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厳密には実行できなくともアバウトにならになら実行可能な売買

(本稿は、2009年6月27日時点でのデータを元に作成されています。)

前回、個別銘柄の値動きの傾向を調べる方法として、「大証の日経平均先物(以下、「先物」)の引値が前日比上昇(下落)なら、個別株を大引けでロング(ショート)する」という売買を想定し、その累積パフォーマンスを検証してみました。

この売買に関して、編集部の方から「大証の取引終了時間が東証より10分遅いため、実際にはこの取引はできない」とのご指摘をいただきました。そこで「この売買を厳密に行うことはできません」という注釈を加えたのですが、「厳密に」という表現がNG。厳密も何も、後に確定するものをシグナルにして、その10分前にポジションを取るのは絶対に実行不可能ではないのか、ということだと思います。

現実には、この取引は「厳密」にはできないものの、「アバウトに」であれば実行できます。というのは、この売買に必要な要素は「先物の引値がいくらか」ではなく、「先物の引値が前日比上昇か、下落か」だからです。

今日の先物が前日比上昇で引けるか、前日比下落で引けるかは、大引けを待たなくてもある程度は予測可能です。

たとえば、日経平均株価は15時に確定する採用225銘柄の引値をもとに算出されます。この日経平均株価が前日比上昇だったのに10分後に確定する先物は前日比下落で引けた日数、あるいは逆に、日経平均株価が前日比下落で引けたのに、先物は前日比上昇で引けた日数がどのくらいあるかというと、98年1月から09年5月末までの2804営業日中、合計242日と1割弱。つまり、90%以上の日は15時に確定する日経平均株価の引値と、大証の先物引値の前日比上昇下落は同じです(表1)。

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ザラ場中は、日経平均株価と先物がかけ離れた動きをすることはそうはありませんから、東証大引け間際の先物の値段を見て「今日は引値も前日比上昇(下落)だろう」と予想し、それに基づいて個別株のポジションを取っても9割程度は「先物の引値の前日比上昇・下落」によって個別株を売買したのと同じ結果が得られることになります。

さらに、「日経平均株価の引値の前日比上昇・下落率が0・5%超の場合」という条件をつけると、日経平均株価の前日比上昇・下落と先物の前日比上昇・下落とが逆だった日数は29日。全営業日数の約1%にとどまります。東証の大引け間際に先物が前日比で0・5%超上昇(下落)していたら、それをシグナルに個別株をロング(ショート)しても、99%は「先物の引値の前日比上昇・下落を見て個別株を売買する」という、実行不可能な売買と同じ結果になると考えられるわけです。

前回は、個別株の値動きの傾向を調べるための方法として取り上げた売買だったため詳しくはふれませんでしたが、仮に、理論的にはできない売買システムであっても、高いパフォーマンスが期待できるものであるならば、「アバウトに」でも実行してみる価値はあると思います。今回は、それを実践するためのアイディアを考えてみます。

先物の上昇下落率の大きさでパフォーマンスはどう変わるかnext


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