(本稿は、2009年6月27日時点でのデータを元に作成されています。)
もっとも、東証の大引け時点で、先物が「前日比±0・625%以上で引けるかどうか」はわかりません。東証の大引け間際には、先物が0・625%を超えて上昇していたのでコマツを買ったところが、大証の大引けまでの10分間に値下がりし、先物の引値の前日比上昇率は0・625%以下だった、ということもあり得ます。その場合、「本来ならポジションを取るべきではなかったのに、コマツを買ってしまった!」となってしまいます。
しかし、ここで改めて表1を見てみれば、15時に確定する日経平均株価の引値が0・6%超の上昇(下落)であったときに、先物の引値が前日比下落(上昇)だったという日数は全体の0・6%しかありません。先物が前日比0・625%超で引けるかどうかはわからないとしても、少なくとも前日比上昇で引ける可能性は高いと考えてよいわけです。図2のAで見た通り、「先物が前日比上昇か、前日比下落か」だけをシグナルにした場合でもパフォーマンスは悪くはありません。先物の引値の前日比上昇率が想定より下がったとしても、それによってパフォーマンスが著しく損なわれる可能性は小さいと言ってよさそうです。
もっと慎重なトレードシステムにしたいならば、先物の前日比上昇下落率の条件を「±1%以上」に引き上げる策もあります。
たとえば、東証の大引け間際に先物が前日比で1%程度上昇していて、大引けでコマツを買ったとしましょう。仮に、15時以降に先物が値下がりしても、先ほど見たように、引値の前日比上昇率が0・625%超であれば好ましい結果が得られます。よって、「0・375%分は下がっても大丈夫」という余裕ができます。
また、表1の結果からすれば、先物が前日比上昇で引ける可能性はかなり高いと推測されます。とすると、このシステムを実際に運用した場合のパフォーマンスは、図2のAとCの間に来るのではないか、との目安もつけられます。
ところで、この「0・375%分の余裕」とは、いくらの値動きに相当するのでしょうか。前日比率をトレードシステムに組み入れる際には、1ティックの値動きが前日比率に与える影響は事前に把握しておきたいところです。
前日比上昇下落率は、今日の引値を「C」、前日引値を「pC」とすれば、
{(C−pC)/pC}×100
で計算されます。Cが変化したとき、結果の値がどう変化するかは、この式をCで微分すればわかります。すなわち、(1/pC)×100です。
6月26日の例でいえば、前日25日の先物の引値は9790円ですから、1ティック10円の値動きは「(1/9790)×100」に10円を掛けた0・102%となります。先物が水準を変えて、例えば前日引値が8000円とすると、1ティック10円の値動きは前日比率に0・125%影響します。この場合、「0・375%分の余裕」は、ちょうど3ティック分に相当します。