「メジャーSQまでだろう」「選挙が終われば一服だろう」との予想が多かった“解散→政権交代期待”相場ですが、SQが過ぎ、選挙結果が出た後も株式市場の上昇モードは止まりませんでした。その結果、日経平均株価は3月の高値をもクリアし、大納会高値という状況で2012年を終えています。
この上昇によって、ついに、ついに、これまで抜けることができなかった09年以降の長期レジスタンスをブレイクしています。
とはいっても、ドル換算にしてみると、2012年3月の水準は超えていません。11年2月以降の高値を結んだレジスタンスも「抜けた」とは言えない水準にあります。「株高」と言うよりは「円安」、というのは、12月16日付けの当欄でも述べた通りです。
ただ、「円安」といえば、その恩恵は外需系銘柄、というのが通常ですが、業種別の年間騰落率を見ると、そうとも言えないようです。
東証33業種 | 12/30/2011 | 12/28/2012 | 騰落率 |
---|---|---|---|
証券・商品先物取引業 | 139.8 | 281.68 | 101.49 |
不動産業 | 622.3 | 1120.92 | 80.13 |
その他金融業 | 238.88 | 370.63 | 55.15 |
輸送用機器 | 1301.76 | 1813.07 | 39.28 |
保険業 | 374.06 | 512.28 | 36.95 |
建設業 | 422.87 | 558.64 | 32.11 |
銀行業 | 100.17 | 131.01 | 30.79 |
ゴム製品 | 1323.58 | 1659.7 | 25.39 |
機械 | 775.03 | 938.72 | 21.12 |
倉庫・運輸関連業 | 926.36 | 1115.35 | 20.40 |
金属製品 | 636.47 | 761.35 | 19.62 |
食料品 | 761.76 | 910.21 | 19.49 |
サービス業 | 697.12 | 830.21 | 19.09 |
精密機器 | 2088.54 | 2435.59 | 16.62 |
非鉄金属 | 564.72 | 656 | 16.16 |
陸運業 | 981.96 | 1117.71 | 13.82 |
医薬品 | 1227.06 | 1373.27 | 11.92 |
卸売業 | 744.61 | 830.18 | 11.49 |
小売業 | 512.62 | 569 | 11.00 |
化学 | 700.44 | 774.5 | 10.57 |
情報・通信業 | 1282.4 | 1360.91 | 6.12 |
電気機器 | 1000.96 | 1053.4 | 5.24 |
鉄鋼 | 407.99 | 427.49 | 4.78 |
ガラス・土石製品 | 602.01 | 621.52 | 3.24 |
繊維製品 | 392.02 | 399.96 | 2.03 |
その他製品 | 892.36 | 890.39 | -0.22 |
石油・石炭製品 | 856.83 | 849.69 | -0.83 |
鉱業 | 342.39 | 327.43 | -4.37 |
海運業 | 274.48 | 258.91 | -5.67 |
水産・農林業 | 239.73 | 221.31 | -7.68 |
電気・ガス業 | 345.99 | 317.25 | -8.31 |
パルプ・紙 | 344.79 | 289.16 | -16.13 |
空運業 | 194.84 | 151.04 | -22.48 |
外需系では輸送用機器とゴム製品、つまりクルマ関連は確かに円安メリットを反映しているようではあります。が、電気機器や川上系のセクターはよくありません。むしろ、金融や不動産、建設といった内需系の好調ぶりのほうが目立ちます。これまでのところ、市場の期待は「円安」よりも「旧来型自民党政治」にありそうな感じです。
個別ではどんな銘柄が2012年よかったのでしょうか。おそらく、個別銘柄の年間騰落率ランキングは各種メディアで取り上げると思いますので、ちょっと視点を変えて、12年1月4日が年間最安値で12月28日が年間最高値だった、上位30銘柄を見てみましょう。(外国株式やREITも混ざっています)
コード | 銘柄名 | 業種 | 寄値 | 日付 | 引値 | 日付 | 騰落率 % |
高値 | 日付 | 安値 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
8589 | アプラスフィナンシャル | その他金融業 | 44 | 1/4 | 133 | 12/28 | 202 | 136 | 12/28 | 43 | 1/4 |
8914 | エリアリンク | 不動産業 | 2692 | 1/4 | 6880 | 12/28 | 156 | 7200 | 12/28 | 2692 | 1/4 |
