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【新年のご挨拶】

市場実態の本格回復が試される年

【目次】

このたびの令和6年能登半島地震により被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。


年足は2013年以来のほぼヒゲなし大陽線。しかしその内実は…

おそらく、株式市場に直接参加していない人、メディアの報道で市場動向を見聞きしている人からすると、2023年は株でウハウハ儲かった1年だっただろうと思っているのではないでしょうか。

何しろ、日経平均株価はこの通り。大発会の安値2万5661円が2023年の最安値。そして高値圏で大納会。年足の寄り引けの値幅は30%超、ほぼヒゲなしの大陽線です。

89年の最高値3万8915円まで、年足ベースではもはやレジスタンスはありません。昨年末、「来年は最高値を超える」という強気予測がメディアに出ていたりしましたが、そう言いたくなるのも当然でしょう。

しかし、株式市場に参加している人の実感はどうでしょうか。確かに、結果的には悪い年ではなかったと思います。とはいっても、年初から大納会まで市場全体が順風満帆で上昇気流に乗り続けていたわけではありません。

23年の日経平均株価を振り返ってみると、前半と後半とではだいぶ様相が異なります。

安くスタートした日経平均株価は1月半ばからよいムードになりかけましたが、1月終盤に2万7000円を超えるとこう着状態に陥ってしまいます。動きが出始めたのは、200日移動平均を割り込む下落があった2月22日の翌日。3月に入ると勢いづき、市場全体が盛り上がっていたところが、金利上昇が継続している米国でシリコンバレー銀行があっという間に破綻するという悪材料が出て一変。3月10日からギャップダウンが連続する大下げとなり、わずか5営業日で2000円超も株価を落としてしまいます。

このとき頭をよぎったのは、22年に繰り返された「上昇軌道に乗ったかと思うと急落が始まり、“往って来い”の逆戻り」のパターン。もしかすると、この3月9日の高値が23年の最高値ではないのか、とも考えました。が、幸いにして、この大下げは3月16日で止まり、“往って来い”は回避して回復基調となります。

GW直前に3月9日の高値をブレイクして以降は上昇基調が鮮明となり、3万円台に乗せてなおも快走。6月19日に3万3772円まで上値を伸ばします。

かくして、3月10日からの大下げはあったものの、その下落を取り戻した5月からの上昇によって、大きく捉えれば23年前半の日経平均株価は「しっかりした上昇トレンド」です。

そのトレンドが23年後半は止まってしまいます。

日経平均株価は6月19日の高値から一旦押して上げに転じますが、7月3日の高値は6月19日に10円足りず、そこから基調は下向きになります。その脆弱な動きは8月18日の安値を境に好転し、9月15日には8月1日の戻り高値をブレイクするという、いわゆる強気シグナルが点灯。これで年前半の上昇トレンドに復帰するだろうと思われたのですが、あろうことかこの9月15日の高値を境に相場は急転。10月終盤まで、あれだけ乖離していた200日移動平均がすぐそこに見える位置まで落下します。

いまにして思えば、これが23年で最も厳しい下落局面でした。3万円割れも十分ありそうな下げ方でしたが、これまた幸いにして11月から持ち直し、11月15日に3万3000円台を回復。11月20日には6月19日の高値を超えて年初来高値をつけるに至ります。

しかし、「超えた」と言ってもわずか80円。そしてそこから上値を切り上げることはできないまま年を終えています。結局、23年後半は下げ基調から何とか元の水準まで戻ったという、大きく捉えれば横ばい状態です。

この23年前半と後半、とくに7月から10月までの4ヶ月間の違いは月足を見ると手に取るようにわかります。

6月までは連続陽線。それが7月から4連続陰線。調整局面が4ヶ月に及ぶともなれば、これは精神的にも疲弊します。11月からの反転によって株価水準は高値圏まで戻ってはいますが、結構つらい時期もあったという人は少なくないと思います。



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いまなお「ベア再開」不安が払拭できないグロース250指数

23年は銘柄による温度差が気になった1年でもありました。

何だかんだと言っても日経平均株価は22年の水準を大きく切り上げ、その高値圏で年を終えていますが、同じ日本株市場にありながらまるで水準を切り上げられない。低迷を余儀なくされ続けていた銘柄も少数ではありません。

