーキットブレイカーが発動して一時売買停止、ストップ安銘柄も多数という、それこそ地獄絵図でした。昨年12月の市場の光景は、当時と制限値幅が異なるとはいえ、そこまでの地獄絵図ではなかったという印象はあります。また、日経平均株価は26日以降のリバウンドで2万円を回復して年を引けていますから、メディアで日経平均株価の動向だけを見ている人からすれば、“リーマン”時ほど悲惨な状況にあるとは思わないでしょう。

確かに、年を通じて安値更新銘柄数の状況が悪かったのは08年で、それは日経平均株価の推移が物語っています。対して、18年は、日経平均株価は値持ちしているように見えながら、7月から安値更新銘柄数の増勢は止まらず、ついには“リーマン”時の最多を大幅に上回る水準にまで達しています。これが異常に見えて仕方がありません。

安値更新銘柄数が大幅に上回っているということは、下降トレンドの中にある銘柄数がそれだけ多いことを示しています。市場の実態は“リーマン”時より悪いといって過言ではありません。



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一度ならず二度までも。「強気示唆」が覆されて7年ぶり年足陰線

今にしてチャートを見れば、「あの2月の急落が全ての始まりだった」というふうにも映ります。あの時点で警戒しておくべきだった、と後悔したくもなりそうですが、ただ、2月から3月の下落局面で市場全体の地合いが一挙に悪化した、というわけではありません。

尋常ではない乱高下ではありましたが、それまでトレンドの良かった小型・新興株の中には勢いのあるリバウンドを見せていた銘柄も多数。実際、この時期の日経平均株価と新興市場の値動きを比べると、新興市場のほうが戻り方に勢いがあります。

言うなれば、これは「日経平均株価ほど個別銘柄の実態は悪くない」状況です。おそらく、この局面で動きのよい小型・新興株を安いところで拾えば、収益のチャンスに少なからず遭遇できたと思います。

この「悪くない」状況に変調の兆しが現われたのは、日経平均株価が反転モードとなった4月以降です。日経平均株価は3月最終週から5月3週まで8週連続で週足陽線という快調な動きとなり、5月23日には2万3000円を回復しています。ところが、新興市場が4月から日経平均株価の動きと逆行し、マザーズ指数は4月17日に最安値を更新。日経JASDAQ平均は、2月の最安値は下回らなかったものの、3月26日の安値と同水準まで下げています。

その後、日経平均株価が2万3000円で上値が抑えられて反落、という動きを繰り返す中で新興市場は勢いを失い、6月18日からの下落局面でマザーズ指数は3週連続で最安値を更新。それまで下値を維持していた日経JASDAQ平均も底割れ。7月5日に最安値を更新しています。また、図3に表れているように、過去1年来安値更新銘柄数も7月5日に年初来の最多を更新。実際問題として警戒すべき第1のポイントは、ここだったかもしれません。

このとき日経平均株価も3連続週足陰線で下げていますが、7月5日の安値は3月の安値よりもはるかに上。そして、そこからの反発で7月18日には再び2万3000円処まで戻しています。

一方、新興市場は7月5日の安値から反発しても上値は伸びず、動きは弱々しくなるばかり。8月にまたも最安値更新です。

日経平均株価が上昇しても高値更新銘柄数は増えず、下げれば安値更新銘柄数は増加。新興市場も最安値を更新している。もはや予断を許さない先行き警戒シグナルはこの局面でしょう。おそらく、このときベア対応のスタンスを考えた人もいるのではないでしょうか。

ところが、です。このあと市場全体が予想外の展開になります。日経平均株価は9月10日からの上昇で2万3000円のレジスタンスを突破し、何と、1月23日の高値を更新。日経JASDAQ指数もマザーズ指数も、8月の安値を下回らずに反転し、4月以降目にすることのなかった上値を切り上げる動きとなります。日経平均株価は上昇トレンド完全復帰の強気示唆、日経JASDAQ平均・マザーズ指数はトレンド本格反転の強気示唆です。

となれば、「押したところで買い出動」が正解のはずですが、あろうことか、10月2日の高値から市場全体が急反落。新興市場はまたも最安値更新。日経平均株価は2万1000円割れ水準まで大下げ。強気示唆から一転して弱気示唆となってしまいます。

すると、ここからまた予想外の動きが出ます。まず、10月30日に取引高を伴う非常に強い反転。さらに、11月8日から反落しますが、10月の安値を下回らずに再反転。日経平均株価とマザーズ指数は11月30日に7日の高値を超える水準まで上昇。日経JASDAQ平均は11月7日の高値水準まで戻しています。「今度こそ本物のトレンド反転」と解釈して間違いない強気示唆です。

