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2015年11月12日発売!
日経平均の読み方・使い方・儲け方

【高速取引】その極端な値動きを利益に変える3つの方法<1>

方法その1は「超安サポート水準で待ち伏せる」

10月30日の株式市場は、ずいぶんよく動いてくれました。日銀政策決定会合の「現状維持」に失望して先物が爆下げしたかと思ったら急戻し。12時20分からの5分足は高安値幅が240円の超大な“往って来い”をやっています。その20分後、3兆円超の補正予算編成報道が出て、今度は棒上げ。13時35分までの上げ幅は440円です。

この先物の動きに付き合って激しく売り買いされていた銘柄も多々あったようですが、その渦中に入って利益を狙おう、などということは考えないのが得策です。何しろ取引のスピードが速く、瞬時に上げたり下げたり、極端な値動きをすることも珍しくありません。よほど強者の専業トレーダーなら別かもしれませんが、分足チャートを見ながらの手発注では、とてもじゃありませんがついていけないでしょう。

今日の市場環境の中で利益をあげるうえでの目の付けどころのひとつは、先物主導や高速取引に立ち向かうのではなく、その極端な値動きに巻き込まれずに、その極端な値動きの恩恵をもらうことにあると思います。これまで、当サイトや拙著を通じてその具体策を考えてきましたが、その中で浮上した方法は3つあります。今回は、方法その1「超安サポート水準で待ち伏せる」作戦を取り上げます。

この方法には2つの視点があります。ひとつ目は、市場全体がよい、あるいは、地合いは悪くないと判断されるときに、先物の値動きとはあまり関係のなさそうな銘柄を対象にする、というものです。

当サイトで毎日引け後に「珍妙チャート」の銘柄リストを更新しています。その中の長い下ヒゲ銘柄の歩み値を見ると、同じ時刻にまとまった株数の売り物が出てきた結果、その売り物だけで株価が瞬時に急落し、直後に急上昇している例が少なくありません。

その出来値は、買い板に入っている(あるいは、板が開いたところに入ってくる)各値段の注文1つ1つにぶつけているような形になっています。こうした売り注文は、コロケーション・エリアからの高速発注プログラムによるもの可能性があります。成行でまとまった売り注文を出すと出来値がいくらになるかわからない、売り板に注文を乗せておけば、まとまった売り物があることがバレて約定する前に値下がりしかねない、ということを警戒していると推測されますが、売り注文を小分けにスライスして、買い板に乗っている株数ずつ、順次に、確実に売っていく、というやり方です。それが極めて高速で行われていれば、秒単位の約定時刻は全て同じになります。この値動きは目視不可です。

そうして売りたい注文数が約定した暁には、買い板と売り板が大きく離れています。そこで売り板を取る買い手が出てくれば、途端に株価は戻し、ローソク足は長い下ヒゲを描きます。ちなみに、コロケーション・サービスを利用した高速取引に関しては、一部報道で「取引量の多い大型株が対象で、個人投資家が取引するような中小型株は対象にしない」というコメントが出ていたことがありますが、これは事実ではありません。間違いなく、板の薄い中小型株や新興株も対象にしています。

さて、この長い下ヒゲ銘柄で注目したいのは、下ヒゲの先端です。前日時点の株価水準からするとだいぶ安い、しかも、非常にわかりやすい(=市場参加者から意識されやすい)サポート水準にタッチしている例が、これまた少なくありません。あたかも、まとまった売り注文を出した参加者が「この辺りまでの値段で売り下がろう」と目印にしていた、その一方で、「この水準まで下げたら買い出動」というストラテジーの参加者がいたかのようです。

この下ヒゲの先端近辺で買えたとすれば、その日の引け時点で既に結構な利益が出ていることになります。これを目指そうというのが、安く、かつ、わかりやすいサポート水準に指値を入れて待ち伏せる方法です。これは、コロケーション・エリアからの高速発注(であろうと推測される)が目視不可の瞬く間に形成してくれる安値を有り難く頂戴する策とも言えます。買う候補銘柄があるならば、まず、今日はとても約定しそうもない、と思うくらいに安い、かつ、わかりやすいサポート水準を探してみてください。


先行きの下ヒゲ銘柄を探すヒントは「今日の下ヒゲ銘柄」にある

おそらく、珍妙チャート情報を見ている方の中には、「今日下ヒゲを描いた銘柄を後になって知ったところで仕方がない。明日長い下ヒゲを描きそうな銘柄が知りたい」という方もいることでしょう。

長い下ヒゲ銘柄のチャートを日々チェックしていますが、残念ながら、それらに共通する何かがあるようには見えません。ただ、長い下ヒゲ銘柄リストに載った銘柄が、その翌日や2.、3日後に再びリストに載る例にはしばしば出会します。

短期間のうちに長い下ヒゲが複数回描かれる背景として考えられるのは、売りたい株数を分割して売っている参加者の存在です。たとえば、それほど取引高の多くない銘柄を3万株売りたい参加者がいたとします。1日でそれを全部売ったらとんでもない安値になると考えた場合、まず、ある日に1万5000株を売り、少し時間をおいて残りを売る、という行動に出ることは十分あり得ます。実際のところは、どういう経緯なのかは解明できませんが、長い下ヒゲ銘柄リストに載った銘柄に指値を入れてみるのはひとつの手です。その下ヒゲが意識されやすいサポート水準に達していなければ、そのサポート水準に指値する。あるいは、その下ヒゲの先端がある移動平均の水準近辺にあるならば、その移動平均がサポートとして意識されていると想定して、同じ移動平均の水準を目安に指値を入れておく、といった方法などが考えられます。

