(本稿は、2009年2月20日時点でのデータを元に作成されています。)
明日の日経平均株価の水準に影響を与える要因は、第一に「今夜の米国株の動向」であり、次いで、とくに最近においては為替動向です。この点については以前にも取り上げましたが、今一度チェックしてみましょう。
図3は、「もしも、明日早朝に確定するS&P500の引値、およびドル円レートの引値が、今日の日本市場の大引け時点で予想できたとして」という前提で、日経平均先物を大引けで売買した場合の累積パフォーマンスの推移です(手仕舞いは翌日寄付とします)。米国株が上がるか、下がるかが的確に予想できるとすれば、Aのような高パフォーマンスが得られます。また、Bを見ると、07年以降、ドル円レートも日本株の売買シグナルとして非常に有効になっていることがわかります。
それでは、米国市場や為替動向にも影響されそうで、かつ、日経平均株価にも比較的連れて動いている銘柄を検証してみたらどうなるでしょうか。
トヨタ自動車(7203)を取り上げてみます。日経平均先物とトヨタ自動車の株価は図4に示す通り、かなり近い動きとなっています。
図5Aは、「日経平均先物が前日比上昇ならばトヨタを大引けでロング」「日経平均先物が前日比下落ならばトヨタを大引けでショート」(いずれも翌日大引けで手仕舞い)という売買を想定した結果を示しています。ファストリの結果に比べればよくなっていますが、やはり「逆をやるよりはまし」という域からは出ていない感じです。ただ、ポジションの期間を「翌日寄付まで」とすると、パフォーマンスはBのように改善されます。
今度は、トヨタ自動車の売買に日経平均先物のヘッジをつけてみます。トヨタがロングのときは先物を大引けでショート、トヨタがショートのときは先物をロング、という形で、これには、個別株の値動きの中に含まれる市場全体の動きの部分を排除する意味があります。例えば、トヨタが前日比3%上昇し、先物が1%上昇した場合、「3%のうちの1%は『市場全体の動きの部分』」と捉えて、その1%分を先物ヘッジによって差し引くわけです。
図6がその結果です(売買するトヨタの株数と先物の枚数は同金額分としています)。図5で見た結果よりも明らかにパフォーマンスが上向きになっています。ポジション期間を翌日寄付までとした場合には、落ち込むところはあるものの、安定度は増していることが確認されます。
複数の銘柄について調べてみましたが、トヨタのように、市場全体の値幅分を差し引いてもなお、市場全体の動向の影響を翌日受ける銘柄は少なくありません。ただし、日経平均に対する寄与度が最も高いファストリについては、そうした銘柄ではないといえそうです。