(本稿は、2008年12月13日時点でのデータを元に作成されています。)
新聞などの場況欄で「先物主導で売られ…」というコメントを目にすることがしばしばあります。ここで言う「先物」とは株価指数先物、多くは日経平均先物を指します。
そもそも株価指数先物は、現物株で構成される株価指数から派生したものですから、本来的には、現物市場の動きを睨んで売買がなされてしかるべきと言えます。それが逆に、先物の動きを睨んで現物株が売買されるというのは不可解な感じがしないでもありません。
こうした現象が起きる要因のひとつとしては、株式という、企業価値を反映する有価証券で資金を運用する、いわば実需の市場参加者が減少している状況が考えられます。
市場には、企業価値云々はともかく、株式を「値動きする対象」と捉えて、その値幅を取ろうとする参加者もいます。値動きをもたらす要素としては、企業業績や経済指標の発表などいろいろありますが、そうした材料が毎日出てくるわけではありません。ましてやザラ場中、株価を動かすに値するニュースが絶えず出てくることはないでしょう。
そうすると、ザラ場中に動いているもの、たとえば為替やアジア株などの動向が注目対象になってきますが、そうした要素も織り込みつつ、かつ、株式市場に影響するものとして、株価指数先物の動きが現物株の値動きを誘う“材料”にもなってくるわけです。
市場には、株価指数先物と現物市場の株価指数との間で裁定取引をしている参加者がいます。裁定取引とは、値動きに関連性のある2つの売買対象について、その関連性から価格が乖離したときに割高なほうを売り、割安なほうを買うことで収益を狙う取引です。株価指数先物と現物株の裁定取引では、多くの場合、先物を売り、現物株のバスケットを買う、という形で行われています。そうすると、何らかのきっかけで先物が下落して現物株が割高になると、現物株を売って裁定を解消する動きが出てきます。これが、先物が下がった場合に現物市場の株価を押し下げる一因になります。
「先物が下がれば、現物株も売られるだろう」と事前に予想していれば、裁定取引をしていない参加者の中にも、先物が下がれば現物株を売るという行動が出てきます。 “実需の参加者”が多数いれば、これといった理由もなく株価が下がれば買いを入れてくると思いますが、実需の参加者が少ない状況では、そうした買いが限定的になりがちです。かくして、「先物が売られると現物株も売られる」という一方向の動きも起きやすくなります。
“実需の参加者”の多くは、景気や企業業績の先行きといったファンダメンタルズを重視して投資機会を考えているものと思われますが、景気は後退局面、企業業績も悪化するだろうと予測されている中では、この参加者が増加する状況は期待しがたいと言わざるを得ません。となると、個別株を売買するとしても、株価指数先物あるいは現物の株価指数を意識することが必要になってきます。
前置きが長くなりましたが、そこで今回から、株価指数と個別株の関係を考慮したトレードシステムを考えてみます。恒常的に売買を繰り返すトレードはしない人でも、この両者の関係を意識しておくと、投資対象を選別する際の参考になると思います。