この二度目の強気示唆もまたまた裏切られてしまいます。12月3日の高値から市場全体がほとんど下げっぱなし。日経平均株価も3月26日の安値を大幅に割り込み、新興市場は最安値を大幅更新。マザーズ指数は、16年11月9日の安値をも下回っています。

一度ならず二度までも強気示唆が覆された結果、9月末時点で陽線だった年足も終わってみればしっかりした陰線。年足陽線の連続は、残念ながら「6」でストップです。

結局のところ、この年足陰線のほとんどは10月からの3ヶ月の値動きです。市場全体が強気示唆を覆されたこの3ヶ月の値動きが「2018年相場」だった、と言ってよいかもしれません。



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12月の下落は「08年1月型」か、「15年2月型」か

もし、10月からの下落、とくに12月の強烈な下落が安値圏で起きたのであれば、「下落もそろそろ最終局面ではないか」との予測にもなるところでしょう。しかし、日経平均株価は最高値から2割下げているとはいっても、13年からの上昇トレンドの中では高値圏。7年ぶりの年足陰線は、新たなトレンドの始まりのように見えなくもありません。

「高値圏からの大幅下落」ということでまず頭をよぎるのは、やはり07年後半から08年にかけての下落局面です。07年7月にサブプライムローン問題が表面化し、日経平均株価も米国市場も高値圏から急落。9月、10月にいったん戻す動きが出ましたが(米国市場は最高値を更新)、11月から再び下げ始め、日経平均株価は08年1月に爆落。図3で見た通り、1月16日に過去1年来の安値更新銘柄数が2000を超える水準に跳ね上がっています。その後、日経平均株価は3月半ばまで安値を更新していますが、安値更新銘柄数は減少傾向になっています。市場実態としては1月16日が“ひとまず底”だったと解釈してよいと思います。

07年からの相場で思い出されるのは、日経平均株価が高値圏にある一方で新興市場のトレンドは既にベア転換していたこと。日経平均株価が高値圏にありながらも、高値更新銘柄数は増えず、日経平均株価が下げると安値更新銘柄数が増える、という状況もありました。何だか昨年の相場と似ています。

となると、この先に待っているのは、戻す動きを挟んで“リーマン”再来?あの市場崩壊から主要トレンドが本格回復するまで4年もの年月を要しています。もうおぞましい以外の何者でもありませんが、ただ、当時と現状とでは異なる状況ももちろんあります。たとえば、米国が金利を引き上げている点は同じかもしれませんが、日銀は当時、政府の意向に反して金融引き締めに動いていたのに対し、現状は緩和路線を継続しています。「出口」の「で」の字も口に出すことすら憚られる状況です。

下落の発端にしても、昨年はサブプライムローン問題のようなことが起きたわけではありません。当時の米国は、クレジット・デフォルト・スワップという手法の拡大によって、金融当局によるマネーのコントロールに問題が生じていたという話があります。おそらく、当局としては、その金融構造を建て直す必要に迫られ、その手始め的なものがサブプライムローン問題、その後の地銀の相次ぐ破綻、 “リーマン・ショック”へと発展し、金融界の大再編で終結したと思われます。いまの米国の金融情勢は、もちろん内実はわかりませんが、そうした巨大な問題を抱えているようには見えません。

もうひとつ、「高値圏からの大幅下落」といえば、15年8月から16年2月にかけての時期もそうでした。

このときは、上海市場の急落や、歯止めがかからない原油安を背景として、2万1000円手前の高値圏にあった日経平均株価は1万5000円割れ水準まで下げています。率にして28%超という大下落です。

しかし、2月12日の安値を境に反発。6月に再び弱い動きになり、安値を叩きに行ったものの、英国のEU離脱の大下げでもほぼ同値で止まり、そこから上昇トレンドに復帰しています。この下落局面は中期的な視点ではベア転換と言えますが、長期的に見れば、13年からの上昇トレンドの中で初めて出現した本格調整局面です。これと同様のパターンになるとすれば、7年ぶりの年足陰線は長期トレンドの中で二度目となる本格調整局面ということになります。

果たして、昨年12月の大幅下落は08年1月型の「本格下降トレンドの始まり」の示唆なのか。それとも16年2月型の「本格調整局面の最終段階」なのか。何らかの甚大な悪要因が表面化すれば、もはや前者となることを覚悟せざるを得ません。では、甚大な悪要因が出てこなければ、後者になって上昇トレンド再開となるのか、と言えば、そう簡単にいくとも思えません。というのは、16年のトレンド再開には、日本と欧州の中央銀行の強い緩和姿勢に加え、11月の米国大統領選挙「トランプ氏当選」に対する想像を絶するポジティブな反応が効いているからです。

甚大な悪要因も出てこない、かといって、絶大なポジティブ反応を誘発する強い好材料も出ないならば、「ある程度の値幅の中での上げ下げ」が最もあり得そうなシナリオです。個人的には、当面は、強気示唆の動きが出ても覆されるような弱保合いではないかと予想しています。

