あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。 昨年2022年の年頭所感のテーマは「ベア転換か、調整完了でトレンド再開か」でした。実際どうだったかといえば、年足は4年ぶりの陰線。前年の陽線は帳消しになっています。ベア転換したかどうかはまだ定かではありませんが、その可能性を感じさせる1年だったように思います。
本日の2023年大発会、残念ながらおめでたくない幕開けとなりました。思えば1年前、2022年の大発会は日経平均株価が500円以上も上昇して始まる好スタート。「3万円回復」はもう時間の問題、という強気ムードだったところが、そのわずか2日後、1月6日から爆下げに見舞われるところとなりました。
1月27日に2万6000円ギリギリで下げ止まったかに見えたものの、2月10日から下げ再開。ウクライナ情勢の緊張感が高まり、ロシアがウクライナ侵攻を公言した2月24日に安値を更新。結局、3月9日に2万5000円を下回るところまで安値更新が続きます。
その後のリバウンドは強く、これで完全復調したかにも見えましたが、3月25日で上げ止まり、4月から再び下落。以後、リバウンドの動きに勢いが出てくると一転して大下げ。ほぼ“往って来い”まで値を落とすという、気疲れするばかりの上げ下げが年末まで繰り返されています。
昨年の年頭所感では「日経平均株価をはじめとするインデックスは弱保合い状態になる」と予想しましたが、結果的には4月以降そんな展開で、大きく捉えればトレンドレス。市場全体のムードが良くなってきたと思った矢先に、ほとんど全部やられてしまう、実に虚しい相場だったという印象です。
ただ、弱保合い状態だとはいえ、月足を見れば日経平均株価のトレンドが崩れているわけではありません。
3月9日の最安値にしても、2万5000円弱のサポート水準で止まり、以後は下値を切り下げず、辛うじてながらも水準を維持しています。
その点、米国市場、とりわけNASDAQ市場は深刻です。
21年11月に16000ポイントを超えていたNASDAQ指数は1月から強烈に下げ、10月13日の最安値は10088ポイント。4割近く下げてもなお打ち止め感が見られません。下げ基調に転じてから1年を過ぎていることからすれば、主要トレンドがベア転換している可能性は濃厚です。
とはいえ、株価水準からすると、もう下落も最終局面に近いのではないか。10000ポイントで下げ止まらなかったとしても、9000ポイント前後か、最悪でも8000ポイント前後のサポート、最高値から半値レベルまでではないか、というふうに見えなくもありません。個別銘柄にしても、たとえばテスラやメタは最高値から70%も下落しています。そこまで下げているとなれば、もう下値は限定的にも思えるところです。
しかし、相場の格言で「もうはまだなり」と言われるように、過去の相場を振り返ると、「もう」と思われたことが、実は「まだ」だったという展開が往々にして起こります。
”IT”バブル崩壊後の下落相場がその例です。NASDAQ指数は2000年3月10日の最高値から約1年半後、”9.11”同時多発テロの直後に”IT”バブルの起点となった98年10月の安値水準まで下げて一旦は反発しています。ここで、もう大底はつけた、と思った人はおそらく少なくないでしょう。ところが、その反発は長続きせず、結局、その後1年以上も下落相場が続いています。
現状のNASDAQ指数がどこで下げ止まるか、もちろんわかりません。ただ、ここまで上昇してきた経緯を考えると、さらに、その上昇は長期間にわたる金融緩和が背景であり、その政策が引き締めに転じたことを踏まえればなおのこと、今年のNASDAQ市場に対しては慎重な見方をしておいたほうがよいと思います。今年もNASDAQ市場のトレンドは厳しい、というのが現時点での予想です。
その場合には、日本市場もその厳しいトレンドと無関係ではいられません。昨年は、強い円安ドル高基調のお陰で日経平均株価は値持ちしていました。しかし、円高ドル安基調に揺り戻す動きになると、昨年3月9日の最安値を割り込む展開も想定しなければならなくなります。仮に、2万円前後のサポートまで下げて、もう下げ切ったかのように見えたところが、「まだ」だったとなるかもしれません。
