年初から冴えない展開が続いてきた株式市場ですが、5月20日を過ぎた辺りから、ムードが好転している感があります。もっとも、この好転ムードもわずか10日そこそこでしかありませんから、これが本格的な「上昇トレンド再開」となるかどうかは定かではありません。ただ、一時は盛り上がったていたものの、その後は意気消沈していた新興株や低位株の中に「復活?」を期待させる動きが見えているのは確かです。
ここで、5月の月間上昇率ランキング上位銘柄を見てみましょう。
No. | コード | 銘柄名 | 業種 | 上昇率 |
---|---|---|---|---|
1 | 2121 | ミクシィ | サービス業 | 124.8 |
2 | 2321 | ソフトフロント | 情報・通信 | 108.5 |
3 | 6871 | 日本マイクロニクス | 電気機器 | 100.4 |
4 | 6677 | エスケーエレクトロニクス | 電気機器 | 96.5 |
5 | 4576 | デ・ウエスタン・セラピテクス | 医薬品 | 80.5 |
6 | 3444 | 菊池製作所 | 金属製品 | 70.7 |
7 | 3727 | アプリックスIPホ−ルディン | 情報・通信 | 70.1 |
8 | 6840 | アドテック | 電気機器 | 69.1 |
9 | 4798 | エル・シ−・エ−ホ−ルディン | サービス業 | 66.7 |
10 | 7591 | エクセル | 卸売業 | 66.4 |
11 | 3858 | ユビキタス | 情報・通信 | 64.1 |
12 | 4650 | ゲオディノス | サービス業 | 63.4 |
13 | 9514 | ファーストエスコ | 電気・ガス業 | 60.4 |
14 | 3656 | KLab | 情報・通信 | 59.6 |
15 | 9424 | 日本通信 | 情報・通信 | 57.5 |
16 | 9624 | 長大 | サービス業 | 49.5 |
17 | 6768 | タムラ製作所 | 電気機器 | 47.8 |
18 | 1726 | ビーアールホールディングス | 建設業 | 47.4 |
19 | 6955 | FDK | 電気機器 | 46.2 |
20 | 6659 | メディアグローバルリンクス | 電気機器 | 43.8 |
トップは断トツでミクシィ(2121)。月間上昇率は実に約125%です。この銘柄をはじめランクインしている大方の銘柄は、その上昇率のほとんどを5月後半だけで稼いでいるような格好です。この10日間を「短期急騰銘柄が続出」と表現しても差し支えないでしょう。
それにしても、これらの銘柄はなぜ急騰したのでしょうか。「いずれも新興株である」ということは明らかですが、それ以外に何か共通点はないのか。あれこれ探してみたところ、ひとつそれらしきものが見つかりました。
そのキーポイントは、ミクシィにあります。
この銘柄は、2010年以降、戻しらしい戻しもなく、ほぼ一直線に下げ続けてきました。2012年初に市場全体が上向いたときも、また、12年11月から本格上昇相場が始まって新興株が人気化したときも、その恩恵はまるでナシ。会社の存続を危ぶむ声すら出ていたほどです。
その動きに変化が現れたのが昨年11月後半。その時期、市場全体が軟調な動きをしていた中で、11月11日の安値1080円から、12月10日の高値9060円(S高)まで、約1か月で株価が8倍以上にも値上がりしています。
とはいえ、その高値の日から、今度は3日連続S安となり、その後、「もう1回!」の上昇を画策しましたが実現せず。今年3月以降は出来高も大幅に減り、「この銘柄はもう終わったな」と思われてもおかしくない動きになっていた、その矢先。5月の連休明けを境にムクムクと起き上がり、15日から「急騰」が再スタート。昨年12月10日につけた高値も難なくクリアする強い展開を見せています。
このミクシィという銘柄が昨年11月に盛り上がったとき、一体どういう銘柄が買われていたのか。その頃、とくにこの銘柄に注目していたわけでもなく、記憶も定かではないので、この銘柄と連れて動く傾向のある銘柄は何かを、『株テクニカル情報2014年新春号』の「高相関銘柄上位」欄で調べてみたところ、何と。図1の表に名があがっている銘柄が複数登場しているではありませんか。
これは偶然でしょうか?
ある銘柄が急騰するときには、「次に来るのはどの銘柄か」を誰もが考えると思います。その際の視点はさまざまありますが、相関性の高い銘柄を調べてみることは、その有用な手掛かりになります。というのは、高い相関性を示す銘柄は、理由はともあれ、「その銘柄が買われた局面で同じように買われ、売られた局面で同じように売られた」という、似たようなトレンドを描いているケースが間々あるからです。
もちろん、相関性の数字が高くても、たまたま両銘柄のデータ検証期間中の一時期だけ、強烈に同じような上げ下げをしていた、というケースもあります。実際、ミクシィの高相関銘柄リストに入っている銘柄のどれもこれもが似たようなトレンドを描いているわけではありません。また、直近のチャートを見ても、「なぜこの銘柄と相関性が高いのか」と疑問に思えるような銘柄もあります。
ただ、過去の値動きをチェックしてみて、多少のズレはあっても似たようなトレンドを描いている高相関銘柄だとすれば、それは、何らかの理由で同じような時期に手掛けられやすい、という背景があるとも解釈されます。もし、双方の銘柄を同一の参加者が手掛けているとすれば、一方の銘柄の値動きがよくなることは、売買余力の拡大という形でもう一方の銘柄の値動きに好影響を及ぼすことでしょう。
その観点からすれば、たとえば昨年11月辺りに一旦吹き上げ、その後、高値にトライするも達成できず、冴えない動きを続けていた高相関銘柄で、ここへきて値動きや出来高に回復の片鱗がうかがえる銘柄、しかしまださほど値上がりしていない銘柄は、「次に来るかもしれない」期待銘柄候補としてウォッチしておいて悪くないと思います。ミクシィ上昇による売買余力拡大による波及効果が、もしかすると、近いうちに現れるかもしれません。
ちなみに、ミクシィとの株価水準相関が1位、上昇下落率相関が2位の銘柄は、昨年11月以降、このような値動きになっています。
今回は、5月の上昇率トップのミクシィに焦点を当ててみましたが、騰落率ランキングの上位にある複数銘柄に何らかの共通点があるときには、同じ共通点を持ちながらもまだランキングに入っていない銘柄に着目してみるのが、王道の一策といえます。その共通点を探すヒントとして、いま好調な銘柄との相関性という要素に注目してみてください。値上がりしている材料だけでは捉えられない急上昇の背景が見えてくることもしばしばです。
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