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【5月相場】とんでもない乱高下の中身を再確認するデータ

「往って来い」の買われ方と売られ方

本当にとんでもない1か月でした。ゴールデンウィーク後半スタートの前日、5月2日の日経平均株価の引値は1万3694.04円。連休明け7日から異常にも見える爆騰が始まり、23日の寄値までの上げ幅は2000円超。23日は寄りからさらに買われて1万6000円手前まで上がったわけですが、そこからの爆落ぶりがさらに異常。甚大なショックがあったわけでもないにも関わらず(アルゴリズム取引の暴走も指摘されていますが)、ザラ場中に1400円以上も下げています。その後も株価は下げて、5月を終えてみれば、まさに「往って来い」状態。日経平均の月足は、昨年8月の陽線スタートから10本目にして陰線となりました。

この間の株価の動きを5月2日引値から23日寄値までの往路と、23日寄値から31日引値までの復路に分けて、買われ方と売られ方を調べてみました。

表1:<225採用銘柄>
往路で買われた上位30
No. コード 銘柄 騰落率
(%)
1 6753 シャープ 84.3
2 9501 東京電力 62.1
3 7211 三菱自動車 56.1
4 6767 ミツミ電機 53.7
5 7270 富士重工業 50.0
6 6472 NTN 49.0
7 6471 日本精工 46.9
8 2768 双日 44.7
9 6758 ソニー 43.2
10 5631 日本製鋼所 42.5
11 6773 パイオニア 41.5
12 6674 ジーエス・ユアサ コーポレー 41.3
13 5406 神戸製鋼所 41.1
14 7733 オリンパス 40.3
15 3436 SUMCO 40.0
16 5711 三菱マテリアル 39.6
17 7202 いすゞ自動車 38.5
18 6752 パナソニック 37.5
19 7731 ニコン 37.2
20 6508 明電舎 36.2
21 6479 ミネベア 35.9
22 6361 荏原 35.2
23 4043 トクヤマ 35.0
24 5333 日本ガイシ 35.0
25 7261 マツダ 35.0
26 5714 DOWAホールディングス 34.7
27 9766 コナミ 34.5
28 6952 カシオ計算機 34.4
29 7735 大日本スクリーン製造 33.5
30 4183 三井化学 33.5
復路で売られた上位30
No. コード 銘柄 騰落率
(%)
1 3110 日東紡 -23.7
2 4183 三井化学 -23.4
3 6753 シャープ -23.3
4 3863 日本製紙 -23.2
5 5406 神戸製鋼所 -21.7
6 9301 三菱倉庫 -21.4
7 5703 日本軽金属ホールディングス -20.5
8 6674 ジーエス・ユアサ コーポレー -19.8
9 1801 大成建設 -19.3
10 5202 日本板硝子 -19.3
11 2768 双日 -19.1
12 4005 住友化学 -19.1
13 6773 パイオニア -19.0
14 1802 大林組 -19.0
15 7003 三井造船 -18.8
16 5541 大平洋金属 -18.6
17 5801 古河電気工業 -18.4
18 6113 アマダ -18.3
19 6752 パナソニック -18.2
20 8309 三井住友トラスト・ホールディ -18.2
21 9104 商船三井 -18.0
22 1812 鹿島 -17.6
23 4324 電通 -17.5
24 6703 OKI -17.5
25 8604 野村ホールディングス -17.3
26 5707 東邦亜鉛 -17.2
27 4506 大日本住友製薬 -17.2
28 8725 MS&ADインシュアランスグ -17.0
29 9983 ファーストリテイリング -16.9
30 5333 日本ガイシ -16.8

表1は、225採用銘柄のうち、往路で上昇率の大きかった上位30と復路で下落率の大きかった上位30銘柄です。日経平均株価は往路がプラス14.9%で、それを上回る上昇率となっている銘柄数は120とほぼ半数ですが、この局面で値を下げた銘柄も20銘柄ほどあります。その分、買われる銘柄が大きく買われたといった状況です。

「一部の銘柄だけが集中的に買われて指数がわざとらしく上昇する」というのは、天井圏の可能性を暗示する動きのひとつではあります。ただ、この上位銘柄を見ると、買われていたのはシャープ(6753)、東電(9501)、三菱自動車(7211)など、日経平均に対する寄与度が高くない銘柄が目立ちます。その点で言うと、この時期の上がり方はそれほどわざとらしいものではなかったと捉えてもよさそうです。

とはいえ、この間に気になる動きを見せる日もありました。

5月7日から23日までの日経平均と東証1部の騰落銘柄数を見ると、たとえば15日は日経平均が337円もの大幅上昇となっていながらも、値下がり銘柄数が1000超。値上がり銘柄数を大幅に上回っています。新興市場もこの日のザラ場はひどい売られ方で、ジャスダック指数の高値から引値の値幅はマイナス3.4%、マザーズ指数にいたっては9%以上も下げています。こうなると、かなり無理して日経平均株価だけを上げた感が否めません。また、15日ほどではありませんが、22日も日経平均株価は262円高と堅調だったものの、値下がり銘柄数のほうが多いという状況でした。

株価指数と個別銘柄の値動きに温度差が生じることは時折ありますが、相場が過熱している中でこのような状況が観測された場合には、その後の動向を警戒したほうがいいかもしれません。

一方、復路の日経平均株価はマイナス12.8%で、225銘柄全てが値を下げています。どの銘柄も総じて仲良く下げたという印象ですが、三菱倉庫(9301や電通(4324)、そしてファーストリテイリング(9983)という225寄与度の高い銘柄が顔を出していることからすると、先物の下げに合わせて現物市場の指数を下げていた様子がうかがえます。


