過去半年の値動きと「需給」との関係から株価の節目水準を読む!
「日本市場のメインプレーヤーは外国人投資家」といわれるようになって相当な年月が経ちます。投資主体別売買動向を見ると、08年の“リーマンショック”以後やや割合は低下しましたが、再び割合が高まってきています。
2010年5月の月間統計では、外国人の売買比率(代金ベース)は50%超。証券会社の自己売買が27%と、この2主体だけで80%弱です。これに対して、個人投資家は15%程度ですが、それでも機関投資家など「法人」の2倍以上。この比率は、外国人とその注文を受ける外資系証券会社、およびその自己売買によって日本市場動向のほとんどが決まっていることを示す、と考えて間違いありません。
その外国人は、比率は少なくなっているとはいえ、個人投資家の動向を予想以上に注視しているようです。憶測の域を出ませんが、個人を“つかませる”相手として捉えているからかもしれません。
個人投資家の動向を探るひとつに、日証金や大証金の融資・貸株残の動きがあります。というのも、個人の信用取引の多くは制度信用であり、証券金融会社のその動向が数字に出てくると見られるためです。
投資主体別売買動向と株価の推移を合わせてみるとわかりますが、日本の個人投資家のスタンスは徹底した逆張りです。値上がりすれば売る、値下がりすれば買う。暴落でもしようものなら、全力で買ってきます。
この徹底した逆張りスタンスは、耐久力のある「現金個人」には非常に有効で、それが「天井で売り、大底で買う」という、このうえなく理想的な投資行動を実現させているのは確かです。
が、6ヶ月という期限が決まっていて、そのうえ金利などのコストがかかる「制度信用個人」においては、時として極めて多大な痛手をもたらすこともあります。中長期的な天井圏から株価が急落した際には、「下がったら買い」のスタンスによって融資残が急増し、貸株残が急減するケースが少なくありません。そこから下降トレンドが続くと、その水準が株価の戻りを強く押さえつける節目にもなってしまいます。
本書の「6ヶ月チャート」欄」では、過去6ヶ月の日足チャートとともに、出来高」欄に日証金や大証金の融資・貸株残の推移を示しています。これをチェックすることにより、その節目となりそうな水準を把握することができます。
買い残・売り残が急増したときの株価水準を把握する
個別銘柄の融資・貸株残高は日々証券金融会社が公表していますが、それがどのような推移を描いているのかを見ることができる媒体はそうはありません。投資レーダー社の『チャートブック』でも、株価の推移と東証が週1回発表する信用残高の推移は表示されているものの、日証金や大証金の融資・貸株残高は数字だけの掲載です。
本書では、掲載250銘柄のうち貸借銘柄については、日証金(大証銘柄は大証金)の融資・貸株残の推移を表示しています。おそらく、「過去半年のチャートを見て何の役に立つのか」と思った方も多いかもしれませんが、この」欄は、株価の推移を融資・貸株残と照らし合わせてで見てください。
株価が急落して融資残が激増している場合、その株価水準は、株価の戻りに際して「ヤレヤレの売り」が出やすくなる水準と捉えられます。融資残の高水準が続いていれば、その水準が強烈なレジスタンスになる可能性も考えられるところです。、 反対に、株価が急反発して貸株残が急増している場合は、その株価水準は」「ヤレヤレの買い戻し」が出やすい水準と捉えられます。よって、そこが押し目の目安にもなります。
とくに株価のトレンドが転換したような局面では、融資・貸株残の動向がその後の株価の動きを予測する重要な参考資料になってきます。ファンダメンタルズ面を重視して投資しようという腰の据わった投資家が激減していると見られる昨今であればなおのこと、融資・貸株残という需給の動きは必ず抑えておきたいデータです。