4月、5月とひどい売られ方をしてきた日経平均株価ですが、6月4日の8238.96円でひとまず「目先反転か」という声も出てきています。とはいっても、SQ日の日経平均先物の下げ方たるや、あれは何なのでしょうか。あのような動きを見ると、「まだ下があるのではないか」との印象も否めません。
この6月4日の安値が目先の底なのかどうかは、もちろん後々にならないと判断できません。ただ、「8238.96円」という株価水準は、大震災直後の3月15日の安値「8227.63円」とほぼ同水準である点は、ひとつの注目点といえます。
テクニカル分析の大前提のひとつに「市場の動きは全てを織り込んでいる」というものがあります。市場の動き(株価、出来高、信用建玉など)は、業績や景気動向をはじめ、政治的要因も、市場参加者の心理も、自然災害や社会的事件、その他もろもろ、「全て」の要因を織り込んだ結果である、という前提です。
もちろん、これは「株価は、大震災や原発の爆発が起きることを事前に予知して動いていた」ということではありません。市場の動きとは何かといえば、需要(買い手)と供給(売り手)の力関係の結果です。需要が供給を上回れば価格は上がり、供給が需要を上回れば価格は下がります。市場は、大震災が起こることなど予知はしていませんでしたが、大震災が起きると、直ちに供給が需要を大幅に上回るという形で「大震災」を織り込む動きとなり、「8227.63円」まで株価が急落したわけです。
そして、8227.63円という株価水準で下げ止まって上昇に転じました。つまり、8227.63円は需要が供給を上回った株価水準ということです。
ということは、震災前、日経平均株価は1万円を超える水準にありましたが、実は、「8227.63円」という水準まで株価を下げるくらいの潜在的な供給圧力が存在していて、それが大震災という突然の事態によって噴出した、とも解釈できます。これは、潜在的な供給圧力を飲み込み得る需要が存在する株価水準が「8227.63円」だった、ということでもあります。
そうすると、もし、株式市場の価値が大震災当時と比べて毀損していない、需要も増えていないが供給圧力も増えていないとすれば、その後、株価が下がった場合でも8227円程度までだろう、という予測ができます。これが、テクニカル分析における予測の基本型です。
実際にその後どうなったかというと、11年11月25日に8135.79円という安値をつけています。「8227円」を割り込んでしまってはいますが、とはいえ、8227円を割り込んでから下げが加速したという動きではありません。大震災直後よりも明らかに市場の環境が悪化し、供給圧力が増していたならば、あの程度の安値では済まなかったはずです。とすると、少なくとも昨年までの時点では、潜在的な供給圧力は8200円前後の水準まで、と考えられます。
現時点の日経平均株価がその水準に来ています。昨年と比べて市場の価値が毀損していない、市場参加者のセンチメントが大震災当時と比べて著しく悪化していないのであれば、この水準から株価が大きく下げる可能性は高くはない、と予測されます。
果たしてどうなのでしょうか。先行きのことはわかりませんが、需給が悪化していないのであれば、この水準辺りで下げ止まって反発する、需給が悪化していれば、この水準を割り込んで下げが加速する、という2つのシナリオを描くことはできます。後者のシナリオになった場合には「即、撤退」を確実に実行するのであれば、この水準で逆張り的な買いも検討してよいかもしれません。あるいは、後者のシナリオが現実化したところで、順張りのショートというやり方もあります。
個別銘柄の昨年来の値動きを見てみると、大震災直後の安値が最安値となっていて、まさに現在、その水準スレスレまで株価が下がっている銘柄が少なくありません。
コード | 銘柄名 | 6/8 引値 | 震災安値 | 2011年 |
---|---|---|---|---|
1332 | 日本水産 | 207 | 203 | 3/15 |
7756 | 日本電産コパル | 775 | 756 | 3/17 |
9432 | 日本電信電話 | 3305 | 3220 | 3/15 |
8793 | NECキャピタルソリューション | 916 | 889 | 3/15 |
7739 | キヤノン電子 | 1660 | 1608 | 3/15 |
5451 | 淀川製鋼所 | 282 | 273 | 3/15 |
4116 | 大日精化工業 | 307 | 297 | 3/15 |
6023 | ダイハツディーゼル | 259 | 250 | 3/15 |
8367 | 南都銀行 | 313 | 302 | 3/15 |
3036 | アルコニックス | 1402 | 1352 | 3/15 |
8332 | 横浜銀行 | 352 | 339 | 3/15 |
6436 | アマノ | 635 | 610 | 3/15 |
8418 | 山口フィナンシャルグループ | 627 | 600 | 3/15 |
8078 | 阪和興業 | 285 | 272 | 3/15 |
2607 | 不二製油 | 1012 | 964 | 3/15 |
3941 | レンゴー | 435 | 414 | 3/15 |
8282 | ケーズホールディングス | 1895 | 1801 | 3/15 |
