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【寄り引け】“アノマリー”の中に売買のヒントを探す

225先物は「寄り付きショート」がやはり有利

個別銘柄の値動きをいろいろ見ていると、前日引値よりも高く寄り付く(高寄り)傾向のある銘柄、前日引値よりも安く寄り付く(安寄り)傾向のある銘柄に出会すことがしばしばあります。そして、高寄り傾向の銘柄は寄値よりも安く引ける、安寄り傾向の銘柄は寄値よりも高く引ける、という傾向もあったりします。そうした銘柄のほとんどは、引値の推移だけを見ると、「大した動きではない」という結果になっています。

市場全体でいえば、どちらかと言えば高く寄り付いて、引けに向かって売られてしまう傾向があります。

図01は225先物の寄値の前日引値比上昇下落率を累積したグラフと、米国のS&P500の推移です。米国市場は何だかんだと言いながらも上昇トレンドにあります。その動きを受けて、225先物は前日引値よりも高く寄り付く傾向がある、と見てよいようです。

ところが、

図02は、寄りから引けまでの上昇下落率を累積したグラフですが、やはりザラ場中に売られてしまう傾向が現れています。「225先物は寄りで売れ」という諺(?)がありますが、あながちウソではなさそうです。

90年からの「寄り→引け」の上昇下落率を累積してみると、これほどきれいな右肩下がりを描きます。どう見ても、寄り付きで買うよりも売るほうが有利と言わざるを得ません。寄り付きで225先物をショート、大引けで手仕舞うトレードを毎日するだけで大儲けだったことになりますが、このトレードはドローダウンが29.4%もあります。つまり、3割程度ヤラれても耐えられるくらいの証拠金が用意できるのであれば、という条件が付きます。


「安寄りして高く引ける」傾向の個別銘柄もある

225採用全銘柄について平均値を取ってみたところ、前日引値から寄値までの上昇下落率合計は+34%、寄値から引値までの上昇下落率合計は−45%でした。個別に見ても、やはり「高寄りして安く引ける」という傾向のある銘柄が多いと考えらます。

とはいえ、中には、「安寄りして高く引ける」という逆の傾向を持つ銘柄もないわけではありません。そこで、高寄り傾向の銘柄と安寄り傾向の銘柄を組み合わせた売買を試してみました。

図03は、高寄り傾向のサッポロHD(2501)を引けでロング、安寄り傾向のNTT(9432)を引けでショートし、いずれも翌日寄付で手仕舞う、という売買の累積パフォーマンスの推移です(売買は同金額を想定)。とくに2010年からパフォーマンスが安定しています。ただ、この組み合わせで得られる1日あたりの収益率は0.18%。ちょっと小さすぎて、実用トレードにはなりにくそうです

この2銘柄について、「寄り→引け」のトレードも試してみました。

サッポロHDを寄り付きでロング、NTTを寄り付きでショートして、大引けで手仕舞うというトレードですが、パフォーマンスは一転して右肩下がり。つまり、サッポロHDは「高く寄り付いて安く引ける」、NTTは「安く寄り付いて高く引ける」傾向がある、ということです。とすれば、サッポロは「引けでロングして寄り付きでトテン売り」、NTTは「引けでショートして寄り付きでドテン買い」すればいいことになります。ちなみに、このドテン売買の場合、1日あたりの平均収益率は0.28%です。


225非採用銘柄の中にはこんな極端な例も

225採用でない銘柄についても調べてみました。極端な例をいくつか紹介しましょう。

日本橋梁(5912)の寄値の前日引値比上昇下落率合計です。とくに11年以降、高寄り傾向が顕著になっていることがわかります。

ところが、「寄り→引け」の上昇下落率合計を調べてみると、図05bのようになります。

2012年初の動意づいた一時期を除いては、寄り付きで売るのが正解だった、という結果です。

この銘柄の引値の推移は図05cのようになっています。

つまり、この銘柄をロングして利益が取れたのは爆騰した12年初だけ。それ以外の時期は、引けでロング、寄り付きでドテン売りがよかったわけです(貸借銘柄ではないので、実際にはドテン売りはできませんが)。

逆に、「安く寄り付いて高く引ける」傾向が極端な銘柄もあります。ビーマップ(4316)がその例です。

図06は引値の推移ですが、寄値の前日引値比上昇下落率合計を調べてみると、こんな推移になります。

12年半ばに爆上げするまでは、かくも美しい右肩下がりを描いています。安寄り傾向が極めて顕著だったわけです。

「寄り→引け」の上昇下落率合計は、正反対の推移になります。

今年後半以降、推移が右肩下がり気味ですが、それまでは安く寄り付いて引けにかけて買われる、という動きです。

この銘柄の「前日引値→寄値」の平均上昇下落率は−0.85%、「寄値→引値」の平均上昇下落率は+1.06となっています。貸借銘柄でもなく、取引も非常に薄い状況が続いた銘柄なので、実現可能ではありませんが、仮に、引けでショートして寄り付きでドテン買いという売買ができたとしたら、毎日2%近い利益が取れたかもしれない、という話です。