11月6日からグロース250指数に名称が変わった旧マザーズ指数は、そうした銘柄の象徴と言ってもよいかもしれません。

22年1月に“リーマン・ショック”時を上回る爆下げとなった旧マザーズ指数は、22年6月20日の最安値を境にトレンドが上向きましたが、12月1日の813.79ポイントで挫折。12月26日の安値700.44ポイント以降は延々と保合い的な動きを続けています。

その保合いを6月に勢いよくブレイクしたときには、これで完全にベアトレンドから脱出した、やっと本格的な上昇トレンドが始まる、と思われたところが、6月22日の下落から一転。10月24日の安値まで4ヶ月間、8月に1度だけ週足陽線が連続しただけであとは陰線ばかりで下げっぱなしです。23年の最安値は10月24日の618.70ポイント。22年6月20日の最安値は下回らずにその後は戻す動きとなっているとはいえ、いまひとつ勢いがつきません。

この先、もし22年6月20日の最安値を割り込むことになると、「22年1月の爆下げからのベアトレンド再開」が示唆されます。そんな弱いトレンドからいまなお抜けられないでいるインデックスが日本株市場の中には現存しているのが実情です。このグロース250指数に連れる傾向の強い新興系銘柄を中心に手掛けていた人にとっては、2023年は「ウハウハ」どころか、辛酸を舐めるばかりの1年だったかもしれません。



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最注目は東証スタンダード市場指数の“素直”なトレンド

日経平均株価は高値圏にいる一方で、グロース250指数はベアトレンドが終わったかどうかも定かではないという、この乖離した状況は気持ちのいいものではありません。もし、グロース250指数がベア再開となろうものなら、小型・新興系銘柄が連鎖的に弱い動きと化す事態に発展しないとも限りません。

ただ、目下のところはその心配は強くはありません。というのは、インデックスの中で脆弱な動きをしているのはグロース250指数だけだからです。

個別銘柄を見ても、日経平均株価にまるでついていけない、置き去りにされてしまったかのような銘柄も目につくのは確かですが、それが市場全体の趨勢になってはいません。

たとえば23年の高値安値更新銘柄数の動向はこんな具合です。

市場全体の大下げ局面では安値更新銘柄数が大幅に増加していますが、少なくとも9月半ばまでは高値更新銘柄数のほうが優位です。10月の大下げ以降は、高値更新銘柄数の増え方は鈍く、他方、安値更新銘柄の減り方も鈍いという状況でしたが、それも12月27日の年内受け渡し最終日を境に大幅に改善しています。

この高値安値更新銘柄数の動向とかなり近いという実感があるのは、日経平均株価よりも東証スタンダード市場指数です。とくに年前半はその印象が強くありました。

たとえば、日経平均株価は1月終盤から2月中にかけてこう着状態になっていましたが、高値更新銘柄数は増勢が続いています。この時期、東証スタンダード市場指数のトレンドは快調に進展しています。

また、日経平均株価はGW直前から強いトレンドが始まっているのに対して、高値更新銘柄数は5月9日から失速し、5月終盤は一時「高値更新銘柄数<安値更新銘柄数」に逆転しています。東証スタンダード市場指数を見ると、5月8日に3月9日の高値を超え、9日はギャップアップで水準を切り上げたものの、そこで上値が止まってしまい、6月1日まで冴えない動きが続いています。

この指数に関しては昨年の年頭所感で「かつての東証2部指数や日経JASDAQ平均のように市場の実態に近い動きをするのではないか、と期待していたけれども、実際の値動きは東証プライム市場指数(というか、TOPIX)に近く、期待外れだった」といった旨を述べています。それが23年に入ってから必ずしもそうではなくなっています。そうした異変が23年前半に現れました。

年後半に関しては、7月から8月半ばまで弱含みな動きとなり、8月後半から盛り返したものの、10月に激下げ。一時200日移動平均を下回っています。

11月以降は戻す動きとなり、年後半を通じてみれば、方向性は日経平均株価と同じです。ただ、日経平均株価は11月の年初来高値が6月高値をわずかしか上回っていないのに対して、東証スタンダード市場指数は戻し基調になるたびに上値を切り上げ、大納会に最高値です。