2327 | 新日鉄ソリューションズ | 1354 | 1280 | 3/15 |
7988 | ニフコ | 1781 | 1679 | 3/14 |
5007 | コスモ石油 | 191 | 180 | 3/15 |
8905 | イオンモール | 1571 | 1480 | 3/15 |
8343 | 秋田銀行 | 204 | 192 | 3/15 |
2810 | ハウス食品 | 1248 | 1174 | 3/15 |
7581 | サイゼリヤ | 1172 | 1101 | 3/15 |
1379 | ホクト | 1598 | 1500 | 3/15 |
3333 | あさひ | 1140 | 1070 | 3/15 |
4022 | ラサ工業 | 80 | 75 | 3/15 |
1969 | 高砂熱学工業 | 604 | 566 | 3/15 |
2002 | 日清製粉グループ本社 | 880 | 824 | 3/17 |
4401 | ADEKA | 646 | 604 | 3/15 |
8331 | 千葉銀行 | 442 | 413 | 3/15 |
8173 | 上新電機 | 768 | 717 | 3/17 |
8342 | 青森銀行 | 225 | 210 | 3/15 |
2897 | 日清食品ホールディングス | 2925 | 2730 | 3/15 |
6504 | 富士電機 | 178 | 166 | 3/15 |
9433 | KDDI | 494000 | 460500 | 3/15 |
5301 | 東海カーボン | 335 | 312 | 3/15 |
8361 | 大垣共立銀行 | 241 | 224 | 3/15 |
2670 | エービーシー・マート | 2746 | 2550 | 3/15 |
4023 | クレハ | 312 | 289 | 3/15 |
2201 | 森永製菓 | 174 | 161 | 3/15 |
9022 | 東海旅客鉄道 | 623000 | 575000 | 3/15 |
1377 | サカタのタネ | 1062 | 980 | 3/15 |
5715 | 古河機械金属 | 64 | 59 | 3/15 |
7984 | コクヨ | 549 | 506 | 3/15 |
8248 | ニッセンホールディングス | 352 | 324 | 3/15 |
8097 | 三愛石油 | 339 | 312 | 3/15 |
8354 | ふくおかフィナンシャルグループ | 284 | 261 | 3/15 |
1515 | 日鉄鉱業 | 295 | 271 | 3/15 |
5186 | ニッタ | 1243 | 1141 | 3/15 |
6454 | マックス | 901 | 825 | 3/15 |
4665 | ダスキン | 1464 | 1340 | 3/15 |
9936 | 王将フードサービス | 1850 | 1691 | 3/15 |
7516 | コーナン商事 | 985 | 900 | 3/15 |
3092 | スタートトゥデイ | 1040 | 949 | 3/15 |
3106 | クラボウ | 137 | 125 | 3/15 |
8252 | 丸井グループ | 549 | 500 | 3/17 |
6457 | グローリー | 1490 | 1355 | 3/15 |
4461 | 第一工業製薬 | 220 | 200 | 3/15 |
4041 | 日本曹達 | 285 | 259 | 3/15 |
2001 | 日本製粉 | 333 | 302 | 3/15 |
9684 | スクウェア・エニックス・HD | 1182 | 1070 | 3/15 |
9064 | ヤマトホールディングス | 1223 | 1107 | 3/17 |
2215 | 第一屋製パン | 73 | 66 | 3/15 |
8184 | 島忠 | 1595 | 1442 | 3/15 |
5108 | ブリヂストン | 1666 | 1506 | 3/15 |
7013 | IHI | 155 | 140 | 3/15 |
9302 | 三井倉庫 | 278 | 251 | 3/15 |
1334 | マルハニチロホールディングス | 113 | 102 | 3/15 |
3864 | 三菱製紙 | 71 | 64 | 3/15 |
9076 | セイノーホールディングス | 517 | 466 | 3/15 |
5947 | リンナイ | 4940 | 4450 | 3/15 |
昨年の安値水準を辛うじてでも割り込んでいない銘柄は、少なくとも現時点まで、株式の価値が大きく毀損していたり、供給圧力が大幅に増えているわけではないとも捉えられます。
いくつか例を見てみましょう。
これらの銘柄例に限らず、ここから反発するにしても、昨年安値を割り込むにしても、この水準でしばらくもみ合う動きになる可能性もあります。売買を急ぐ局面ではないと思われるので、市場全体がどう動くかを見据えつつ、逆張り的な買い出動か、順張りの売り出動か、じっくり検討してみてください。
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