(2)日経平均株価、日経平均先物オプション取引との関係とは
日経平均先物が「1枚」という単位で取引されます。
1枚の取引額は日経平均先物の取引価格の1000倍。取引価格が1万円なら、1枚あたり取引額は1000万円です。
とはいえ、取引をするのに「1枚あたり1000万円」の現金が必要なわけではありません。
先述したように、先物を売買するときにはお金と品物のやり取りをするわけではなく、「将来の期日に受け渡しをする約束」だけをします。
ですから、先物を売買する段階では、その将来の約束を履行する担保として証拠金だけを差し入れます。
必要となる証拠金額については、その基準となる額(SPAN証拠金)を大阪証券取引所が示していて、定期的に見直しを行っています。
各証券会社はそれをもとに、それぞれ自社の証拠金基準を決めています。インターネット専業証券の場合、2011年3月23日時点で1枚あたり30万円程度です。言い換えると、30万円の証拠金を差し入れれば、その30倍以上の1000万円相当の取引ができるということです。
大阪証券取引所には、日経平均先物の取引額を10分の1とした「日経平均ミニ先物」という市場もあります。
ミニ先物の取引単位は「1枚あたり取引価格の100倍」。取引価格が1万円ならば「1枚あたり100万円」。証拠金額も日経平均先物の10分の1で、インターネット専業証券の場合、3月23日時点では3万円程度 です。
注意!このたびの地震に端を発した市場の乱高下により、2011年3月28日の週は、SPAN証拠金 がラージ99万円、ミニ9万9千円と、前週の3倍以上になっています。
本書の2章に登場した「日経平均先物オプション取引」は、期日(毎月第2金曜日)に日経平均先物を「○○○○円で買う権利」「××××円で売る権利」を売買する取引です。
日経平均株価が1万円のときに、「来月の期日に日経平均先物を9500円で売る権利」、すなわち、権利行使価格9500円のプット・オプションの例を考えてみましょう。
このプット・オプションの価格(オプション料)が「1枚あたり75円」とします。
実際の取引額は日経平均先物と同じ、1枚あたりその1000倍の7万5000円。つまり、このプット・オプションを1枚買う人は、7万5000円を支払って、翌月の期日に日経平均先物1枚を9500円(取引額は950万円)で売る権利を得ることになります。
期日には、売買しているオプションの決済が行われます。この決済では、先ほど見た日経平均先物と同じように、その日の日経平均株価の採用225銘柄の始値をもとに算出した株価(特別清算指数(SQ値))が用いられます。
たとえば、SQ値が9244円だったとしましょう。
権利行使価格9500円のプット・オプションを買っている人は、この期日に、日経平均先物を9500円で売ることができます。
ここで、「いま9244円で日経平均株価を買って9500円で売ることができる」と捉えると、その差額の256円分が利益になります。
1枚の取引額はその1000倍ですから、額にすると1枚あたり25万6000円。期日の決済では、この「1枚あたり25万6000円」を受け取る形になります。
プット・オプションを買うときに支払ったオプション料の「1枚あたり7万5000円」を考慮すると、1枚あたり18万1000円の利益です。
ところで、「1枚あたり25万6000円」を支払うの誰かといえば、権利行使価格9500円のプット・オプションを売っていた人です。
この人は、プット・オプションを売ったときに、「1枚あたり7万5000円」のオプション料を受け取っています。よって、差し引きすると、18万1000円の損失です。
なお、SQ値が権利行使価格の9500円以上だったときには、このプット・オプションの権利を行使しても意味がありません。
よって、プット・オプションの買い手は権利を放棄します。
他方、プット・オプションの売り手は、権利行使に応じる必要がないので、権利を売ったときに受け取ったオプション料「1枚あたり7万5000円」がまるまる利益になります。
次は、(3)「日経平均ミニ先物」1枚で日経リンク債1単位のヘッジが可能、です。