近年、株価指数とりわけ日経225を意識した売買が市場取引の中で目立つようになっています。
その背景としては、日経225先物・オプション取引、先物価格と現物指数の乖離に着目する裁定取引など、インデックスがらみの売買を行う参加者の存在感が増していることが考えられます。
「今日、225採用銘柄の中でとれが買われ、どれが売られるのか」は、結局のところ、「多くの市場参加者が買いたいと思っている銘柄はどれか」「売りたいと思っている銘柄はどれか」という、いわゆる需給で決まります。これを事前に知ることはもちろん不可能ですが、日々公表されている日証金の融資・貸株残高をチェックすることによって、「どの銘柄が買いたいと思われやすいか」「どの銘柄は売りたいと思われやすいか」という、需給の一端を推測することができます。
たとえば、前日約定分の融資残(買い残)が大幅に増加した場合、その銘柄が今日値上がりしたら利益確定売りが出やすいだろう、と警戒されやすくなると考えられます。これは、今日市場全体が値上がりしても、その銘柄を買うのはやめておこう、というスタンスが出やすいということでもあります。つまり、その銘柄は「買われにくくなる要因を抱えている」ということです。
反対に、貸株残(売り残)が大幅に増加した場合、もし今日株価が大きく値上がりしたら、前日信用売りした人は“踏み上げ”になってしまいます。そこで買い戻しが出れば、それが一層の株価押し上げに寄与するでしょう。これは、今日市場全体が値上がりするなら、そうした銘柄を買えば利益が取れると思われやすい、つまり「買われやすくなる要因を抱えている」といえるわけです。
また、市場全体の動向という観点で言えば、ある日融資残が大幅に増加し、その翌日から市場全体が値下がりを続けたとすると、そこで信用買いをした人は含み損が日々拡大していく状況を強いられます。見切り売りをしないで我慢している人は、日経平均株価が買ったときの水準まで戻るのをひたすら待つでしょう。そしてその近辺まで戻ったときには、所謂「ヤレヤレの売り」が出てくると予想されます。ということは、この「融資残が大幅に増える一方で、株価が下がり始めた水準」は、そうした“シコリ”の存在によって、株価が上がるのを阻まれやすい水準と解釈できます。これは、重要な「戻り」の目安のひとつになります。
貸株残が大幅に増加した翌日から株価が連日上昇した場合は、その逆が考えられます。すなわち、株価がその水準近辺まで下がってくれば、それまで踏み上げ状態を強いられてきた人の「ヤレヤレの買い戻し」によって、株価がその近辺より下がりにくくなる、という状況です。よって、「貸株残が大幅に増える一方で、株価が上昇しはじめた水準」は、株価の下げ圧力を押し止め、再び買い(戻し)が入ってきやすくなる、ひとつの押し目の目安にできます。
日証金の融資・貸株残高は、個人投資家の信用残高を多く含んでいます。ですから、日証金の融資・貸株残高を見れば、信用取引を行っている個人がどんなポジションを持っているのかを推測することも可能になります。
日々売買を行って収益をあげることを生業としているトレーディングハウスなどは、想像以上に個人投資家の動向を観察しているようです。その意味でも、日証金の残高の動向、とくに彼らが重視している日経225の採用銘柄の動向に関しては、大いに注目してしかるべきであると考えます。
★ 「日証金」「融資・貸株残高」など、信用取引の仕組みについては、こちらから。
東証・名証の貸借残を含む信用残データです。評価損益率などをチャートにしています。