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【仕組み債】日経リンク債のヘッジに使える「日経平均先物」

(3)「日経平均ミニ先物」1枚で日経リンク債1単位のヘッジが可能

オプションの売り手は日経平均先物「売り」がヘッジ策に

オプションの売り手は「買い手が権利行使して意味のある状況」にならなければオプション料がまるまるもらえる反面、買い手が権利行使してきたときには、どんなに不利な状況であってもそれに応じなければなりません。

先ほどの「権利行使価格9500円のプット・オプション」の例で言えば、期日の日経平均株価(SQ値)が、たとえば8300円にまで暴落していた場合には、権利行使価格との差額1200円分、取引額にして1枚あたり120万円という大きな額を支払う義務を負います。

プット・オプションの売り手は、期日の日経平均株価が権利行使価格よりも安ければ安いほど損失はどこまでも拡大します。

これがオプションの売り手が抱えているリスクです。

この損失拡大を防ぐヘッジ策となりうるのは「日経平均株価が下がると利益が出るもの」、最も端的な手段が、日経平均先物の「売り」です。

たとえば、当初1万円だった日経平均株価が権利行使価格の9500円まで下がったとき、日経平均先物を9500円で売ったとします。

期日の日経平均株価が8300円とすると、プット・オプションの売りでは1200円分を支払いますが、他方で、日経平均先物の「9500円で売り」のほうからは1200円分の利益が出ます。これを相殺すれば損益ゼロです。そうすると、プット・オプションを売ったときに受け取ったオプション料をまるまる利益として確保できます。

この考え方は、ノックイン型の日経リンク債にも応用できます。

本書の中でも述べているように、日経リンク債を買った人は「オプションの売り手」であり、日経平均株価がノックイン価格をつけた瞬間、権利行使価格(当初の日経平均株価)で日経平均株価を買い取る、という義務が発生します。

つまり、この時点で、権利行使価格とノックイン価格との差額分、ノックイン価格が「当初価格の60%」ならば、40%もの損失が一挙に表に出てくるのです。

そのときに、日経平均先物(またはミニ先物)を売っていれば、先物の売値よりも日経平均株価が安くなっている値幅分は利益になります。

それによって、日経リンク債の損失分がカバーでき、一方で日経リンク債の金利分だけを確保できる、という状況も考えられるわけです。

日経リンク債の額面金額が100万円であれば、ミニ先物1枚とほぼ取引額は同じになります。ということは、日経リンク債1単位を買って、ミニ先物を1枚売れば、日経平均株価の下落はリスクではなくなる、という 格好です。

株価が上がって「早期償還条項」に当たると損が出る可能性も

ただし、逆に日経平均株価が値上がりすれば、先物で損失が出ます。その一方で、日経リンク債は当初価格よりも値上がりしても償還金額は増えません。つまり、日経平均株価が上昇する状況になれば、先物の損失だけが拡大することになります。

ですから、先物の「売り」を手仕舞うタイミングや先物のロスカットの水準には十分に留意しなければなりません。

とくに、「早期償還条項」という特約がついている場合には注意が必要です。

近年販売されている日経リンク債のほとんどにこの特約条項がついているのですが、これは、各利払い日の数営業日前を「株価判定日」として、「その判定日に日経平均株価が当初株価の何%以上であれば、直後の利払い日で期限前償還する」という内容です。

この特約条項は、本書の中でも紹介している「ノックアウト・オプション」と言われるもので、これが付いていると、原資産(この場合は日経平均株価)が予め決めた水準に達した場合には、買い手の権利が消滅します。

つまり、株価がこの条項にある水準以上に上昇したら、そこで「ゲームオーバー」となり、その後の株価がいくらであっても、次の利払い時に元本100%で償還するのです。

早期償還条項が付いた日経リンク債では、この条項が適用される水準として「当初株価の105%」とするものが多く見られます。

たとえば、当初の日経平均株価が1万円とすると、判定日の株価が1万500円以上であれば、直後の利払い日に金利をもらうと同時に元本100%で償還します。

株式市場が好調なときには、このノックアウト条項にヒットして、1回か2回の利払いをもらって早期償還する、というパターンがほとんどになると予想されます。

その状況下では、日経平均先物「売り」は損失を出します。

当初株価で先物を売っていた場合、早期償還決定時の株価がそれよりも高い値幅分が損失です。その額が、受け取る利払いよりも大きければ、 “ヘッジ損”が出てしまいます。

よって、「日経リンク債を買うのと同時に日経平均先物を売っておけば、ノーリスクで高い金利分だけまるまる儲かる」という単純な話にはなりません。

早期償還条項が付いていることを考えれば、ヘッジの先物「売り」を出動する状況やタイミングも十分に検討することが不可欠です。

たとえば、何か非常に大きな状況変化が起きて日経平均株価が急落したり、下がり続ける状況になったりした場合などは、まさに検討に値します。

その下落の途中ででも日経平均先物なりミニ先物を売っておけば、日経リンク債が大損失を出す事態をカバーする策になります。完全なヘッジはできないとしても、 緊急避難的な手段になるのは確かです。

そうしたリスク避難策を事前に講じておくことは、日経リンク債に限らず、投資をする際には非常に重要です。それが、中長期的に資産を守り、増やすために大きな役割を果たすと思います。

【仕組み債】日経リンク債のヘッジに使える「日経平均先物」は、以上です。

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