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『日本一やさしい 高利回り債券の見つけ方』

【仕組み債】日経リンク債のヘッジに使える「日経平均先物」

(1)「日経平均株価」という指数を対象にした先物取引

確率は高くはなくても“大損失”をカバーする手段は準備しておく

本書の2章の中で、「円建てで、しかも発行体は高格付けなのに、高利回り」の債券、「仕組み債」を紹介しています。

本書でもふれているように、この仕組み債は「債券」ではあるものの、通常の国債や社債とは全く異なるリスクがあります。

たとえば、本書で例としてあげている日経リンク債は、今どき信じられないような4%、5%といった金利がついています。ただし、「日経平均株価が予め決められた水準(ノックイン価格。たとえば、当初価格の60%など)に下がると、元本保証はなくなり、償還金額がいくらになるかは日経平均株価によって決まる、という債券(社債)です。

期間中に日経平均株価がノックイン価格以下に下がり、償還時の株価も当初よりも大幅に安ければ、この債券を買った投資家は、高い金利はもらえたとしても、償還金額が大幅に元本を下回ることになります。となれば、大きな損失になるのは言うまでもありません。

確率的に言えば、元本100%で償還する可能性のほうが高く、しかも高い金利ももらえます。しかし、確率は高くはないとはいっても、大損失となる可能性も考えておかなければなりません。

もし、日経リンク債を買うのであれば、大損失となるリスクをヘッジする手段を準備しておくことが不可欠です。

「期日に」「いまの価格で」「品物の受渡し」を約束する

本書の仕組み債の解説の中で、「仕組み債を買った投資家は、『オプションの売り手』の立場になっている」と述べています。

そのオプション取引の関連で、大阪証券取引所で取引されている「日経平均先物オプション」についてふれていますが、ここで、このオプション取引の対象(原資産)になっている「日経平均先物」について紹介しておきましょう。

コラムの中にもあるように、これが日経リンク債のリスクをヘッジする手段として使えるのです。

まず、「先物取引」についてですが、これは「予め決めた期日に」「対象としているモノを」「“いま”の値段で」「買い受ける、または、売り渡す」という約束だけをする取引です。

たとえば、いま1万円で取引されている品物があるとします。期日は3ヶ月後です。

いま先物を買った人は、3ヶ月後の期日にその品物の値段がいくらになっていようとも、“いま”の価格「1万円」でこれを買い取ります。

他方、いま先物を売った人は、期日に品物の値段がいくらになっていようとも、「1万円」でこれを売り渡します。

“いま”の時点では、約束するだけで、お金や品物のやり取りはしません。とはいえ、期日に約束を破られては困りますから、先物を売買する際には、事前に担保(証拠金)を差し入れる決まりになっています。

その証拠金の額は、品物の値段よりもはるかに小さい金額です。よって、少ない手持ち資金で、その何倍もの値段の品物をいまのうちに売買しておくことができます。これが先物取引の大きな特徴です。

先物取引の損益は将来の「値上がり」「値下がり」で決まる

3ヶ月後の期日がきたとき、約束の決済、すなわち、お金と品物の受け渡しをします。

もし、品物の値段が1万2000円に上昇していた場合、先物を買っていた人は、先物を売っていた人から1万円でこれを買うことができます。

いま1万2000円のものが1万円で買えるのですから、先物を買っていた人は2000円分得します。

逆に、先物を売っていた人は、いま売れば1万2000円のものを1万円で売らなければならないので、2000円分の損です。

品物の値段が期日に8000円に値下がりしていた場合には、逆に、先物を1万円で買っていた人は2000円分の損、先物を1万円で売っていた人は2000円分得します。

先物取引の決済では、実際にお金と品物を約束した値段で売り渡しするほかに、期日の品物の値段と、先物を売買した価格との差額だけをやり取りする方法もあります。

期日の品物の値段が1万2000円ならば、先物を1万円で買った人は2000円分を受け取り、先物を1万円で売っていた人は2000円分を支払います。

期日の品物の値段が8000円ならば、先物を1万円で買っていた人は2000円分を支払い、先物を1万円で売っていた人がその2000円分を受け取るという格好です。

この差額だけのやり取りは、差金決済と呼ばれます。

日経平均先物取引の決済は「差金決済」のみ

先物取引はいろいろなモノを対象に行われています。大豆や原油など、商品先物はよく知られていますが、「日経平均株価」という株価指数を対象とした先物取引もあります。

それが「日経平均先物」です。

日経平均先物取引では、証拠金を差し入れたうえで、「期日に」「“いま”先物市場で取引している値段で」「日経平均株価を」「買う、または売る」という約束だけをします。大阪証券取引所に日経平均先物市場があり、期日までの間、この市場の買い手と売り手との間で価格が形成されます。

期日は3月、6月、9月、12月の第2金曜日で、この日の日経平均株価の採用225銘柄の始値をもとに算出した株価(特別清算指数(SQ値))で決済が行われます。

決済するといっても、日経平均株価は「モノ」ではないので、お金と品物のやり取りはできません。よって、決済方法は差金決済のみです。

また、期日を待たずに、日経平均先物市場で「先物を買った人は売り」「先物を売った人は買い戻し」という反対売買で取引を決済することもできます。

次は、(2)日経平均株価、日経平均先物オプション取引との関係とは、です。

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