そうした動きが続く中で、安値を見に行ってもそう下がらない、あるいは、早々にベア転換していた新興市場が下値を切り上げる動きになれば、そのとき「本格調整局面の最終段階」シナリオが浮上してくるでしょう。逆に、日経平均株価は反転の様相を見せても、新興市場が再び最安値更新街道を進みはじめるならば、「本格下降トレンド」シナリオが現実味を帯びてくると思います。



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「日経平均と違う市場実態」に混迷相場先行きのヒント

12月に入ってから、メディアで「混迷相場」という言葉をよく見かけるようになりました。ただ、「混迷」という言葉、「混沌としてわけがわからない」という意味で言えば、それよりも前の「日経平均株価は悪くない。しかし、市場実態は悪化傾向が現われている」という状況のほうが的を射ているのではないでしょうか。そこから強気示唆が二度裏切られるところとなり、12月は「混迷」どころか、完全な激悪下げ相場です。

ここに今年の売買スタンスを考える大きなヒントがあると考えています。すなわち、日経平均株価と市場実態が違っているのであれば市場実態に従う、です。

たとえば、12月26日につけた日経平均株価の最安値が目先の底になるのか、現段階ではわかりませんが、あの日の異常さを考えると、そう遠くないうちにリバウンド局面が到来することが予想されます。もしかすると、12月の下落に見合うくらいのリバウンドになるかもしれません。

そこで見るべきは、そのリバウンドの中身です。日経平均株価は勢いよく上昇しているのに新興市場のインデックスは戻りが悪い。あるいは、持ち株の損益状況の改善が鈍いようであれば、明らかに市場実態は良くありません。そのときは逆張り的な売りを前向きに検討してよいと思います。買い玉の手仕舞いはもちろんのこと、保有する現物株と同じ銘柄をショートする策もあります。空売りができない銘柄であれば、似た値動きをする貸借銘柄をショートして持ち株をヘッジする手も考えられるところです。

他方、日経平均株価が弱い動きになっても、新興市場が堅い動きをしているならば、市場全体の地合いが固まりつつある兆候と言えます。そのときは逆張り的な買い出動もあってよいかもしれませんが、とはいえ、トレンドが悪化している銘柄が多数ある現状、売り圧力はかなり大きいと見られます。高値更新銘柄数の増加基調が確認されるまでは、足元のトレンドに回復の兆しが見えている銘柄でも早期の手仕舞いがやはり安全策でしょう。

もし、もう一段、場合によっては二段、大急落するような最悪のシナリオになった場合には、そこは本腰を入れて買い出動を検討する局面になると思います。もちろん、落ちてくるナイフを素手でつかむようなことになっては元も子もありませんから、逆張り買いはよくよく慎重を要します。ただ、早々に下降トレンド化した銘柄の中には、正気の沙汰とは思えないほど売られに売られ、現時点ですらバリュエーション的に激安になっているものが少なくありません。そうした銘柄がなおも売られて到底説明のつかない株価水準になっていれば、日経平均株価が安値を更新しても、もはや下値は限定的です。同じような銘柄が多ければ、もう安値更新銘柄数は増えません。そのとき日経平均株価がどうあれ、市場実態の底は見えています。そこを拾う逆張り策はあってよいのではないでしょうか。もちろん、その実践に際しては、市場が最悪の状態となっている中でも余力が確保されていることが最重要ポイントです。

※ ※ ※ ※ ※

日本が休場中だった1月3日、米国市場はまたも大幅に下落し、おまけにドル安が一気に進んだことから、大発会の日経平均株価は前日比452円安の1万9561円という大幅安。場中一時800円近く下げる場面もあり、昨年とは正反対のスタートとなりました。

大発会の引け後、メディアではこの大幅安を非常にネガティブなトーンに伝えていましたが、しかし、実際には言われているほど悪くはありません。寄り付きこそ全面安に近い状態ではあったものの、場中に買われて値を戻す銘柄も目立ち、終わってみれば2437銘柄が陽線。全銘柄平均の「寄り→引け」の騰落率はプラス1.38%です。この「日経平均株価は大幅安ながらも市場は悪くない」という光景は、そこそこの好発進にさえ感じます。

昨年4月以降は、これとは逆の状況が続きました。新興市場の最安値更新が止まらなくなった時期、市場実態がいかに悪化しているか。メディアでは全くと言っていいほど報じられませんでした。日経平均株価が値持ちしていたからにほかなりません。

今年の相場はそんな昨年とは正反対の展開になることを期待しています。メディアに載らない市場実態こそが注目対象です。その趨勢、変化を捉えるうえで、当サイトのデータ情報を是非ご活用ください。


今年も出ます!『株テクニカル情報2019年新春号』



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