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【新年のご挨拶】

ベア転換か、調整完了でトレンド再開か

【目次】

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

新型コロナに始まり、新型コロナで暮れた2021年。東京オリンピックがメダルラッシュとなっているさなか、感染拡大が加速。医療崩壊さえ危惧される事態となりました。9月に入って新規感染者が大幅に減少し、やっと収束するのか、と思われた矢先、オミクロン株なる変異種の感染が南アフリカで確認され、以後、欧州で拡大。強烈な感染力を持つとされているこの変異種、いずれ日本も感染爆発するのではないか、などと脅かされて2021年は幕を下ろしました。

幸いだったのは、クラスターなどの大禍なくオリンピック・パラリンピックが無事閉幕したこと。そして、新型コロナが株式市場にとって強烈な悪材料にならなかったことでしょうか。


日経平均株価は3連続の年足陽線。しかし、その内実は・・・

昨年の年頭、以下のような所感を述べていました。

・20年3月のコロナ暴落で2年にわたるベア相場は終わり、新たな相場が始まった。

・21年はその第2ステージとなる。イメージは「疑いの中で相場は育つ」。

実際どうだったかといえば、とくに4月以降、確かに市場全体に疑わしさが漂っていました。何が疑わしいかは後述するとして、果たして相場は育っていたのか、というと、日経平均株価の年足を見れば3連続となる陽線。上ヒゲの小陽線ではありますが、91年のレジスタンスをしっかりブレイクしている辺りに “育った”感は出ています。

しかし、この年足陽線の内実はこんな具合です。

2月15日に3万円に乗せ、翌16日にさらに高値を更新すると、翌日から延々と上値下値を切り下げる弱い動きが半年も続き、8月20日に年初来安値。そこから激反発して9月14日に2月の高値をブレイク。これで上昇トレンドに復帰したかと思ったところが、その9月14日をピークに今度は超絶反落。10月6日に8月20日安値目前まで下げて反発しますが、3万円回復ならず。11月半ば以降は、下値は崩れていないもののトレンドは改善していない。何ともはっきりしない動きが続いています。

少し話が逸れますが、こうした日経平均株価の動きの果てに、信じ難いことが起きています。

向かうところ敵なしだったあのファーストリテイリング(9983)の寄与度が、何と首位から転落。代わって首位に躍り出たのが東京エレクトロン(8035)です。半導体市況の関連もあるとは思いますが、それにしても1年前には日経平均株価に対する寄与度が12%を超えていたユニクロがこんなことになるとは。相場というのは本当に何が起きるかわかりません。お陰で日経平均株価が“日経ユニクロ指数”などと揶揄されることもなくなります。これは「日経平均3万円回復」にも勝る2021年の重大ニュース、大異変と言ってもよいでしょう。



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JASDAQ指数はすでにベア転換にも見える推移に

このファストリもそうですが、市場全体を見ると、日経平均株価どころではない、好ましくない動きが続いている個別銘柄は少なくありません。インデックスもしかりです。

20年3月のコロナ大暴落からの大反転の主役だったマザーズ指数は10月14日に18年1月の最高値をごくわずかに超えたところから反落。1年以上を経てもその下げ基調から脱することはできず、12月21日まで年初来安値を更新しています。20年3月13日の安値から10月14日の高値までの値幅のちょうど半分が消失した格好です。

もっとも、マザーズ指数は独特の動きを見せることが珍しくない指数ですから、市場全体に対するこの値動きのインパクトはさほど大きくないかもしれません。しかし、これはどうでしょうか。

9月前半の上昇局面で極めて強いトレンドが現れ、18年1月高値をしっかりとブレイクしたJASDAQ指数が、まさかの急降下。もはや20年4月からの上昇トレンドが崩壊したかにさえ見える動きになっています。



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どのインデックスよりもはるかに悪い個別銘柄のトレンド

こうしたインデックスの動きにも増して看過できないのが個別銘柄のトレンドです。

高値安値更新銘柄数の動向は明らかに4月を境に変化しています。8月まで高値更新銘柄数が大きく伸びることはなかったのに対して、安値更新銘柄数は月1ペースで急増。8月末から9月14日にかけて市場全体が急上昇した局面では高値更新銘柄数が大幅に増加し、良い変化が起きたようにも見えましたが、9月後半になると元の木阿弥です。

11月以降は“元”よりも悲惨なことになり、11月29日および12月1日に安値更新銘柄数が年最大を記録。その数、過去1年来安値更新銘柄が751、過去3か月来安値更新銘柄数は1674。今年最大どころか、コロナ暴落後の20年4月以降最大です。

つまり、個別銘柄のトレンドは20年4月以降で最もよくない状況にあります。インデックスを見れば「よろしくない」とは言っても、日経平均株価は2万9000円手前で「高値圏」と言って差し支えない水準。20年10月半ばから下げ基調が続いているマザーズ指数にしても、半値戻しレベルです。JASDAQ指数もベア転換したかのようなトレンドではあっても、12月21日につけた年初来安値は20年3月安値から21年9月高値までの上げ幅の3分の1押し程度にとどまっています。少なくとも、どのインデックスも「よろしくない」動きながら、20年2月、3月のように爆下げしているわけではありません。