8617 | 光世証券 | 証券業 | 56 | 1/4 | 142 | 12/28 | 154 | 142 | 12/28 | 56 | 1/4 |
8648 | バンク・オブ・アメリカ | 銀行業 | 432 | 1/4 | 995 | 12/28 | 130 | 1005 | 12/28 | 432 | 1/4 |
8604 | 野村ホールディングス | 証券業 | 240 | 1/4 | 503 | 12/28 | 110 | 505 | 12/28 | 238 | 1/4 |
6458 | 新晃工業 | 機械 | 267 | 1/4 | 557 | 12/28 | 109 | 564 | 12/28 | 265 | 1/4 |
3254 | プレサンスコーポレーション | 不動産業 | 1050 | 1/4 | 2140 | 12/28 | 104 | 2159 | 12/28 | 1048 | 1/4 |
8850 | スターツコーポレーション | 不動産業 | 341 | 1/4 | 671 | 12/28 | 97 | 700 | 12/28 | 341 | 1/4 |
7226 | 極東開発工業 | 輸送用機器 | 514 | 1/4 | 944 | 12/28 | 84 | 948 | 12/28 | 514 | 1/4 |
5933 | アルインコ | 金属製品 | 424 | 1/4 | 755 | 12/28 | 78 | 766 | 12/28 | 417 | 1/4 |
6445 | 蛇の目ミシン工業 | 機械 | 53 | 1/4 | 94 | 12/28 | 77 | 94 | 12/28 | 53 | 1/4 |
6484 | KVK | 機械 | 312 | 1/4 | 511 | 12/28 | 64 | 523 | 12/28 | 312 | 1/4 |
8275 | フォーバル | 卸売業 | 251 | 1/4 | 409 | 12/28 | 63 | 420 | 12/28 | 251 | 1/4 |
9790 | 福井コンピュータホールディン | 情報・通信 | 350 | 1/4 | 569 | 12/28 | 63 | 569 | 12/28 | 349 | 1/4 |
8692 | だいこう証券ビジネス | 証券業 | 251 | 1/4 | 385 | 12/28 | 53 | 387 | 12/28 | 251 | 1/4 |
3148 | クリエイトSDホールディング | 小売業 | 1608 | 1/4 | 2443 | 12/28 | 52 | 2458 | 12/28 | 1599 | 1/4 |
5930 | 文化シヤッター | 金属製品 | 269 | 1/4 | 401 | 12/28 | 49 | 401 | 12/28 | 263 | 1/4 |
4714 | リソー教育 | サービス業 | 4800 | 1/4 | 6930 | 12/28 | 44 | 6970 | 12/28 | 4790 | 1/4 |
2307 | クロスキャット | 情報・通信 | 156 | 1/4 | 224 | 12/28 | 44 | 224 | 12/28 | 155 | 1/4 |
7202 | いすゞ自動車 | 輸送用機器 | 360 | 1/4 | 511 | 12/28 | 42 | 513 | 12/28 | 359 | 1/4 |
8952 | ジャパンリアルエステイト投資 | REIT | 607000 | 1/4 | 850000 | 12/28 | 40 | 851000 | 12/28 | 604000 | 1/4 |
4550 | 日水製薬 | 医薬品 | 689 | 1/4 | 912 | 12/28 | 32 | 918 | 12/28 | 687 | 1/4 |
2928 | 健康コーポレーション | 化学 | 186 | 1/4 | 237 | 12/28 | 28 | 240 | 12/28 | 180 | 1/4 |
3066 | JBイレブン | 小売業 | 580 | 1/4 | 740 | 12/28 | 28 | 757 | 12/28 | 580 | 1/4 |
2597 | ユニカフェ | 食料品 | 342 | 1/4 | 435 | 12/28 | 27 | 445 | 12/28 | 342 | 1/4 |
4628 | エスケー化研 | 化学 | 3010 | 1/4 | 3800 | 12/28 | 26 | 3800 | 12/28 | 2961 | 1/4 |
9658 | ビジネスブレイン太田昭和 | 情報・通信 | 426 | 1/4 | 505 | 12/28 | 19 | 506 | 12/28 | 426 | 1/4 |
9052 | 山陽電気鉄道 | 陸運業 | 275 | 1/4 | 323 | 12/28 | 17 | 326 | 12/28 | 275 | 1/4 |