その結果、週足でトレンドを見ると日経平均株価とかなり違っています。

日経平均株価は5月、6月と絶好調でしたが、年後半は悩ましい上げ下げ。一方、東証スタンダード市場指数は、10月に厳しい下落局面はありましたが、移動平均線の右肩上がりは崩れることなく、年初から年末まで着実なトレンドが継続しています。

この東証スタンダード市場指数のチャートを見ると、トレンドが進展する局面では陽線が連続する傾向が見て取れます。おそらく、その局面は市場で売買している参加者が市場全体の地合いの良さを感じた時期と一致しているのではないかと思います。他方、この指数のトレンドが陰線を連ねている局面は市場全体の地合いの悪化を実感していたのではないでしょうか。

この素直な値動きの性格、そしてその値動きと市場全体の地合いの一致感は、まさにかつての東証2部指数や日経JASDAQ平均と重なります。そうすると、かつての両指数がそうだったように、この指数の着実なトレンドが継続していれば市場の実態も着実に改善していると考えてよいと思います。逆に、この紙数のトレンドが変調した場合には警戒を要します。巷に強気論調が出ていても、買い出動はよくよく慎重にしたいところです。そうした視点でこの指数の動向に注目してみてください。



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最大の課題は「相場の急変にどう対処するか」

さて、2024年はどんな相場になるのか。冒頭でもふれたように、メディアでは「日経平均株価が最高値を更新するか」が大きな関心事になっていますが、仮にそうなったとしても、そこまで行けないながら年足が連続陽線だったとしても、「面白いようにウハウハ儲かる」相場にはならないだろうと考えています。

改めて日経平均株価の年足を見ると、90年の大陰線からの超長期下降トレンドは09年で終息し、底値固め的な動きを経て、12年の年足陽線から上昇トレンドに転換しています。それから23年までを振り返って「1年を通じて実に楽しい相場だった」と言える年はただ1度、17年だけです。その他の年は年足が陽線でも途中で苛酷な爆下げに見舞われたり、数ヶ月に及ぶ調整があったり、我慢を余儀なくされる場面が必ずありました。年足が極めて強い陽線だった13年ですら、5月に先物のサーキットブレイカーが発動するという信じ難い爆落が起きています。

17年はそんな状況が起きることなく過ぎた、多くの市場参加者にとって心地のいい1年だったと思います。そしてそれは12年11月から続いていた長期上昇相場の最終局面でした。

現状はそうした局面を迎える段階ではおそらくないでしょう。何しろ、日経平均株価は高値圏にある、東証スタンダード市場指数は最高値更新を続けていると言っても、個別銘柄が総じて強い基調になっているわけではありません。何らかの要因で市場全体の大下げが始まれば途端に売り一辺倒となって、安値更新銘柄数は激増です。わずか数日で1ヶ月以上もかけて積み重ねた値幅がチャラになることも決して稀ではありません。

本年も同様の事態は免れないと思っています。そうした厳しい局面を通じて市場実態の本格的な回復が試される。そんな1年ではないでしょうか。

だとすれば最大の課題は、大下げ局面をいかに乗り切るか、相場急変のダメージをいかにして抑えるか、に尽きます。

市場全体の大下げが数日続けば、あっという間に買いポジションの損益は悪化します。仮に日経平均株価が戻し基調になっても、それとともに個別銘柄も回復するとは限りません。大下げ以前の損益水準を取り戻すまでにかなり時間を要することも予想されます。売買効率も悪化してしまいます。

そうした事態にどう対処するか。そのひとつは、市場全体の地合いがよい局面で買い玉を売り上がる策です。それだけで大下げ局面のダメージは間違いなく縮小できます。と同時に、安値を拾う余力も生まれます。いかにも当たり前なことに聞こえるかもしれませんが、これを確実に実行することが最も重要だと考えています。

225先物のショートで個別銘柄のポジションをヘッジする、あるいは、保険的に225オプションのプットを活用することも考えられます。好都合なことに、昨年から225先物は100分の1サイズのマイクロ、225オプションは10分の1サイズのミニの取引ができるようになっています。少額でも検討してみる価値はあると思います。

機械発注による高速取引が市場取引の主体となってからというもの、相場の急変が個人の参加者に与える影響は年を追うごとに厳しくなっている感があります。それに屈せず収益機会を拡げられるよう、本年も前向きに取り組んでまいります。



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今年も出ます!『株テクニカル情報2024年新春号』



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