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【チャートWatchingその2】「5月高値」に肉薄する銘柄

市場の実態は「強くはないが、弱くもない」

案の定と言うか、実にスッカスカな1週間でした。225先物たるや、ナイト・セッションかと思うほどの閑散ぶり。薄い板に乗じて上げてみたかと思えば、急角度で下げてみたり、5日間の分足チャートはシャクトリムシのような形になっています。

個別銘柄の一部には、週初やる気を漲らせていたものもありましたが、そのやる気も続かず。寄り付き直後こそ値を伸ばすものの、次第に滞空時間は短くなり、週末の10時以降は取引も激減して動かなくなってしまうような例もありました。

改めて日経平均株価の日足チャートを見てみれば、7月19日以降、上値は着実に切り下がっています。『信用取引の始め方・儲け方』の「おわりに」でも書いていますが、現状、5月の高値がピークだった可能性が否定できません。主力銘柄の中には、「もう相場は終わったしまったのではないか」とも思えるような動きになっているものもあるのが実情です。

とはいえ、市場全体の実態が悪化しているのかというと、そこまでは言えないようです。たとえば、7月1日以降の高値・安値更新銘柄数を見てみると「過去1年来」では、高値を更新する銘柄数のほうが上回り続けています。

図表4:高値・安値更新銘柄数
2013年     一年(12ヶ月)
日付 日経225 前日比 高値更新 安値更新
7月1日 13852 175△ 35 3
7月2日 14099 246△ 56 1
7月3日 14056 43▼ 42 1
7月4日 14019 37▼ 37 0
7月5日 14310 291△ 53 3
7月8日 14109 201▼ 77 1
7月9日 14473 364△ 57 1
7月10日 14417 56▼ 85 0
7月11日 14473 56△ 50 2
7月12日 14506 34△ 69 6
7月16日 14599 93△ 102 2
7月17日 14615 16△ 67 0
7月18日 14808 193△ 82 2
7月19日 14590 219▼ 70 3
7月22日 14658 68△ 61 1
7月23日 14779 120△ 63 2
7月24日 14731 47▼ 75 1
7月25日 14563 168▼ 68 1
7月26日 14130 433▼ 37 3
7月29日 13661 469▼ 24 8
7月30日 13870 209△ 23 7
7月31日 13668 202▼ 29 9
8月1日 14006 337△ 32 10
8月2日 14466 460△ 53 3
8月5日 14258 208▼ 51 3
8月6日 14401 143△ 59 2
8月7日 13825 576▼ 41 4
8月8日 13606 219▼ 33 8
8月9日 13615 10△ 30 8
8月12日 13519 96▼ 27 8
8月13日 13867 348△ 25 3
8月14日 14050 183△ 46 3
8月15日 13753 297▼ 43 4
8月16日 13650 103▼ 30 5

また、当欄の8月12日付け情報でも紹介したように、8月に入ってから「解散総選挙」以降の高値を更新している銘柄も多数。さらに、意欲の片鱗も感じられないこの相場状況にも関わらず、5月の高値に迫る動きを見せている銘柄もあります。

