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【乱高下対策】荒れる相場に効くヘッジの考え方

225先物のヘッジが奏功する銘柄とは

5月後半から荒れまくりの展開が続き、暗いムードが拡がっていた株式市場ですが、7月に入って明るさを取り戻した感があります。また、値動きのほうも落ち着きつつあるようです。

225先物の引値ベースのボラティリティーの推移を見ると、大震災のときよりも混乱していた期間が長かったことがわかります。

ザラ場ベースのボラティリティーとなると、さらに顕著です。

ザラ場ベースでは、混乱の終結宣言はまだできそうにありません。実際、今週明けの寄値は1万4480円、引値は1万4100円と、寄り→引けの下げ幅は390円(−2.6%)。高値から安値までは450円という値幅です。警戒はまだ解かないほうがよさそうです。

乱高下に巻き込まれて大ケガをしない策は、とにもかくにもリスクコントロール。これに尽きます。その最も単純な方法は、ポジションサイズを落とすこと。そして次に考えたいのが、ヘッジをかけることです。

簡単なヘッジ策としては、まず、225先物(またはミニ先物、225連動型ETFなど)で個別銘柄と逆のポジションを取ることがあげられます。ただし、どんな銘柄でも225先物でヘッジをつけておけば安心だ、というわけではありません。いずれの銘柄も市場全体の影響を受けますから、先物のヘッジをつけておけば、それ相応に効果はあると思いますが、より有効なヘッジを考えたいところです。

では、225先物のヘッジが有効と目される銘柄とはどんな銘柄なのか。それを知るうえで大いに参考にしていただきたいのが、『株テクニカル情報』の「値動き分析」欄と「各種指標との相関性」欄です。

T&Dホールディングス(8795)の場合、225先物の前日比上昇下落に対しては順張り型で動く傾向があります。すなわち「225先物が上がると、翌日この銘柄が値上がりする」「225先物が値下がりした翌日、この銘柄は値下がりする」という傾向です。、

また、T&Dホールディングスは、TOPIXや日経平均株価との相関性が高い銘柄でもあります。これは、「市場全体が値上がりした日には、この銘柄も値上がりしている」「市場全体が値下がりした日は、この銘柄も値下がりしている」傾向が強いことを意味します。

一方、225先物自身はどうかというと、どちらかというと逆張り型の値動き、すなわち、「値上がりして引けた日の翌日は値下がりする」「値下がりして引けた日の翌日は値上がりする」という傾向が緩いながらも確認されます。

そうすると、たとえば、225先物が値下がりした日にこの銘柄をショートする一方で、225先物を買ってヘッジしたらどんな効果が期待できるでしょうか。この銘柄と225先物の翌日の上昇・下落の組み合わせは4パターンが考えられます。

過去の値動きの傾向からすれば、@とCとでは、@のほうが確率は高いと考えられます。ということは、ヘッジによって損益のふれ方を緩和させながら(AとBの効果)、利益を伸ばすことも期待できることになります。

「225先物が値上がりした日の大引けにこの銘柄をロング」「225先物が値下がりした日の大引けにこの銘柄をショート」という、225先物に順張り型の売買を検証してみた結果です。昨年末から年初にかけては、先物のヘッジを付けないほうがパフォーマンスを伸ばしていましたが(市場全体の方向性が強かったことが一因と考えられます)、5月後半からの乱高下相場ではヘッジが抜群の効果を発揮しています。


「225先物に逆張り」型の個別銘柄でヘッジする手もある

225先物ではなく、他の個別銘柄をヘッジの相手に選ぶという視点もあります。その場合、まず思い浮かぶのは、同じセクタで値動きの相関性が高そうな銘柄で逆のポジションを取るというやり方でしょう。たとえばT&Dホールディングスと相関性の高い銘柄を調べてみると、第一生命保険(8750)や東京海上HD(8766)など、やはり保険会社が上位に出てきます。

そこで、T&Dホールディングスを先ほどと同様に「先物に順張り」売買する一方で、東京海上HDは逆のポジションを取ってヘッジする売買を検証してみました。

2011年以降、パフォーマンスはほとんど横ばいで儲かりません。東京海上HDの値動きを調べてみると、この銘柄もどちらかと言えば先物に順張り型の傾向があります。つまり、翌日の値動きの方向性がT&Dホールディングスと似ているため、損益が打ち消し合うような格好になっている面があるのかもしれません。

この2銘柄、仲良く動きすぎているということなのでしょうか。ただ、この2銘柄の価格差が開いたところで収れんするのではないか、という予測をもとに売買検証してみた結果が青のグラフですが、これもまた儲かりません。

「ヘッジ」というと、2つの売買対象で逆のポジションを取って損益をゼロにするのが理想型のようなイメージを持たれがちかもしれません。しかし、そうした完璧ヘッジを目指すのであれば、面倒なヘッジはやめてポジションをたたむほうがよほど上策です。ヘッジを付けることによって、損益のふれ方を均しながらもプラスの期待収益が確保できるようでなければ、ヘッジする意味はありません。

それでは具体的に、プラスの期待収益が確保できるヘッジの相手とはどんな銘柄なのかというと、たとえばこんな銘柄が候補として注目できます。

ファナック(6954)は、「先物が値上がりした翌日は値下がりする」「先物が値下がりした翌日は値上がりする」という、先物に対して「逆張り型」の値動き傾向が強い銘柄です。つまり、T&Dホールディングスとは値動きの傾向が逆方向になっています。

他方、日経平均株価やTOPIXの値動きに対する相関性がT&Dホールディングスと同様に高い銘柄でもあります。市場全体が上がっている日には上がりやすく、市場全体が下がっている日には下がりやすいということです。

この銘柄をT&Dホールディングスのヘッジ相手にしてみると、こんな結果になります。

225先物でヘッジした場合よりもパフォーマンスの水準は高く、しかも安定的です。

こうしたヘッジ相手を見つけておくと、荒れ模様の相場にも対応できるのではないかと思います。『株テクニカル情報』を是非お役立てください。


◆東証・大証の市場統合。相場への影響は……◆

7月16日、大証の225先物オプションの限月の近いものは行使価格が125円刻みに変わります。現行の値刻みでは7月12日が最後のSQ。8月からは、125円ごとの行使価格を巡ってSQ前の攻防がより激しくなりそうです。

そして同じ日、大証の現物市場は東証に統合されます。詳細な気配はフル板でチェック可能になります。大引けは全個別銘柄とも15:00です。これによって、東証が引けてから大証が引けるまでの10分の間に、大証銘柄を使ってポジション調整する、といったことはもうできません。大証がメイン市場だった銘柄には、値動きの傾向に変化が生じる可能性がなきにしも非ずです。

東証の現物市場大引けから先物市場の(日中の)大引けまで15分ある、というのはこれまで通りですが、現物の日経平均株価と日経平均先物との乖離傾向がより激しくなるかもしれません。

7月16日以降、不思議なことが頻発しそうな予感です。いまの相場が落ち着けば、大きな影響はないかとも思うのですが…。


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