7931 | 未来工業 | 化学 | 846 | 1/4 | 969 | 12/28 | 15 | 969 | 12/28 | 846 | 1/4 |
9445 | フォーバルテレコム | 情報・通信 | 23300 | 1/4 | 26230 | 12/28 | 13 | 28800 | 12/28 | 22440 | 1/4 |
ちなみに、年間最安値を付けた銘柄数を月別に調べてみると、表3のようになっています。(内国株式以外の、外国株式、ETF、REITも混ざっています)
月 | 銘柄数 |
---|---|
1 | 1036 |
2 | 92 |
3 | 33 |
4 | 22 |
5 | 380 |
6 | 551 |
7 | 173 |
8 | 110 |
9 | 196 |
10 | 466 |
11 | 420 |
12 | 85 |
12年1月は「今年こそいい相場になるのではないか」と期待したくなる状況だったものの、その上昇は3月まででお終い。以後11月半ばまで面白くない相場が続いたわけですが、1月最安値銘柄が最も多かった、ということは、12年1月に買っておけば、それほど悪いことにはならなかったとも捉えられます。結果としては、2012年は「そんなにも悪くなかった年」と言ってよいかもしれません。
12月28日の大納会高値に関しては、「13年ぶり」の出来事だと各所で報道されています。
13年前。ご記憶の方も多いと思いますが、“ネットバブル”の絶好調時です。市場は「新しい時代が来た!」と沸きに沸いていましたが、その好調相場も約3か月後には終焉。当時の花形銘柄は悉く大崩落を余儀なくされることとなりました。
この13年前の大納会高値とその後の展開を思い出すと、「来年は警戒したほうがいいのではないか」という気もしてくるのではないでしょうか。そこで、13年前がどんな相場状況だったのか、その頃の市場動向を振り返ってみます。
99年という年は、1月から12月まで、トレンドとしては「上げっぱなし」。その結果としての大納会高値だったわけです。
この99年相場の前半、110円割れしていたドルは120円超まで買われています。この辺りは、2012年終盤の相場と似た「円安と株高の流れ」です。
ところが、99年後半からドルは強烈に売られ、他方、株高は継続するという動きになっています。
この時期の株式市場の状況をもう少し詳しく見てみます。
本欄でしばしば紹介している「過去1年来の高値・安値更新銘柄数」と日経平均株価の推移です。ドルが売られはじめた当初、99年7月が高値更新銘柄数のピークで、その後、株価がもみ合い状態になる中で高値更新銘柄数は伸びなくなっています。そして年終盤以降、日経平均は高値を更新しているものの、安値更新銘柄数が急増する、といった状況です。以前もふれましたが、「日経平均は高値を更新しているにも関わらず、安値更新銘柄数のほうが大きく上回っている」という状況は、天井圏が近い可能性を示唆するひとつのシグナルと考えて間違いありません。
現状の「過去1年来の高値・安値更新銘柄数」の状況はチャート4のようになっています。
直近は高値更新銘柄数が増えているとはいっても、水準としては全く高くありません。99年とは状況がまるで違います。
99年を参考にするならば、大納会高値の翌年2013年の注目ポイントの第一は、円安の流れが継続するか否か。第二は、日経平均株価の推移と高値・安値更新銘柄数の動きが逆行しないかどうか、でしょう。ドル円レートの方向が反転する、あるいは、安値更新銘柄数が激増する状況が確認された場合には、警戒体制を取ったほうがよいと思います。
ところで、日本株の上昇は解散が決まったのを機に始まったような印象がありますが、月足チャートを見ると、実は8月から12月まで5か月連続陽線です。つまり、この相場は2012年8月がスタートだったことになります。
12年8月に何か相場を好転させるようなことがあったのかといえば、これといった出来事があったようにも思えません。9月などは結果的には陽線だったとはいえ、かなりきわどい動きをしていて、感覚としては「よくない相場」でした。
8月に起きたことで思い当たるとすれば1つだけ。当欄の8月12日付け情報で紹介した「マネー雑誌の悲しい法則」、すなわち、マネー誌の休刊が決まると株価が反転する、という法則です。今回を含め、09年以降マネー誌が4誌休刊になりましたが、4回とも日経平均株価の月足は堅調な推移を描いています。
もし、2013年に相場が崩れ、日経平均株価が安値を更新し続けるような動きになった際には、この法則を思い出してみてください。ともすれば、誰も気付かない上昇相場のスタート時点での「買い」ができるかもしれません(今ではマネー雑誌自体が数少なくなってしまいましたが)。
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さて、ドルが戻しているわけですが… |