図表5:「5月高値」の85%戻し銘柄リスト
コード 銘柄名 業種 8/16
引値
戻し
高値
日付
高値
3800 ビーエスピー 情報・通信 1823 99 5/13 1830
3644 1stホールディングス 情報・通信 876 99 5/10 880
2659 サンエー 小売業 5110 96 5/13 5200
6472 NTN 機械 384 95 5/22 398
6383 ダイフク 機械 1008 95 5/23 1043
6282 オイレス工業 機械 2233 94 5/15 2280
4912 ライオン 化学 626 94 5/20 640
7541 メガネトップ 小売業 1395 94 5/8 1425
7294 ヨロズ 輸送用機器 1841 93 5/15 1902
5976 ネツレン 金属製品 815 92 5/22 848
2492 インフォマート サービス業 2368 91 5/9 2545
4202 ダイセル 化学 889 91 5/22 933
7564 ワークマン 小売業 3780 91 5/21 3970
6801 東光 電気機器 323 91 5/21 338
9719 SCSK 情報・通信 2275 90 5/15 2376
9767 日建工学 サービス業 178 90 5/14 189
4113 田岡化学工業 化学 188 90 5/22 191
5453 東洋鋼鈑 鉄鋼 363 90 5/14 381
6718 アイホン 電気機器 1664 90 5/8 1716
5816 オーナンバ 非鉄金属 440 90 5/21 460
4333 東邦システムサイエンス 情報・通信 683 90 5/10 715
6504 富士電機 電気機器 376 90 5/23 401
6908 イリソ電子工業 電気機器 2952 90 5/28 3170
7819 SHO−BI その他製品 436 90 5/10 444
7732 トプコン 精密機器 1258 90 5/15 1350
5632 三菱製鋼 鉄鋼 277 90 5/21 294
3664 モブキャスト 情報・通信 2240 89 5/8 2400
7213 レシップホールディングス 輸送用機器 878 89 5/13 898
4205 日本ゼオン 化学 1185 89 5/20 1260
4061 電気化学工業 化学 391 89 5/15 409
7220 武蔵精密工業 輸送用機器 2689 89 5/16 2837
5482 愛知製鋼 鉄鋼 492 89 5/23 520
5288 ジャパンパイル ガラス・土石製品 701 89 5/8 749
3065 ライフフーズ 小売業 223 89 5/17 230
8200 リンガーハット 小売業 1482 88 5/15 1542
4917 マンダム 化学 3575 88 5/8 3770
6358 酒井重工業 機械 326 88 5/15 340
9810 日鐵商事 卸売業 311 88 5/22 330
7233 自動車部品工業 輸送用機器 550 88 5/14 593
4215 タキロン 化学 414 88 5/22 435
5451 淀川製鋼所 鉄鋼 431 88 5/15 457
6463 TPR 機械 1825 88 5/15 1970
7259 アイシン精機 輸送用機器 3975 88 5/23 4245
7917 藤森工業 化学 3370 88 5/21 3575
1860 戸田建設 建設業 311 87 5/23 329
6118 アイダエンジニアリング 機械 824 87 5/20 869
7203 トヨタ自動車 輸送用機器 6290 87 5/23 6760
8127 ヤマト インターナショナル 繊維製品 460 87 5/15 477
8891 エムジーホーム 不動産業 102000 87 5/17 106200
6294 オカダアイヨン 機械 445 87 5/7 470
1323 (NEXT FUNDS)南ア ETF 353 87 5/23 363
9869 加藤産業 卸売業 2112 87 5/14 2220
6861 キーエンス 電気機器 33200 87 5/16 35100
2331 ALSOK サービス業 1880 86 5/8 2013
9740 CSP サービス業 914 86 5/9 935
7261 マツダ 輸送用機器 422 86 5/21 472
1543 純パラジウム上場信託(現物国 ETF 22950 86 5/29 24140
3407 旭化成 化学 714 86 5/22 758
7012 川崎重工業 輸送用機器 368 86 5/22 401
4217 日立化成 化学 1701 86 5/22 1809
6284 日精エー・エス・ビー機械 機械 1640 86 5/9 1839
6459 大和冷機工業 機械 605 86 5/8 648
8081 カナデン 卸売業 640 86 5/23 669
6902 デンソー 輸送用機器 4615 86 5/23 5000
5929 三和ホールディングス 金属製品 590 85 5/15 635
6995 東海理化 輸送用機器 2146 85 5/23 2356
6724 セイコーエプソン 電気機器 1341 85 5/22 1501
6201 豊田自動織機 輸送用機器 4170 85 5/16 4525
7864 フジシールインターナショナル その他製品 2898 85 5/22 3125
7942 JSP 化学 1598 85 5/22 1706
5464 モリ工業 鉄鋼 343 85 5/13 368
2410 キャリアデザインセンター サービス業 112000 85 5/14 124000
3141 ウエルシアホールディングス 小売業 5060 85 5/9 5500
6371 椿本チエイン 機械 631 85 5/22 676

