「相場さえよくなってくれれば…」と我慢に我慢を重ねて持ち続け、ついに「これはもうダメだ」と投げ売りしたところが底。直後から相場が好転したーー。
そんな経験はないでしょうか。
自分一人の投資行動が相場動向を変える引き金になる、ということはまずありませんが、理由はともあれ、「こういうことがあると、どうも相場が好転するようだ」という経験則があるならば、それは強く意識しておいて損はありません。もしかすると、それは、相場状況を変える何らかの真実と結びついているのかもしれません。
個人的にも、経験則からくる仮説のようなものがいくつかあります。そのひとつが、「『マネー雑誌が休刊すると相場が好転する』仮説」です。
09年以降、その現象は3回観測されています。
最初は、09年3月。『マネージャパン』が4月発売号を以て休刊する、という連絡がありました。1980年代に創刊された老舗のマネー雑誌であるだけに、この連絡には非常に驚き、残念に思ったことを記憶しています。
その頃、“リーマン・ショック”がようやく落ち着いてきたか、という状況だったわけですが、日経平均株価は、その3月に底をつけ、以後6か月、連続して月足陽線を描くに至っています。
2回目は10年7月半ば、『エコノミスト・マネー』(旧『投資の達人』)が9月発売号を以て休刊する、との連絡です。長く連載をさせていただいていて、他誌とは異なる切り口の特集も多かった投資雑誌なので、その休刊の連絡にはかなりショックを受けました。
株式市場は10年4月をピークに、5月にはひどい下落を演じ、6月になっても相場に好転の兆しは見られませんでした。そうした株価動向が休刊にも関係しているのだと思います。が、最終号が発売になる9月から相場が上向きはじめ、11年2月まで6か月間、高値を更新する動きを続けています。
そして3回目は、11年12月初めのこと。『あるじゃん』の編集部から「12年1月発売号を以て休刊する」との連絡をいただきました。広告が厳しくなっている、とのことでした。
この頃の日経平均株価は、8月から下げ続け、11月まで安値を更新し続けるという、確かに悪い状況にありました。しかし、その一方で、低位株や2部・新興市場の銘柄の中に悪くない動きをしている銘柄が増えていたのも事実です。そのため、「もしかしたら、来年の相場は結構いいかも」などと考えていたのですが、そんな矢先の「休刊のお知らせ」。正直、複雑な気持ちになりました。
その後の株式市場は、というと、12年1月から3月まで、わずか3か月の短期間でしたが、押し目らしい押し目も見せない強い上昇相場となっています。
マネー各誌はそれぞれ違った個性の誌面作りをしていますが、いずれにも共通しているのは、「株式市場がよくなると部数が伸びる」ということのようです。07年半ばからの株式市場の悪化によって部数が厳しくなる中、ある編集者によれば、「『相場がよくなれば…』ということで続けてきた」そうなのですが、相場がなかなかよくなってくれない。日経平均株価が好転したかのように見えても、すぐに腰折れしてしまう。売買代金は細る一方、個人投資家は去っていく一方、という状況で、「これ以上続けるのをついに断念した」(ある編集者)とのことです。
その「ついに断念」の局面が、株式市場の目先の底になっているというのは、極めて皮肉というか、悲しい現実に思えてなりません。
ところで、この8月初め、1956年創刊という最古参の投資雑誌『オール投資』(東洋経済新報社)が、「10月発売号を以て休刊する」との告知を出しています。Webサイト『東洋経済オンライン』に力を入れていることもあり、投資情報の提供はサイトを中心に続けていくようです。紙媒体よりもむしろそのほうが投資家のニーズに合っているかもしれません。その意味で言えば、“前向きな休刊”と捉えられなくもないように思います。
株式市場のほうは果たしてどうなるでしょうか。これまで3回の経験則からすれば、「市場がきつく下げる→休刊の告知→相場の反転→最終号発売」といった流れでした。
日経平均株価は、4月、5月にひどい下げ方をして、6月4日に目先の底をつけて月足陽線を描いたものの、7月は4週とも週足陰線。それが8月になって、やや上向きになっています。とはいえ、新興市場はよくありません。市場参加者も減少している模様です。
もし、今月から数ヶ月、相場状況がよくなるとすれば、「『マネー雑誌が休刊すると相場が好転する』仮説」の信頼性も少し高まるのではないでしょうか。注目してみてください。
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