想像すらしたくない悲観シナリオですが、しかし、そのとき市場全体が真っ暗なのかというと、そうはなっていない可能性を感じています。というのは、個別銘柄のトレンドが昨年を通じて思いのほか悪化していないからです。
昨年の年頭所感では、21年11月以降、日経平均株価をはじめとするインデックスの動きよりも個別銘柄のトレンドが明らかに悪い。市場実態の悪化がどのインデックスにもなぜか現れていないことを取り上げました。
そうしたインデックスと市場実態との乖離が、昨年初からの大下げで解消されています。安値更新銘柄数の動向からすれば、21年末から昨年1月にかけてよりも、むしろ改善傾向が見てとれます。
この改善傾向が維持されるかどうか。これが本年第一の注目点です。もし、日経平均株価が昨年3月9日の最安値を完全に抜けて下落したとしても、安値更新銘柄数が昨年1月あるいは3月の水準を上回ることがなければ、これは先行きに対する吉兆と見てよいと思います。
もうひとつ、その局面で注目しておきたいのはマザーズ指数の動向です。
マザーズ指数は20年10月14日の最高値をピークに1年を超える弱保合い状態を経て、21年12月から完全な下降トレンドとなっています。日米の主要インデックスに先駆けてベア転していたこの指数が、今度は他の主要インデックスに先駆けて下げ止まるかどうか。それが確認されるならば、日経平均株価や米国市場がまだ予断を許さない状況だとしても、市場全体の光景は必ずしも暗くはならない。市場の片隅にでも吉兆が見出せるならば、収益の機会も探しやすくなっているはずです。
本来ならば、ここは「マザーズ指数の動向」もさることながら、「東証2部指数と日経JASDAQ平均の動向が市場実態をうかがう重要なカギになる」と言いたかったところです。これまでも何度か取り上げてきましたが、この2つのインデックスには市場実態がよく反映されていました。しかも値動きが非常に素直でトレンドが捉えやすかった。これも非常に重宝していた点です。
ところが、ご承知の通り、昨年4月4日に新市場区分に移行したことによって、東証2部市場・JASDAQ市場は消滅。同時にその市場のインデックスも廃止です。2022年の重大な出来事は何だったかと 問われれば、個人的にはこれがトップです。
当初は、2部市場とJASDAQ市場の上場銘柄のほとんどはスタンダード市場に移ることから、スタンダード市場のインデックスが代替になるだろうと考えていたのですが、それがとんでもない。新市場がスタートすると、プライム市場指数・スタンダード市場指数・グロース市場指数いずれも引け後16時に終値だけを出す、という信じ難い措置。鳴り物入りで始めた新市場区分のインデックスをまともに算出しないとは。何の嫌がらせかと、本気で思いました。
この算出にはさすがに意見が多かったらしく、6月27日から場中の指数値を算出・公表し、4本値まともに出すようになっています。これで何とかなるか、と思ったところが、です。スタンダード市場指数を見ると、2部指数や日経JASDAQ平均とはまるで違う。その値動きはプライム市場指数と大差がないのです。
何故そうなっているのかといえば、日本オラクル(4716)をはじめ旧東証1部の巨大時価総額銘柄が複数スタンダード市場に入ってきたためです。それらはTOPIX構成銘柄でもあることから、プライム市場指数の値動きに似たものになってしまいます。となると、1300近い旧2部市場・旧JASDAQ市場の銘柄の動向を知る手掛かり、すなわち、市場の実態を知る手掛かりはもはや皆無です。
この事態に一体どう対処すればよいか。そこでまず、nTseS(なでしこ東証スタンダード平均)という指数を作り、前日比騰落率を当サイトの4本値市況のページで試験運転することとしました(指数の概要はこちら)。
さらにこのほど、これを連続データとして表示する仕組みを作りました。これでかつての2部指数や日経JASDAQ平均に代わる、市場の実態を知る手掛かりが得られるのではないかと考えています。なお、このオリジナル指数に関しては、1月13日発売の『<株>テクニカル情報 2023年新春号』のDATA MAGAZINEに詳細を掲載する予定です。
どう考えても悲観材料のほうが圧倒的に多い2023年ですが、「まだはもうなり」とも言います。市場がまだ暗く見えていても、実はもう薄日が差しているかもしれません。それを見逃さないよう、本年も前向きに市場に参加したいと思います。