信用取引関連データの先行きは要注視

株式情報関連メディアの中には、この5月後半の下落を「これまで上昇相場に乗り遅れていた個人投資家にとってチャンスだ」といった論調も出てきています。巷の強気論は未だ継続中という感じですが、この先の動向を考えるうえで注意して見ておきたいデータがいくつかあります。

ひとつは、信用残高に関するデータです。たとえば、東証が週1回発表している3市場の信用残高を見ると、今年に入ってから買い残が急増しています。急落のあった5月24日の週は、売り残が減り、買い残は増えている状況です。その結果、取組倍率は5.9倍と、過去10年で見ても最高水準に達しています。

また、評価損益率の足元の推移にもあまり好ましくない動きが観測されます。

評価損益率は、約定代金ベースで算出される3市場の買い残高に対して、時価評価される「店内食い合い+証券会社の自己融資残+証券金融会社の融資算」との差が何%になっているかを表す指標です。株価が下がると時価評価されている融資残の値は小さくなり、約定代金ベースの3市場残高との差は大きくなります。その結果、評価損益率も大きくなります。つまり、評価損益率の数値が大きくなるほど「信用買いをしている人の評価損が膨らんでいる」、評価損益率の数値が小さくなるのは「信用買いをしている人の評価損も減っている」と解釈することができます。

図表4の評価損益率は、目盛りの数値を反転させて、率が小さくなるほどグラフが右肩上がりになるようにしています。平常の光景は、「日経平均株価が下降トレンドならば、(目盛りを反転させた)評価損益率の推移も下降トレンド」「日経平均株価が上昇トレンドならば、評価損益率の推移も上昇トレンド」です。ところが、今年に入ってからの動向を見ると、評価損益率がピークをつけたのが1月25日の週。その後も日経平均株価は高値を伸ばしているにも関わらず、評価損益率はピークを更新できず、5月24日の週に大きく下がっています。

先ほど見たように、この週、信用買い残は増加しています。ということは、評価損状態となっている“買い残の人”が急増した可能性を考えなければなりません。

6月以降、市場が落ち着きを取り戻し、市場全体が買われる状況になれば、評価損状態にある買い残の人も救われます。しかし、市場が好転しない、あるいは、特定の銘柄だけが買われる展開になると、買い残の人の痛みが拡大しかねません。損失状態にある人が増えることは、市場全体の先行きの需給にとってマイナスに作用します。日経平均株価の推移とともに、これからの信用買い残高や評価損益率の推移を注視してみてください。


高値更新・安値更新銘柄数は「微妙な状況」

もうひとつ、当欄で折りにふれて紹介している「高値更新銘柄数と安値更新銘柄数」のデータにも、この5月に変化が生じています。

図表5:高値更新銘柄数と安値更新銘柄数
2013年     一年(12ヶ月) 半年(6ヶ月) 四半期(3ヶ月)
日付 日経225 前日比 高値更新 安値更新 高値更新 安値更新 高値更新 安値更新
5月1日 13799 62▲ 363 1 389 1 408 2
5月2日 13694 105▲ 273 1 291 2 303 3
5月7日 14180 486△ 797 0 843 1 895 3
5月8日 14286 105△ 839 0 911 2 984 4
5月9日 14191 94▲ 574 0 615 0 661 0
5月10日 14608 416△ 561 0 597 0 631 1
5月13日 14782 175△ 672 0 714 0 767 4
5月14日 14758 24▲ 513 0 543 1 577 7
5月15日 15096 338△ 551 2 579 5 622 15
5月16日 15037 59▲ 211 1 216 8 224 48
5月17日 15138 101△ 192 1 198 3 202 11
5月20日 15361 223△ 426 0 441 3 465 3
5月21日 15381 20△ 368 0 396 0 430 0
5月22日 15627 246△ 352 0 375 1 401 5
5月23日 14484 1,143▲ 200 1 212 7 221 64
5月24日 14612 128△ 29 1 32 15 34 85
5月27日 14143 470▲ 14 1 15 19 17 120
5月28日 14312 169△ 14 1 16 15 17 99
5月29日 14326 14△ 34 1 35 5 38 25
5月30日 13589 737▲ 28 5 31 29 33 152
5月31日 13775 186△ 29 4 31 18 33 70

図表5は、上場全銘柄について、「過去1年」「過去6か月」「過去3か月」の高値更新銘柄数と安値更新銘柄数をまとめたものです。5月23日以降、過去3か月の安値を更新している銘柄数が大きく増加しています。これは「過去3か月以内に買った人は全員損をしている」という銘柄が増えていることを意味します。

また、「過去6か月」でも、まだ高値更新銘柄数のほうが優勢ではありますが、安値更新銘柄数の増加基調が現れています。6か月前といえば、ちょうど解散総選挙をきっかけとした上昇相場がスタートした時期。そうすると、この数値がこれから増えると、「この相場の初期段階で買って損失状態になっている人が増えている」ことになりますから、これは要警戒シグナルと考えていいでしょう。

 もっとも、現状はそこまで至っていませんし、また、過去1年の安値を更新している銘柄数はわずかです。先行きを過剰に悲観視するまでのことはないと思います。

ただ、一方向に動き出すと止まらなくなる、とくに「売られるときには強烈、かつ早い」という昨今の市場を考えると、市場実態の変化には十分すぎるくらいに注意を払っておいて悪いことはありません。“逃げ遅れ”だけは何としてでも回避したいところです。





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