図表5は、5月高値の85%以上の水準まで戻している銘柄です。マーケット情報にはあまり出てこないような渋めの銘柄が結構健闘しているようです。日経平均株価は弱い動きのように見えますが、市場の実態としては、「強い」などとは到底言えないにしても、悲観するほど弱くもない、と解釈してよいのではないでしょうか。(これらの銘柄のチャートを一気にチェックするには、≫130818_chart.zip ZIP ファイルの中にある「130818_chart.html」をウェブブラウザでご覧下さい。


過去のレジスタンスで「上値余地」を考えてみる

図表5にある銘柄の中のいくつかのチャートを見てみましょう。

このリストにある銘柄の多くは、今年5月の高値が過去4年の高値水準となっています。つまり、日足および週足チャートで言えば、「5月の高値が唯一のレジスタンス」となるわけですが、その先に強固な“壁”が存在していることもあります。

この銘柄の長期チャートを見ると、1500円前後がレジスタンスになっている様子がうかがえます。5月の高値は、「そのレジスタンスに初トライしたけれども、今一歩届かず」という感じです。この先の値動きで5月の高値を超えた場合には、このレジスタンス水準に再チャレンジする形になります。06年、07年に1500円台後半が何度もサポートになっていたこと、そして、そのサポート水準を下に抜けてしまったことからすると、5月の高値1350円を超えたとしても、1500円台後半で一旦押し戻される可能性を考えておいたほうがよさそうです。

この銘柄は、07年の高値2300円前後がレジスタンスで、5月の高値は2280円と、かなり惜しいところまで行っています。目先の上昇で5月の高値を突破するとすれば、今度は07年の高値突破を期待したくなるところです。ちなみに、この銘柄の週足チャートを見ると、今年に入ってからは日経平均株価が大きく下げた局面で26週移動平均の株価水準がサポートになっています。これから買いを検討するのであれば、その辺りを目安に指値を入れておくのも一策といえます。

「長期のレジスタンスで押し返されるだろう」という予測は、非常にベーシックなチャートの読み方です。前にもふれたように、昨今は、そうした基本的な読み方が意外と奏功するケースが少なくありません。参加者が限定的であるが故に、意識される株価水準にコンセンサスが集中しやすくなっている、ということかもしれません。

ですから、たとえば5月の高値を抜けても長期のレジスタンスからすると上値余地が限られていると見られる銘柄は、長期のレジスタンス水準まで株価が上昇した後の動きを捉えて買い出動する、という方法を検討するのもよいと思います。その銘柄のトレンドが継続するならば、レジスタンスで一旦押し戻されても、これまで意識されてきたサポート水準で下げ止まり、再び長期のレジスタンス越えにチャレンジするだろう、というシナリオが描けます。この動きの中の「サポート水準で下げ止まる」という局面が出動の目安です。

この銘柄は、今年3月に600円前後のレジスタンス水準を突破したところで反落しましたが、すぐに持ち直してそのレジスタンス水準をクリア。5月には次のレジスタンス水準と目される700円超えを達成した後に再び下げ、現在、5月の高値に迫る水準まで戻しています。5月の高値を超えた場合、次のレジスタンスは750円〜800円処と見られます。このような場合、まず、このレジスタンス水準まで上昇するかどうか、上昇した場合には上値がどこまで伸びるかを確認しつつ、その後の反落で押し目となりそうなサポート水準に指値を入れておく、というやり方が考えられます(この銘柄の場合も週足の移動平均がサポートの目安になりそうです)。

なお、市場全体が崩れてしまうと、“それまでのサポート水準”がサポートにならなくなる可能性があります。個別銘柄の売買であっても、常に市場全体の動向を意識しておくことが肝心です。


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