ところが、個別銘柄を見ると、20年3月の大暴落局面並みの激しい下げ方をしている、それも数か月も下げ止まらないケースが決して稀ではないのが実情です。そうした個別銘柄のトレンドの悪さ、要は市場実態が悪化している現実は、どのインデックスを見てもわかりません。

日経平均株価と市場実態の乖離については、これまで何度か取り上げてきましたが、過去のそうした局面では、日経平均株価と2部・新興市場のトレンドに乖離が生じていることが間々ありました。とくに2部指数と日経JASDAQ平均のトレンドは市場実態に近い印象だったのですが、現状は、2部指数や日経JASDAQ平均を見ても、個別銘柄のトレンドの悪さはうかがい知れません。2部指数はむしろ日経平均株価よりも値動きが安定している感さえあります。

これが切に感じた昨年の市場の疑わしさです。日経平均株価のみならず、そのほかのインデックスも市場の実態とはどうも違う。インデックスは値持ちしていても、過去1年来の安値更新銘柄数の動向を見ると、市場実態は20年4月からの上昇トレンドが完全に終了して新たなベアトレンドが始まっているかのようではないでしょうか。



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安値更新銘柄数の増勢が続けばインデックスもいずれベア転

そもそも「疑いの中で相場は育つ」というのは、たとえば日経平均株価が全く冴えない動きをしている、取引高も減って市場全体に活気がまるでない。停滞ムードが満ち満ちている中で、個別に見ればトレンドが好転する銘柄、それが進展する銘柄がわずかずつながらも増えている。その結果として、いつ底割れしてもおかしくないような疑わしい動きのインデックスも下値は切り下がらない。そうこうしているうちに市場の地盤が固まっていく、というイメージでしょう。

現状は全く逆です。トレンドが悪化する銘柄が増加傾向にあるにも関わらず、日経平均株価をはじめインデックスは疑わしい値持ちを続けています。「疑いの中で相場は育つ」どころか、疑いの中で相場が枯れつつあるのがいまの市場の実像です。

おそらく、インデックスを構成する一部の銘柄の値動きが効いているのだと思いますが、いかに一部の銘柄によってインデックスが支えられていたとしても、安値を更新する銘柄が増え続ければ、いずれインデックスのトレンドも必ずベア転換します。

“ITバブル”崩壊前がそうでした。このとき日経平均株価の最高値は2000年4月。2部指数は3月、日経JASDAQ平均とJASDAQ指数は2月で、そこから主要トレンドはベア転換しています。対して、過去1年来高値更新銘柄数は99年7月から減少傾向です。11月に入ると安値更新銘柄数の増加が目立つようになり、安値更新銘柄数が高値更新銘柄数を上回る光景が常態化しています。結果論ですが、この時点ですでに市場の実態はベア転換していたわけです。

21年末までの動向を見ると、その再来もありうる、という見方にならざるを得ません。つまり、安値更新銘柄数の増勢が続くのか、それとも11月29日および12月1日の今年最大値を以って“底”を打ち、改善に向かうのか。これが本年最大の焦点です。

もし、市場参加者が一斉にリスクオフ態勢を取るような世界的ショックが起きれば、もはやベア転換は確実です。その場合、日経平均株価は2万円前後のサポートで下げ止まるかどうか。コロナ暴落の最安値を割り込むかが焦点になるかもしれません。

幸いにしてそうしたショックに見舞われずに済んだとすれば、日経平均株価をはじめとするインデックスは弱保合い状態とになると予想しています。それは“リーマンショック”の後の民主党政権時代の相場に近いのではないか、という思いもあります。

当時、米国市場はなりふり構わず金融緩和を推し進め、株式市場のトレンドが改善していた一方で、日本市場は居所が切り上がらない。米国市場が下がれば先物主導で当然のように売られる。米国市場が上昇すると、高く寄り付くものの売り物に叩かれて結局下げる。1,2ヶ月いい状況が続くことがあっても強烈な売りがやってきて、せっかくの上げ幅が全消滅。売買高は細り、高速取引中心で動く無機質な市場。あのときのような憤懣やるかたない日々をまた余儀なくされるかもしれません。

ただ、日経平均株価がそうした状況になったとしても、トレンドが悪化する個別銘柄が減少し、他方、トレンドが改善する銘柄がわずかずつながらでも増えれば、昨年4月以降の弱含みな動きは、上昇トレンド途中の長い調整だった、という解釈になるはずです。その先にあるのは「弱保合いを上抜けして調整完了→20年4月からのトレンド再開」です。

市場全体の主要トレンドがベア転換するのか、それとも調整を経て上昇トレンドが再開するのか。もちろん現時点ではわかりません。とにもかくにも、各株価指数もさることながら高値安値更新銘柄数の動向を常にチェックすることに尽きます。良い兆候も、良からぬ兆候も、必ずやそこに現れます。

今回の年頭所感は明るくない内容となってしまいましたが、個人的には、ショックが起きなければ時間を要するとしてもトレンドが再開すると考えています。そして、いずれ面白い相場がやってくる! 本年も前向きな思考で市場に参加し続けます。



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今年も出ます!『株テクニカル情報2022年新春号』



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