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【1570】人気急上昇!「レバ」を米ドルトレード代わりに使う

取引拡大の背景は「ボラティリティーの上昇」か

ETFというと、「株の初心者向き」「長期投資向き」といったイメージで捉えている人もいるかもしれません。東京証券取引所をはじめ、ETFを説明する記述を見ても、「わかりやすい」「分散投資ができる」「少額からはじめられる」等々、確かに、初めて株式投資をする人や長期投資をしたい人にアピールしたいような言葉が並んでいます。

ただ、現在、東証に上場している約150のETFを見てみると、流動性があまりに乏しく、初めての人はもとより、誰に対しても取引を勧められそうもないものも少なくありません。しかし反対に、「初心者向き」と 決めつけてしまうにはいかにももったいない、幅広い市場参加者層に様々な用途を提供してくれそうなETFもあります。

昨年4月に当欄でも紹介した「日経レバレッジ指数ETF」はその最たる例といっても過言ではありません。このETF、昨年の上場当初から安定した取引高があり、相場が上向きはじめてからはさらに取引高が拡大。ここ数ヶ月は、売買代金上位ランキングにも顔を出すほど取引を集めるに至っています。日経225連動型のETFはいくつかありますが、この「225の値動きの2倍に連動する」ETFは、通常の225連動型のETFのお株を奪ったような感じです。

この人気の背景のひとつは、日経平均(および225先物)のボラティリティーが上昇していることにあると思われます。日経平均の値動きが大きくなれば、このETFの値動きはその2倍ですから、個別株さながらの値幅が期待できる、というわけです。


図3:売買代金順の「1日あたりボラティリティー」の表
順位 コード 銘柄名 業種 ボラティリティー
(一日当%)
1 9501 東京電力 電気・ガス業 7.4
2 7203 トヨタ自動車 輸送用機器 2.5
3 8604 野村ホールディングス 証券業 3.2
4 9984 ソフトバンク 情報・通信 3.3
5 8306 三菱UFJフィナンシャル・グ 銀行業 2.8
6 8411 みずほフィナンシャルグループ 銀行業 2.5
7 8316 三井住友フィナンシャルグルー 銀行業 2.6
8 3765 ガンホー・オンライン・エンタ 情報・通信 9.3
9 7261 マツダ 輸送用機器 3.7
10 8515 アイフル その他金融業 6.8
11 6758 ソニー 電気機器 3.1
12 1570 (NEXT FUNDS)日経レバレッジ ETF 4.7
13 9983 ファーストリテイリング 小売業 3.7
14 7270 富士重工業 輸送用機器 3.9
15 4321 ケネディクス サービス業 7.2
16 7751 キヤノン 電気機器 1.9
17 6753 シャープ 電気機器 6.0
18 8802 三菱地所 不動産業 3.4
19 7211 三菱自動車 輸送用機器 6.6
20 7267 ホンダ 輸送用機器 2.1
21 8473 SBIホールディングス 証券業 5.4
22 6502 東芝 電気機器 2.7
23 6501 日立製作所 電気機器 2.8
24 8801 三井不動産 不動産業 3.2
25 4978 リプロセル 化学 8.0

図3の表は、13年5月〜7月までのデータで1日あたりの売買代金上位銘柄のボラティリティー(1日あたり)を調べてみた結果です。さすがに、ガンホー(3765)やリプロセル(4978)といった新興株には及びませんが、代表的な個別銘柄を大きく凌ぐ変動率を見せています。 この4.7%というボラティリティーは、日経225連動投信(1321)のボラティリティーのほぼ2倍です。(ボラティリティーの年率は、1日あたりのボラティリティーに15.8(250(年間営業日数)の平方根)を掛けた数字になります)

このETFの活用のしかたとしては、市場全体が大きく動くだろうと予想するときに売買するというベーシックな使い方はもちろんのこと、個別株のポジションのヘッジにするのも有効です。当欄で時折紹介している個別株のヘッジは225先物で検証していますが、このETFならば個別株に応じたサイズ調整もしやすく、しかも、ヘッジに要する金額が通常の225連動型ETFの約半分で済むというメリットがあります。 また、225先物やミニ先物の損益は、個別株の損益とは別々にカウントされて課税されますが、ETFならば個別株と損益通算ができます。

