どんな指標と連れて動くのか。そこから浮かび上がる“株価の関心事”
株価は、業績そのものはもちろんですが、業績を左右するだろうと思われやすい要因に反応して買われたり、売られたりすることが多々あります。
たとえば、輸出比率の高い銘柄とって円高は業績のマイナス要因になります。そのため、為替が円高ドル安方向に動くと外需系銘柄が売られる、といった動きが当たり前のように起きています。その円高ドル安がどこまで進むのか、どれだけ業績に影響するのかなどは定かでなくても、「取りあえず売っておけ」とばかり、ひどい売られ方をすることも珍しくありません。
そうすると、「輸出比率の高い銘柄は円高ドル安になると株価が下がる」というイメージを持ってしまいそうですが、ところが、ある程度の期間内のドル円相場の推移と株価の推移との相関性を調べてみると、必ずしも、輸出比率の高い銘柄の株価がドル安に連れて下がっているわけではない例が少なからずあります。
逆に、円高ドル安には関係ないだろうと思われている流通・小売りなどの銘柄が輸出比率の高い銘柄よりも米ドルと株価の連動性が高い例も見られます。
いろいろな指標の推移と株価との相関性を見てみると、その銘柄の意外な面が発見できることもしばしばです。
この」欄では、日経平均株価・TOPIX、日本国債(JGB)先物、米ドル、ユーロ、NYダウ、ナスダック、そして国際的な商品市況の指数であるCRB指数という各種指標と、個別銘柄の株価との相関性を、過去3年のデータで調べた結果を示しています。
それぞれの指標との相関の強さは星の数で表示しています(☆マークは正相関、★マークは逆相関)。この星の数は、全上場普通株式(約3850銘柄)について相関を調べ、それぞれの区分に属する銘柄数がほぼ均等になるように決めています。
寄与度が高くても、株価指数に連れて動くとは限らない
先に、プロフィール」欄で「株価指数に対する寄与度の高い銘柄の株価の動きは、指数への影響度が大きい」と述べましたが、これは、寄与度の高い銘柄の株価が株価指数にぴったり連動して動く、ということを意味するわけではありません。
たとえば、ファーストリテイリングは日経平均株価に対する寄与度が断トツ1位です。ところが、過去3年の日経平均株価とファーストリテイリングの株価の相関性を調べてみると、相関性がほとんどないどころか、むしろ弱いながらも逆相関になっています。
つまり、日経平均株価の水準が上がったからといって、ファーストリテイリングの株価水準も上がるというわけではなく、日経平均株価の水準の変化に逆行する動きを見せる傾向がある、ということです。
となると、寄与度1位のファーストリテイリングを持っていても、日経平均株価が上昇したときにその恩恵に授かれない可能性もあると考えなければなりません。
また、たとえばNTTドコモは時価総額が第3位で、TOPIXに対する寄与度は非常に高位でありながら、TOPIXの推移との相関性は全上場銘柄の中ではかなり低い水準に位置します。
日経平均株価およびTOPIXと、個別銘柄の相関性を見ると、そうした例が決して少なくないことがわかると思います。
なお、この」欄の星の数ですが、ほとんどの銘柄(約3700銘柄)は日経平均およびTOPIXと正相関の関係にあるので(約150銘柄は逆相関)、各区分に属する銘柄数がそれぞれ約750ずつになるよう、☆5つ=相関係数が0.94以上、☆4つ=0.91〜0.94、☆3つ=0.85〜0.91、☆2つ=0.73〜0.75、☆1つ=0.73未満(>0)としています。
ちなみに、この例のホンダの場合、時価総額は全上場銘柄中6位、日経平均株価に対する寄与度も6位と、どちらも高位ですが、TOPIXよりも日経平均株価との連動性のほうが高いことがわかります。
株価水準の変動度合いを株価指数と比べてみる
日経平均株価とTOPIXについては、「β値」を同時に表示しています。
このβ値とは、それぞれの株価指数の水準が「1」動いたとき、その銘柄の株価水準はいくら動くかを表す数値です。
株価水準の変動度合いが「株価指数並み」であれば、β値は1に近く、株価指数よりも変動度合いが大きいほど、数値は大きくなります。逆に、株価指数よりも変動度合いが小さい銘柄は、β値は1以下です。
β値は、たとえば保有する銘柄をインデックス連動のETFや先物などでヘッジする際に活用できます。
ホンダの例でいうと、対日経225のβ値は1.24となっています。つまり、「日経225の水準が1動くと、ホンダの株価水準はそれより大きい1.24動く」ということですから、ホンダの投資金額の1.24倍相当額のインデックス連動商品を売れば、理論上「フルヘッジ」となります。
また、複数銘柄を保有している場合には、それぞれのβ値を把握しておくと、ポートフォリオ全体の株価指数に対する変動度合いの大きさの目安がつけられます。トータルのβ値が1より小さければ、株価が上昇してもインデックスに追いつけない可能性がある、トータルのβ値が1よりはるかに大きい場合には、ポートフォリオ全体のリスク・リターン度合いがインデックスよりもかなり高いといった見方ができます。