ただし、今年に入って人気を集め始めてからは「高く寄り付いて安く引ける」という逆の傾向に変化しています。このビーマップの直近の動きと先ほどの日本橋梁の動きを見ると、「明日は上がるかも」「今日こそ来るかも」という期待がある銘柄は、寄り付きがどうしても高くなる。そして、「結局、今日は何も起こらなかった」という場合は引けにかけて下げていくという、いわば“期待先行高寄り仮説”が立てられそうです。


「明日上がるかも」の期待が高寄りをもたらす?!

現時点でははっきりしたことは言えませんが、この仮説、相当成り立ちそうな予感はあります。もしかすると、マルエツ(8178)もその例かもしれません。

引値の推移ですが、上下にふれながらも右肩下がり。冴えません。ところが、寄値の前日引値比上昇下落率合計は、図07aのようになっています。

高寄りする傾向がはっきり現れています。それも直近に至るまでずっと継続中です。

他方、「寄値→引値」の上昇下落率合計が図07bです。

寄り付いてから引けにかけて売られる傾向が、これまた直近に至るまで継続しています。資本が変わったり、ラオックスの親会社と提携したり、「何か来るかも」という期待が “高い寄り付き”に込められているように見えなくもありません。


寄り引けの値動き傾向をトレードに活かすアイディア

ところで、マルエツの値動きには、内需・川下型銘柄にありがちな「上がったら売り」「下がったら買い」がよさそうな傾向もあります。そこで、「寄値が前日引値より高ければ、寄り付きでショート」「寄値が前日引値より安ければ、寄り付きでロング」(いずれも引けで手仕舞い)という売買を試してみました。

図07cはその売買の累積パフォーマンスの推移です。前日引値よりも高寄りした場合の「寄り付きショート」はパフォーマンスが右肩上がりであるのに対して、前日引値よりも安寄りした場合の「寄り付きロング」はよくありません。これは、先ほど見た「高く寄り付いて安く引ける」という傾向によるものであることは確かです。この銘柄の場合、実践的なトレードの方法としては、前日引値よりも1円高いところに寄指のショートを入れておくやり方が考えられます。

「安く寄り付いて、高く引ける」という逆の傾向がある銘柄の例も見てみましょう。

第一精工(6640)の引値の推移です。かつてJASDAQ-TOP20に入っていた銘柄ですが、その後、東証1部に上場。今年に入ってからは株価水準を変えて、目下のところ底値模索中です。

寄値の前日引値比上昇下落率の合計は図08aの通りです。

右肩下がりが継続中。安寄り傾向がはっきり見てとれます。「寄値→引値」の上昇下落率合計は、図08bのようになります。

12年初めまでは、寄り付き後に買われて高く引ける傾向がありましたが、以後、その傾向は変わってしまったようです。株価のトレンドには勝てない、といったところでしょう。

この銘柄の値動きの特徴としては、安寄り傾向のほかに、市場全体に追随することもあげられます。その点も勘案して、225先物を売買シグナルに使ったトレードを考えてみました。

「225先物が陰線ならば、この銘柄を大引けでショート」「225先物が陽線ならば、この銘柄を大引けでロング」(いずれも翌日寄り付きで手仕舞い)という売買の累積パフォーマンスです。225先物が陽線の場合の「大引けロング」がさほど利益をあげていないのは、これもやはり、この銘柄が安寄りする傾向があることの影響と言えます。

この銘柄と、高寄り傾向が顕著な日本橋梁の組み合わせも考えられるところです。

「高寄り傾向の日本橋梁を大引けでロング+安寄り傾向の第一精工を大引けでショート」(いずれも翌日寄り付き手仕舞い)の累積パフォーマンスの推移です。実に500%近い結果が出ています。日本橋梁ではなく、マルエツをロング、第一精工ショートでもよいかもしれません。

なお、先ほど見たビーマップの例のように、寄り付き方や引け方の傾向は永遠ではないという点は注意したいところです。こうした寄り引けの値動きの傾向は、それを積極的に利用して利益を狙うというよりも、まずは、「もし傾向が見つかったら、それに逆らった売買は当分控える」というスタンスがよいと思います。




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