(本稿は、2009年5月22日時点でのデータを元に作成されています。)
ここまでは、「大引けでポジションを取り、翌日寄り付きでポジションをたたむ」という売買を想定してきましたが、「寄り付きでポジションを取り、その日の大引けでポジションをたたむ」という売買の場合はどうなるでしょうか。そこで今度は、
・ 先物が前日終値より高く寄り付いたら個別株を寄り付きでロング+先物を寄り付きでショート
・ 先物が前日終値より安く寄り付いたら個別株を寄り付きでショート+先物を寄り付きでロング
という売買を想定してみます。
図表6は、ファナックと京セラの結果ですが、これといった傾向が見当たりません。
それならば、前回試みた「乖離」に着目したらどうでしょうか。たとえば、先物が前日引値より1%高く寄り付いたとき、個別株の寄り付きは前日引値より0・5%高だとしたら、先物から見れば「0・5%安く寄り付いた」ことになります。この場合、先物に対してマイナス乖離です。反対に、先物の寄り付きが前日引値より1%高、個別株の寄り付きは前日引値より2%高だとすれば、先物に対してプラス乖離となります。ザラ場中にこの乖離が縮小するとすれば、マイナス乖離のときは寄り付きで個別株をロング、プラス乖離なら寄り付きで個別株をショートという売買が有効になります。この売買を検証してみましょう。なお、この検証でも、先物で個別株のポジションと逆のポジションを取るものとします(先物はヘッジ比率を掛けたサイズを想定しているので、乖離の計算式は「個別株の上昇下落率−(先物の上昇下落率×ヘッジ比率)」)。
すると、図表7のような結果となりました。とくに京セラの高パフォーマンスは注目されます。直近は伸び悩んでいますが、過去のドローダウン(パフォーマンスが落ち込む時の落ち込み度合い)実績からすると、許容の範囲といえるでしょう。
同様の検証を自動車株でも試してみました。図表8は、とくにパフォーマンスがよかったスズキとデンソーの結果です。いずれも昨年末までは鮮明な右肩上がりですが、今年に入ってからパフォーマンスが伸びていない点が気になります。昨年後半にパフォーマンスが急伸した反動の可能性もありますが、注意したほうがよさそうです。
寄り付きから大引けまでの値動きについては、「大引け→翌日寄り付き」で検証したときほど、日経平均に対して「順張り型」「逆張り型」というタイプ分けははっきりできませんでした。しかし、程度の差こそあれ、日経平均採用銘柄の多くが、寄り付き時点で生じた市場全体との乖離を大引けまでに埋める方向で動く傾向は確認されます。寄り付きで出動し、大引けで手仕舞うトレードシステムの中に取り入れてみてもいいかもしれません。