(本稿は、2009年6月27日時点でのデータを元に作成されています。)
たとえば前々回(6月号)で、先物の前日比上昇・下落に対して順張り型の値動きをする銘柄は、「先物の引値が前日比上昇なら、個別銘柄を大引けでロング+先物を大引けでショート」「先物の引値が前日比下落なら、個別銘柄を大引けでショート+先物を大引けでロング」という想定売買がなかなかよいパフォーマンスを示したことを紹介しました。そのときは日立建機(6305)の例でしたが、同業のコマツ(6301)もまた順張り性が確認される銘柄といえます(図1)。
この仮想トレードを現実に実行できるものにするために、まず、先物の前日比上昇下落率の大きさと、このトレードのパフォーマンスとの関係を調べてみます。
表2は、先物の前日比上昇下落率を11に区分けして、検証期間の全ての日について「コマツを大引けでロング+先物を大引けでショート」(いずれも翌日寄付に手仕舞い)とした場合の累積パフォーマンスを、先物の上昇下落率の区分ごとに示しています。このパフォーマンスがプラスであれば、「コマツをロング+先物をショート」で利益が出る、マイナスであれば「コマツをショート+先物をロング」という逆の売買で利益が出るという意味になります(これは、先物の前日比上昇下落率と、コマツおよび先物の「大引け⇒翌日寄付」の値動きとの関係を調べるシミュレーションであり、トレード手法を紹介するものではありません)。なお、上昇下落率の11区分は、各々の出現回数(=想定トレード回数)が概ね均等に近くなるよう分けたものです。
この結果を見ると、先物が前日比マイナス0・625%以下のときには、「コマツをショート+先物ロングでヘッジ」が功を奏していたことがわかります。他方、先物が上昇した場合は、「1トレードあたりの利益」が示すように、前日比プラス0・625%超のときにはより収益性が高くなることがうかがえます。
この結果を参考に、図1の仮想トレードに前日比上昇下落率の条件をつけて、その累積パフォーマンスを見てみます。
図2のグラフは、Aが「先物の前日比上昇・下落」だけをシグナルにした場合。B,C、Dは「先物の上昇下落率が±何%以上のとき」という条件をつけた場合の累積パフォーマンスの推移です。
Bは「前日比±0・625%以上」という、比較的はっきりした上昇・下落のときだけ売買することを想定したものですが、トータルのパフォーマンス水準はAとほとんど変わりません。その一方で、ドローダウン(パフォーマンスが落ち込むときの落ち込み度合い)はAよりも改善し、パフォーマンスの推移の安定度が増していることがわかります(表3)。つまり、「先物が前日比上昇で引けるか、前日比下落で引けるか微妙だ」という状況のときは、売買はしなくてよいということです。