このETFと225先物の値動きを調べてみると、確かに非常に高い相関性があることがわかります。

これなら、225先物ヘッジの代替として十分に使えそうです。

ちなみに、225先物に対するβ値(グラフ中にある式のxの係数)は1.93。つまり、「225先物が『1』動くとき、このETFは『1.93』動く」という結果となっています。「225の2倍の値動きに連動する」仕組みのETFですから、理論的にはβ値は「2」のはずですが、その水準に若干足りません。これは、取引終了時間の違いが理由のひとつと考えられます。


ドルが1円動くと、「レバ」は350円動く?!

このETFを信用取引で売り買いすれば、225先物そのもののトレードの代用にもなります。この場合、225先物やミニ先物よりも少ない現金で同等以上の取引が可能になるという利点があります。

証券会社によりけりですが、現在、225先物の証拠金は70万円前後で、取引額は日経平均の1000倍。日経平均が1万3500円ならば取引額は1枚あたり1350万円。レバレッジは約20倍です。信用取引のレバレッジは「約3倍」ですから、はるかにこれよりも低いのですが、現物株 も保証金にしていれば、現金保証金は取引額の30%も必要ありません。たとえば、現金70万円と代用有価証券の評価額200万円、合計270万円保証金があるとすれば、新規建て余力は810万円。さらに、値動きは225先物の約2倍なので、225先物換算で1620万円相当のポジションを持てる、という捉え方もできます。保証金にしている現金70万円からすれば、レバレッジは実に23倍超。取引価格自体にレバレッジが効いているというのは、意外に大きいことなのです。(いずれの取引もフルレバレッジはリスクが非常に高くなるので、実際には十分余力を確保したうえで売買してください)

では、225先物そのものの代用としてこのETFを売買する場合、何に着目したらいいのか。これは、225先物が何を根拠に売り買いされているか、ということでもあります。

225先物が売り買いされる動機はいろいろあると思いますが、このところの傾向として顕著になっている要因のひとつは、ドルの対円レートの動きです。

03年以降の225先物とドル円の推移を見てみると、かつては逆相関のような動きも見られたものの、昨今はかなり連れて動くようになっています。昨年の「解散総選挙」以降は、ほぼ一緒に動いている、と言ってもよさそうです。

レバレッジETFとドルの関係もやはり同様です。

図7の相関図は、クリック365の引値をx軸に、翌日のレバレッジETFの寄値をy軸に取っています。x の係数は249.78ですから、「ドル円が1円動くと、レバレッジETFは250円動く」というイメージです。

この図7のグラフ中の赤の点線は、1ドル=92円を超えてからの回帰直線ですが、実線の回帰直線よりも傾きが急になっています。つまり、より大きく動いているということです。

今年4月から直近までの関係を見てみましょう。

相関性は低下していますが、x の係数は347.48に上昇。「ドルが1円動くと、レバレッジETFは平均すると約350円動く」という状況です。、

相関が薄くなっている点は十分に留意する必要はあるとしても、たとえば、ドルが売られて日本市場が急落するというリスクに備える手段としては、非常に注目に値するトレード対象だと思います。

FXでドルを売る場合と比較しても、資金効率的に悪くはありません。1ドル=100円とすると、FXの「レバレッジ10倍コース」では100万円の証拠金で ポジションは最大10万ドルまで。ドルが1円動けば損益は10万円です。

他方、現金100万円を保証金にして信用取引でレバレッジETFを売買した場合、取引可能額は最大で約300万円。1口の価格が8000円とすると、375口のポジションになります。「ドル1円の動きに対して、レバレッジETFの値動きは350円」で計算すると、損益は13万1250円。現金に加えて現物株の保証金あれば、予想される損益はさらに拡大します。

ただ、信用取引は売買手数料や金利・貸株料がかかるため、FXよりもコスト高になる可能性があります。売買手数料はかなり低くなっているのでさほどの影響にはならないと思いますが、金利・貸株料が日々累積していくと結構な額にもなりかねません。せっかくの資金効率を悪くしないためにも、短期トレードに徹したいところです。



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