10月11日。SQ前日の日経平均株価の引値は8546.78円。
「今夜のアメリカが弱ければ、明日のSQ値は8500円割れの可能性アリ!」ということで、この日、225オプションでは「8500円プット」が賑わっておりました。
その米国市場は小甘い展開に終始し、12日の早朝に見てみれば、NYダウの引値は、前日比でわずかマイナス0.1%台。この程度なら、日経平均が8500円を割り込むようなことにはならないはず…。
ところが、寄り前気配を見ると、日経平均に対する寄与度が最上位クラスのソフトバンク(9984)とファストリ(9984)が爆安寄りしそうありませんか。ファストリは、前日発表の12年8月決算で海外ユニクロ事業が計画未達であったこと、13年8月期の業績予想が市場のコンセンサスを下回ったことが主因(報道によれば)。ソフトバンクは、米国の通信会社2社を買収するという、 “巨額のお買い物”が報じられて売り殺到。もしかするとストップ安か、というほどの売り板です。
実際のところは、寄付直前にどの銘柄に買い、あるいは売りを入れるかという話になりますが、寄値を使って事後的に説明します。
まずは、日経平均に対する寄与度上位銘柄について、SQ前日の引値とSQ当日の寄値を振り返ってみましょう(表の黒字はプラスの数字、赤字はマイナスの数字です)。
(表1・日経平均に対する寄与度上位20銘柄)
「寄与価格変化」の欄は、11日引値と12日寄値の対日経平均株価の寄与価格の変化を示しています。ファストリはマイナス44。44円、ソフトバンクはマイナス54.05円ですから、この2銘柄による日経平均の押し下げ効果はマイナス100円程度。寄与度でマイナス1%強にもなります。
8500円プットの売り方としては、何としてでも8500円を死守しなければなりません。では、どうするか。こういう時の “頼みの綱”は寄与度2位のファナック(6954)ですが、ファナックはあまり買いたくなかったようです。というか、仮にファナックを買い上げたとしても、この1銘柄だけの上げでは、ソフトバンクとファストリの爆下げはカバーしきれないでしょう。
とにかく、SQ値8500円割れを回避するには、日経平均を70円〜80円程度押し上げる必要があります。となれば、その他諸々の225採用銘柄を買い上げるより他はありません。
(表2・11日引値と12日寄値の対225寄与価格変化上位20)
表2は、寄与価格変化が大きかった上位20銘柄です。この20銘柄の寄与価格変化を合計すると、日経平均の押し上げ効果は40円程度。これだけでは「8500円死守」には足りません。というわけで、寄与度が高くない銘柄でもごっそりまとめて買い上げた模様です。
(表3・ここまで買えば「日経平均は前日比プラス75円」)
表3は、寄与価格変化が下位のほうの銘柄ですが、136位までの銘柄の寄与価格変化を合計すると、日経平均の押し上げ効果が75円程度になります。ここまで買い上げた結果、SQ値は8517.75円(前日引値比−29.03円)と、8500円割れは回避されました。ソフトバンクが仮にストップ安で寄り付いたとしても、8500円は死守できた計算です。
こうした売り買い展開されたことから、12日、225採用銘柄の寄値は170銘柄が対引値比で上昇(前日引値と同値を含めると204銘柄)、対引値比で寄値が下落したのは21銘柄のみ、ということになりました。ちなみに、225採用銘柄を単純平均した上昇下落率はプラス0.73%。この日の日経平均の引値は前日比マイナス0.15%でしたが、TOPIXはプラス0.61%です。
(表4・寄値の前日引値比上昇率上位30)
表4は、前日引値よりも寄値が高かった上位銘柄です。それにしても、何故こうした銘柄が大幅高寄りしたのでしょうか。大幅安寄りだったソフトバンクとファストリには、売られるなりの理由があったわけですが、表4の銘柄をはじめ、上げた銘柄の多くには、買われるなりの理由はなかったというのが、おそらく実際のところではないでしょうか。
ところが、理由はいろいろあると思いますが、このSQの翌週、日本市場は、しばらくお目にかかったことがないような強い上昇を見せるに至っています。日経平均先物は週明け15日の8490円を底に連日上昇を続け、18日には9000円タッチを達成しています。SQでの出来事が空売りの買い戻し、および、8500円以下になったところでの買い方の出動を誘発した面はありそうです。
ここで、SQ前日と直近の対225寄与度の変化が大きかった銘柄を見てみましょう。
(表5・SQ前と10/19引値の寄与度上昇30銘柄)
SQ前日の引値と翌週末引値を比べると、1割、2割上昇している銘柄が目白押しです。
とはいえ、その一方では、SQ前よりも寄与度を落としている銘柄もあります。
(表6・SQ前の引値と10/19引値の寄与度下落30銘柄)
表5の銘柄と比較すると、「外需系は寄与度アップ、内需系は寄与度ダウン」といった形になっていますが、外需・内需はさておき、例の2銘柄が崩れたことが、他の多くの銘柄の上昇につながったという印象が強くあります。言い換えれば、これまで多くの銘柄を売るために例の2銘柄を買って指数を維持していた、ということかもしれません。
さて、10月19日、米国市場は大きく下げました。この米国市場の下げを受けて、日本市場も再び弱い動きに戻り、「幻の9000円タッチ」で終わってしまうのか。それとも、急ピッチの上げを調整し直すだけで済むのか。その辺りは、225採用銘柄の寄与度構成の変化に現れるのではないかと見ています。
ここで説明した表のデータを ≫ダウンロード する。(CSVファイル、右クリックして保存メニューを選ぶなどして下さい。エクセルなどの表計算ソフトで利用できます。「No.」「累積」はその都度計算しているので項目はありません。)
各銘柄の寄与価格は、株価×掛け目÷除数(24.975)、で求まります(これの225銘柄合計が日経平均株価です)。寄与価格の変化(円)は、株価変化(円)×掛け目÷除数、で求まります(これの225銘柄合計が日経平均株価の変化(円)です)。
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