安いサポート水準に指値を入れる際に注意したいのは、第一に、その銘柄のトレンドです。長い下ヒゲ銘柄リストには、下降トレンドの中にある銘柄も入っています。「安値圏で長い下ヒゲ」は下げ止まりを示唆する強気シグナル、などと解釈されることがありますが、それとは逆のことになっているケースが相当数観測されます。むしろ、下降トレンドの中にある銘柄の下ヒゲは、その後に進む方向を示唆する矢印だと考えたほうがよいと思います。安いサポート水準に指値を入れておく銘柄は、トレンドがよい銘柄、あるいは、トレンドの好転が見込める銘柄に限ります。


市場急落時には、まず日経平均のサポート水準を探す

もうひとつ重要な注意点は、市場全体の本格的な調整局面入り、たとえば世界市場が急落するような事態が起きたときには、かなり痛い結果になるリスクがあることです。平時であれば、先物の動きには関係のないような銘柄でも、こうした事態になれば、先物(市場全体)の影響は免れられません。となれば、それまでの株価水準からすれば安いサポートだと思った水準では下げ止まらず、買い指値をぐっさり貫通して、含み損がたちまちのうちに拡大してしまうことも予想されます。

市場が急落したとき、それがどの程度続くものなのかは事前にはわかりませんが、とにもかくにも、未約定の買い指値は、当然ながら即座に全キャンセルです。キャンセルが間に合わず約定した買いポジションは、ごく目先的な戻しを捉えるなど、できうる限り早期に手仕舞いたいのは言うまでもありません。それまでのトレンドが良好で、下げれば買いが入ってきた長い下ヒゲ銘柄ならば、市場急落時の初期段階で一旦戻す動きが出る可能性はあります。

急落の初期段階で手を打っておけば、その後、先物に引っ張られて大方の銘柄がみるみる下げる展開になってもダメージは抑えられます。と同時に、市場が下げ止まって落ち着いたときに、中トレンドレベルの、より安いサポート水準で買う余力も確保されます。この中トレンドの下げ止まり局面を狙うというのが、超安サポート水準で待ち伏せる方法の二つ目の視点です。

まず確認しておくべきは、日経平均株価がどの辺りで下げ止まると予測されるのか、中トレンドレベルの強そうなサポートの位置です。そこで下げ止まるならば、中トレンドレベルでの調整がひとまず終了したと解釈されます。その後、もとの上昇トレンドに復帰するかどうかはその時点ではわかりませんが、調整終了からの反発局面は狙えます。買う対象としては、日経平均に連動するETFでももちろんよいですし、日頃から先物に連れて売り買いされやすい主力銘柄、日経平均との相関性が高い銘柄の多くも、日経平均株価とともに反転することが見込めます。そうした銘柄を待ち伏せる場所が「日経平均のサポート水準」というわけです。

では、それは一体どこなのでしょうか。ここで現状をチェックしておきましょう。

現在の日経平均株価は、7月9日の安値(サポート)が8月にギャップでブレイクされて強いレジスタンスになった水準にあります。このレジスタンスを抜けるかどうかが現状の第一の焦点で、抜けた場合には、この1万9000円処が第一のサポートになります。もし、このレジスタンスをギャップアップか、もしくは大陽線によって、スカッと一気に気持ちよく飛び抜ける動きが出たとすれば、その先の強いサポート水準になることも考えられます。

ただし、このレジスタンスを抜けた後にも堅そうな壁があります。8月20日と21日の間に形成されたギャップ(2万33円―1万9737円)で、これが第二のレジスタンス水準です。現状のレジスタンスを抜けない、あるいは、抜けたとしても、この第二のレジスタンスまでで強い下げに転じた場合には、現在までのところ温存されている10月22日と23日のギャップ1万8500円処のサポート水準では止まらないことも予想されます。

その場合、その下のサポートはどこになるのか、週足チャートで中期的なトレンドを見てみます。

8月後半から9月にかけての急落の安値となった1万6901円(9月29日)は、ちょうど1年前、日銀の追加緩和策の発表で爆上げした後に形成されたサポート水準です。14年10月31日と11月4日の間に形成されたギャップは、12月から1月にかけて下押ししたときにも温存されていますから、このサポート水準はかなり強いと見られます。また、このギャップの下値(10月31日の高値)の1万6500円処は、13年12月と14年9月の高値水準でもあり、これも強そうです。もし、日経平均株価が今年8月の急落以前の高値水準に至らずに再び急落があった場合には、現状でいえば、この1万6500円から1万7000円が注目を要するサポートゾーンです。

なお、このサポートゾーンで下げ止まらなかったときには、もはや大トレンドが転換した可能性を考える必要があります。理論的には、14年10月17日の安値1万4529円を下回らなければトレンドが反転したとは言えない、という解釈になりますが、このサポートゾーンはおそらく多くの参加者が意識しています。これをブレイクするような下落は、市場のセンチメントを大幅に悪化させるでしょう。また、参加者の損益も悪化し、先行きの需給も悪化します。この状況になることが、日経平均の超安サポート水準で待ち伏せる最大のリスクです。よって、待ち伏せ買いを実践する場合には、このゾーンがブレイクされる事態になったときの処理策も事前に考えておくことが不可欠です。


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